
『
スカイランと私』
あの名設計者「桜井真一郎」の不変の設計哲学を集大成。
そのプリンス誌別冊から備忘録。。。。
前回から続く
「スカイランと私(4)」
長年のレース経験が無形の貯金をしてくれました。
レースというのはどんな目的でやるんだということがあるんですね。私はこう思ってるんです。1つは大衆の面前で持っている技術がどれほどのであるか披露するんですから、世界から”認知”してもらうということ。もう1つはそういうことを通じて技術的な貯金ができるということなんです。私はレースで勝った負けたということはあまり好きじゃないんですが、技術的な貯金ができるということに、はかりしれない魅力を感じているんです。それじゃ貯金というのはなんだというと、これも2つあって1つは有形の貯金ですね。レースを通じて開発された諸々の品物、たとえばR380で研究したエンジンをGT-Rに載せるとか、そのほかディスクブレーキやエアロダイナミックスのスタイルをそのまま生産車に還元するとかこういうことは、Rを開発している段階でいつも頭の隅にあるわけです。けれど技術的な貯金でより大切だなと感じたのは無形のもの、車の専門誌でも書けないノウハウなんですね。たとえば、Rが300キロで走っている時に横風をうけたとします。フラフラッとするのを解決するためのスタビリティー、直進安定性がどんなものかを研究しますね。これを解決した時の技術をもってすれば、東名高速を100キロで走行するといった場合の生産車の直進安定性は余裕をもってクリアーできるということなのです。また、ショック・アブソーバがどうも高温時になると中の油が泡だってくるという場合に、Rではいろいろ遮蔽板をつけて泡だたないようにしたのですが、どのくらいの温度でどの程度泡が出るかわかれば、発泡しにくい油を入れれば生産車は充分だということがわかるわけです。無形の貯金というのは結局、現物をそのまま生産車に移すのではなく、生産車に生かせるノウハウが集まったということですね。レースという、それこそ自分の全人格を賭ける過酷な状況の中で、ボルト1本の効率とか信頼性を肌で学び、それがひいては車全体に対する信頼性を肌で学び、それがひいては車全体に対する信頼への認識につながっていくような気がします。
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Posted at
2011/06/05 16:37:30