理論上は可能
ビートに搭載されているE型エンジンは、さまざまな車両に搭載されています。ウィキペディアによりますと、1988年(昭和63年)1月から2021年(令和3年)4月まで製造されていた車両に搭載との事。
およそ33年ですか。
その歴史の中でも、世の中や兄弟車がとっくにFI化されているにも関わらず、最後までキャブレターグレードを維持したシーラカンスの様なクルマ「トゥデイJW3」。
俗に言う「角目のキャブ」という事で一部で絶大な人気と異彩を放つJW3キャブレターモデルですが、部品の供給も怪しくなり、現代の軽カーと戦うには苦しくなるばかり・・・
今回はそんな「JW3角目キャブ」を、ビートで培ったノウハウを流用、デスビレスダイレクトイグニッション化をして現代スペックにアップデートするというお話です。
あ、ちなみにビートのデスビは新品出ますので楽観視されてますが、JW3キャブのデスビはガチで廃盤ですので、マジで深刻な話です。キャップとか消耗品ですよ???
【用意するもの♪】
Link G4X本体。今回はAtomをチョイスしました。G4Xの中では一番下のグレードになりますが、廉価版ではありえないノックコントロールもOKで馬鹿には出来ません。デスビレスやDIコイルに目が行きがちですが、それらはオマケ機能。上位機種と同様の基本機能を持ち、様々な事に応用できます。
点火を前後したり燃料を増減するだけならノーマルECU書き換えでOKですが、最早そーゆー単純な制御の枠に収まらない現代スペックです。
それを今回は「燃料出力」を封印して使う、贅沢な仕様です。
ハルテック先生監修のデスビレス専用カムプーリー。様々な仕様の物を用意。ついでにガンコート仕上げです。GW中に回転試験を済ませておき、JW3オーナーに好きな物を選んでもらいました。
このプーリーも少しずつアップデートしており、今ではLinkG4Xだけでなく、LinkG4+、ハルテックエリート、ハルテックプラチナムにも対応するように。ハイチューン対応のスライド版も完成しました。
JW3キャブ専用ハーネス。去年あたりから設計を始め、年末年始にプロトタイプが完成。
JW3オーナー協力のもと、事前採寸を行い、プロトタイプが完成したら車両に当てがって確認作業を行いました。
寸法や設計は一度で決まらず、打ち合わせを繰り返し、何度も手直しです。大変でしたがJW3オーナーも挫けずに続けていただきました。
手直しや車両に組付ける際に、分解の必要がある場合があります。その際にピンアサインが分からなくならないように、タグ付けや資料の作成などの作業も。
このお陰で、後にセンサー類の追加作業が分かりやすく、機能や性能を上げる事が可能なステップアップ方式のハーネスになっています。
DI化に必要なヘッドカバーやコイルを用意。通常は一個で良いですが(笑)
沢山用意したのですが、JW3オーナーは「塗装してあると磨けないじゃん?」などと、意味不明な供述をしており、未塗装カバーの装着となりましたが(汗
後は、空燃比メーターなんかもあると良いですね。キャブ車とは言え、Linkと接続する事により、ログに残りますのでセッティングで活躍するでしょう。
【いざ組付け♪(Day1)】
お天気にも恵まれ、ついに組付け&始動作業の日がやってきました。
土日を使った2Dayで仕上げるスケジュールです。
主要作業メンバーは、エンジン担当、補器類担当、ECU担当、の3人で分担して行いました。
皆で自分の担当エリアの作業をガンガン進めるので、カオスな状態に(笑)
ちなみに自分はECU担当でハーネス弄ってました。
当日も若干の手直しが発生したのですが、さくっと修正完了です。
余談ですが、出張作業が多いので道具や材料をコンパクトに持ち運ぶ装備作りが身に付きました(汗
エンジンルーム側ハーネス作業。ノックセンサー設置。写真の奥の方には吸気温度センサーも。
室内側ハーネス。コネクタが付いたままですとハーネスが通らないので、一旦は脱着しています。それ以外はポン付けを目指して設計しました。
おおよその組付けが完了して一日目終了。各担当頑張りました。
この時点でデスビは撤去。後戻りできない&通勤号なのでヤベー(汗
その日の晩は、JW3オーナー宅で飲みながらおしゃべり。写真はオーナー自宅にあったHHK(ハッピーハッキングキーボード)。こんなモノが部屋にある辺り、フツーのクルマ好きとは違う経歴を持っているようで、ジャンルの違う技術的な話題が多かったです。
でも、ジャンルの違う技術的な話題であっても、「こーゆーのってクルマ弄りに活用したら面白いかも???」の流れで、結局はクルマを弄る話に戻ってきます。
クルマ好きはクルマ好きのようです。
てか、HHKにカーソルキー搭載のモデルってあったっけ?通常の流通のモデルじゃない気が・・・謎は深まります。
【いざ組付け♪(Day2)】
室内側コネクタ復旧。ECU接続。ECU電源確保。A/Fメーター接続。
A/FメーターはCAN接続にしました。整備手帳にも書きましたが、事前に接続テスト済みです。
こーゆー事前準備と研究が大変ですけど、大事ですよね。
エンジンルーム側も準備OKのようです。
いよいよ、エンジンを始動していきます。オーナーに運転席に乗ってもらい、自分はECUの状況確認、エンジン担当はボンネット内に不具合が出ないか見守ります。
何度かクランキングの後、無事にエンジンは始動しました。
JW3キャブレターのデスビレスDI、「理論上は可能」から「実際に可能」に変わった瞬間です。
暖気をしながらオイルと水の点検を済ませ、早速公道に出てチェックです。
事前に用意していた試走用の点火マップが割とまともで、走行には支障無さそうで良かったです。むしろ、フツーに走れ過ぎて拍子抜けです。マップや設定を妄想と理論で組み立てる力が身についてきました。
試走用ですので、ビビりな点火時期が入ってます。にも拘わらず、オーナー曰く「トルク感がある!」と事ですので、DIコイルの恩恵があるのだろうと思います。
JW3オーナー様、今後のセッティング作業やフルコン機能による車両アップデートを楽しんでください。
始動時には、開発にかかわったメンバーのほとんどが立ち会いました。皆、「無事に動くのか!?」と気になって仕方がなかったようです(笑)
始動後は、「今後の予定や改善点」の話題で持ちきりでした。
そうです、コレで終わりではなく、ハーネスは残り2セット用意=組付け予定の車両があります。
それぞれに活躍するステージが違うJW3ですので、今後の展開が楽しみで仕方がありません。
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Posted at
2024/05/16 06:56:18