
「スカイラインと私」
あの名設計者「桜井真一郎」の不変の設計哲学を集大成。
備忘録シリーズ、その7
「そこはかとないメロディがじっと伝わってくるようなクルマをつくりたい。」
スカイラインの人気の秘密を分析するというわけではないのでしょうが、スカイラインを分析したという話をよく聞きます。徹底的に分析してして各部品を調べてみたら、なんでもなかったというのですね。それがいったん組み立てると確かにどこが違っている---私はクルマというのは要するにオーケストラの演奏のようなものだと思うのです。たとえばある曲を聴いて非常に感銘を受ける。いかにもそこはかとない味わいがあり、、なんとなくメロディから話しかけるような、それは決して”第3楽章の第1バイオリンのトップがすばらしい”ということではないわけです。ビオラだけ聴けば、もっとうまい演奏者がいるとか、チェロだけ聴けば誰でもこのぐらいは演奏できるとか---しかし、それが1人のコンダクターのもとに集まって演奏されると、実にすばらしい旋律になるというのが理想なわけです。クルマの場合でも同じことが言えて、極端なことをいえばどのクルマだって同じようなタイヤを使っていますし、ブレーキやハンドルだってその機能を充分に果たしているのです。けれども、すべての機能をまとめあげるときに、いかにバランスをとっていくかで微妙に変化するものなのです。何でも一流のものを集めれば結果として必ずいいものができるということではないのです。たとえば、動力性能だけが飛び抜けて大きく、カタログ的には他車を凌駕するような車がたったとしても、これに見合うブレーキ性能、コーナリング特性、その他関連のある諸性能のバランスがとれていなければ、かえって乗りにくい車になってしまいます。安全性、乗り心地、強度、音などその他すべての性能について同じことがいえると思います。お客様から信頼されるクルマというのは、美しいメロディのように、ある一定のバランスをいつも保っているクルマなのではないでしょうか。
Posted at 2011/06/26 21:54:00 | |
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