大和葛城山(その4)
投稿日 : 2015年05月14日
1
朝は日の出とともにウグイスの声で目が覚めた。
天幕越しの光は明るいが、時計を見やるとまだ6時前。
起き出して行動するにはまだ早いかと、寝袋に潜って二度寝のシヤワセをむさぼる。
ようやく寝袋から這い出したのは、ハイキング客で賑やかになり始めた8時過ぎだった。
前の晩に炊いた冷や飯を茶漬けにしてザブザブと腹に流し込み、1杯分のパックになったドリップコーヒーで一息ついて身支度を始める。
キャンプ場のすぐ脇には大阪側から 青崩谷あおげだにを経由して登ってくる道が通っていて、炊事場で歯を磨いているわたしの目の前を山ガールたちが歩いて行く。
ときおり、ロッジに資材や燃料を運ぶトラックがエンジンをうならせながら通り過ぎる。
テントをたたんで準備運動をして、9時ごろに山を下り始めた。
崩落箇所が復旧して通れるようになったという 櫛羅の滝ルートを正午までに下るという、時間的には余裕たっぷりのプランである。
幸か不幸か、前日の登りで疲れた脚に筋肉痛はまだ来ていない。
2
分岐には「櫛羅の滝を経て登山口へ」と書かれた案内看板が立っているので道に迷うことはなさそうだ。
念のために、iPhoneにダウンロードした2万5千分の1地形図で道のりをイメージする。
だが、これがあとでアダになった。
余談ながら、去年までは地形図の必要な部分だけをA4サイズにコピーして持ち歩いていたのだが、スマホにしてからちょー便利になった。
手作業で磁北線を書き込んだり、風でばたつく紙の上にコンパスを置いてうーん…なんてやらなくてよくなった一方で、地図の読み方を忘れてしまいそうだ。
地形図には登山道が破線で示されていて、一部で急斜面を トラバースするものの、おおむね沢に沿って下っていくのがわかる。
脳内ナビは「不動の滝(別名、二の滝)まで下りたらあとはずっと沢を左手に見ながら歩く」というルート案内。
ところが、下り始めて2.7km歩いたところにある、標高550m付近の分岐で悩んだ。
二の滝へ続く道を示す看板はあるが、その看板には同時に「二の滝からは下山できません」とも書かれてる。
地図を信用しきっているわたしは、どうにも納得がいかない。
復旧したって書いてあったのになあ。
ここから二の滝を経由せずに下りるルートも地図にはあるけど、バス乗り場まで住宅街の坂道を登らなきゃならないなあ。
結局のところ、ずいぶん前に新たに開かれたルートが地図に載っていなかっただけだった。
それと、この5年で櫛羅の滝ルートは2回ほど崩落と復旧を繰り返していて、それを事前の下調べで知ったわたしは、ずっと前から通行止めになったままの部分もすべて復旧したのだと思い込んでいたのだ。
3
分岐で悩んだあげく、まあいいや、ダメ元でいったん二の滝まで行ってみよう、と二の滝の方向へ踏み出した。
4
で、滝まで来たところで、やっぱりダメだったかと肩を落とす。
この様子だと、こっちの道はもう廃道にする感じだな。
5
やれやれだぜ、と来た道を分岐まで戻るのだけど、この急階段。
滝に向かって下りてきたのを登り返さなければならない。
ここを下りる前にもういっぺん悩めばよかった。
このとき新ルートがあることを知らなかったわたしは、下山してから住宅街を歩くことを考えてますます気が滅入る。
カンカン照りのアスファルトを歩くことまで想像すると、嘔吐きそうになるわ。
不安を抱えながら歩いて分岐に戻り、登山口方向へ歩くこと50m、地図にはない分岐が現れた。
地図にはない方向の道からは続々とハイカーが登ってくる。
喉の奥で酸っぱくなりかけた胸がすっと軽くなる。
念のため、登ってくるハイカーに声をかけて、こっちはロープウェイ乗り場から来た道か?と尋ねてみた。
歳はアラサーあたりの女子。
女子向けアウトドア服にありがちな赤紫色のシャツが、まるっと豊かなの乳と腹にぴっちりと張り付いて、紫芋が歩いてきたのかと思ってしまった。
遠目で化粧にだまされたが、近くで見たらアラフォーに違いない彼女はこう答える。
えー、わかんないですー。
おいおい、ロープウェイ乗り場だよ?道祖神の祠じゃないんだぜ?
見落としたとか、何の建物だったかわからないってことはないだろう。
もうええわ。
地形的にも方角的にも、櫛羅の滝へまっすぐ向かっている雰囲気だ。
自分の勘の方があてになりそうだ。
6
下っていくと案の定、ロープウェイの下を横断する場所に出た。
見上げるロープウェイのゴンドラはすし詰め状態。
今ごろツツジ園は人でごった返していることだろうなあ。
7
さらに下って無事に櫛羅の滝に到着。
ここまで来れば一安心。
8
時間もたっぷり余裕があるので開けたところで蝶を追いかけ写真散策。
ツマグロヒョウモンくんがせわしなく蜜を吸っているのは、えーっと…ガマズミの花かな。
つづく
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