新型クラウンについて、思っているところをまとめてみました。
ちょっと長くなったので、試乗編とコンセプト編(高級車とは何か?)に分けました。
まずは機能面についてのクラウンクロスオーバーのレビュー(試乗編)をアップします。
先日(といっても一月ほど前ですが)、ディーラーでクラウンクロスオーバーの試乗会があったので行ってきました。
ちなみに私は先代の220クラウン(V6 3.5L G-executive)のユーザーですが、クラウンにはこの1台に乗っただけなので、クラウンらしさにはそんなに強い思い入れはありません。
220クラウンを購入したのは、220クラウンのハンドリングと足回りの良さが気に入ったことが最大の理由でした。
今回の新型クラウンについては、クロスオーバーの購入予定はないですが、候補のひとつとして来年発表予定のセダンを考えています。
試乗会には、新型クラウンセダンの方向性を多少なりとも感じられないかと思って行きました。
試乗車は、クロスオーバーの2.5リッターGレザーパッケージでした。
外観はボリュームがあり、先代に比べるとグラマラスで、かなり攻めたデザインとなっています。巷で言われているようにフェラーリのSUVと似ています。
リアからみたボディラインの美しさ、21インチのホイールは迫力があり、もっとも印象に残る部分だと思います。
この外観デザインでクラウンというにはやや違和感がありますが、先入観を排して眺めれば、かなり格好良いと思います。
先代はシャシーとサスペンションといった走りに関する部分に重点的にコストをかけていましたが、新型は外観のボディデザインを重視していることがよくわかりました。
乗り味は、短時間の街乗りなので中低速でのざっくりした挙動しかわかりませんでしたが、発進はFRのようなスムーズな出足で、交差点の右左折も自然なステアリングフィールで曲がってくれました。
発進時のスムーズさは、リア駆動用のモーターを利かせているのだろうと思います。
低速時のコーナリングは後輪操舵システムの効果で曲がりやすさをアシストしていると、営業さんが説明してくれました。
路面の段差で突き上げを感じることも少なく、中低速域を走った感想は、予想していたよりも自然な感じで、特に違和感を感じるようなところはなかったです。
クセがなく仕上げられており、街乗りの試乗では十分に合格点だと思いました。
その他、細かいところで気づいたことを少し書いておきます。
[良かったところ]
・トランクの自動開閉機能。両手が塞いでいるときなど便利そうです。
・ナビ画面のバックモニターが見やすい。先代より解像度が高くなり、画像が鮮明でした。
・トランクスルー。普段はあまり使いませんが、いざというときに便利です。
・後席が広い。(FFの最大のメリットですね)
・FR車なみに小回りが利くところ。(後輪操舵のメリットのひとつですね)
・充電用のUSBコネクタが多い。前席3個(コンソールボックス内1個)、後席2個。
・トランク内の100Vコンセント。これも便利だと思います。小型の冷蔵庫を積んでおけば、車旅行の時に生鮮食料品を買って帰るということもできそうです。
[悪かったところ]
・内装が安っぽい。先代以上にシンプルになっています。高級車というには樹脂が多く質感が低い内装でした。個人的には本杢目パネルとか採用してほしいです。
・このデザインにするなら、中途半端なトランクではなく、BMWのグランクーぺのようなハッチバックにした方が便利だったと思います。
・メーターの質感が低かった。グラフィックで描画されたメーターのためか、ゲーム機のようで質感が低かったです。デザイン次第でもう少し高級感を持たせることは可能だったと思います。
・デジタルインナーミラーが見づらい。ここは先代から、あまり進歩がなかったです。
・ブレーキキャリパーが安っぽく見えた。キャリパーの鋳型が雑なのか、銀色塗装のためか、表面の粗さが目立ち、かなり質が低いように感じました(見た目だけです)。
・ドアヒンジカバーがなく、ドアストライカーカバーが樹脂で安っぽい。(ここまで先代を踏襲しなくても良いのに)
・チリ(ボディの合わせ目)がやや大きめ。先代より精度が落ちているような気がします。(個体差かも?)
クラウンの内装は、世代を経るごとにシンプル(というよりも質素)になっていくようで、今回も高級感という意味では、前モデルより劣っているように感じました。
220クラウンも自慢できるような内装ではなかったものの、最上位モデルのG-Executiveではパネルの一部に本杢目が使われていました。クロスオーバーではプラスチックばかりが目につきました。
ここ数年のトヨタブランドの車は、たとえクラウンであっても、内装の質を追求することに対して、ほとんど努力を払わなくなったような印象があります。トヨタの開発者はシンプルモダンと言っていますが、高級車にふさわしい内装ではなくなってきたと思います。
高級な内装の車はレクサスに任せるというような、トヨタの社内的な棲み分けが進んでいるのでしょうか。
220クラウンの過剰品質といわれたボディ剛性と足回りの性能が、新型のクロスオーバーでどう変わったかが、個人的には一番の関心ポイントでしたが、残念ながら、今回の街中の試乗では高速域での操縦性、安定性まではわかりませんでした。
(レンタカーでも借りて、実際に高速道路やワインディングロードを走ってみるしかないかなと思います)
部品の外観からの印象に過ぎないのですが、ボンネットを開けてエンジンルームを見たところ、先代のふんだんにコストがかけられたアルミダイキャストのサスタワーはなくなり、ごく普通のサスタワーに置き換わっていました。
スポーツセダンとしての走りの比重が小さくなったことが窺える、クロスオーバー(Gグレード)の方向性を象徴するコストダウンだと感じました。
おそらくニュルブルクリンク(サーキット)のような非日常的なレベルでの走行性能を削ることでコストダウンを行い、日常的なレベルでの走行性能に目標を変えることになったのだろうと思います。(あれほど豪華なサスタワーをおごられた車は、一部のスポーツカーぐらいでしたから)
ちなみに『日経クロステック』によると、クラウンがFFになったのは、FR用のGA-Lプラットフォームでは、デザイン上重要になる大径の21インチタイヤに対応できないため、GA-Kプラットフォームに変更になったとのこと。
このことからも、新型クラウンでは走りよりもデザインを優先したことがうかがえます。
私自身はまだRSアドバンストには試乗していませんが、RSアドバンストのYoutubeでの試乗レビューなどを見るかぎり、走りについてはGグレードから一変して高い評価が得られています。
デュアルブーストハイブリッドのように高出力のリア駆動モーターがあれば、かなり走りを重視したリアルタイム制御が可能だとは思っていましたが、初登場なので、それほど期待はしていませんでした。
通常なら、初採用の新メカニズムは、初登場時はやや粗があり、マイナーチェンジ後ぐらいで完成してくることが多いように思いますが、これほど早く完成させてくるとは意外でした。
次期RXにも搭載されるそうで、トヨタが本気で開発してきた駆動システムであることがうかがえます。
次回、コンセプト編(高級車とは何か?)に続きます。