先日からBluetoothスピーカーに関心が向いている。
11月末にオーディオレスのフィットを三沢まで引き取りに行った際、iPhoneと BOSEのBluetoothスピーカー「Bose SoundLink Max Portable Speaker」で帰ってきて、車載してもノイズに負けないパワフルさに感じ入った。
ただ、BOSEらし過ぎるクセ(低音の迫力と引き換えのboomyさ)が鼻につき、もっと気に入るモデルをなんとなく探していた。

東京散歩の締めに寄った有楽町のビックカメラで中国人店員から薦められたMarshallのスピーカーには
「あれ、こんなにパンチがあってふくよかかつ伸びやかな低音が出るの?」と驚いた。
エレキギターアンプ、そう、ライブでのギター向けPAスピーカーのイメージが強い(というかそれしか知らない)Marshallには、パンチと大音量という印象を持っていたが、どうしてこいつぁバランスいいじゃない?前向きに要検討だ。
それから息子がコンパクトBluetoothスピーカーを物色していることを知り、Marshallを推薦し、2万円程度のコンパクトモデル「Emberton II」がウチに来た。
約7×7×16センチ、700g 程度の小ささからクリアでキレのある聞きやすい中高音と、口径的には豊かとは言えないけれどboomyというよりは節度と低くまで伸ばそうという意思を感じさせられる音質はトータルでバランス良く、とても好ましいものだった。
それを聴いた印象としては、ビックカメラで聴いて感動した5kgくらいありそうな大きめのモデルの音を無理せず小さくしたようなバランスを感じ、
「ああポリシーのあるもの作りをしているな」と信頼感が高まった。
ということで、BOSEのモデルは売り払うことにして、それと同等価格帯のMarshall製品を買うことにした。
Middletonという製品で、約10×10×23センチ、1.8kgというサイズ感。
本日到着、楽しくなっていろいろな曲を掛けてサウンドチェックしていた。

Emberton IIとMiddleton
7×7×16cmと10×10×23cm

700gと1.8kg

前後両面にそれぞれスピーカーが向いている全周囲スピーカー
大きな方Middletonは側面にバスレフポート?も付いている
以下に、これらMarshallのスピーカーをサウンドチェックした楽曲を上げておくが、聴きたかったポイントは、以下の3点。
・全体的にバランスが良いか
・小さなスピーカーなのに低音が出るという触れ込みは本当か
・元気さ、パンチ、キレ、フレッシュネス
さて。
ボクがいつもサウンドチェックでまずははじめに使うソースは、コイツだ。
FourplayのBali run
ジャズ界の大御所たちが余裕で上質なジャズ〜フュージョン楽曲を楽しんでいるユニット。
プレイヤーがプレイヤーなので、ミキシングやマスタリングエンジニアも手を抜けない。現在のレベルからすればわずかにノイズが気にならないでもないが、彼らのアルバムはどれを取っても超優良録音盤である。
Bali run での聴きどころは、下に伸びる5弦ベース(6かも)の極低音が歌うようにうなる録音品質。
それに合わせたように、バスドラムのホールから空気をフォッフォッと押し出すさまが記録されている。
低音に強いとうたうスピーカーやヘッドホンの品質が試される。
小さなEmberton IIではそういう極低音は全く再生されない。が、中高音の素直さは大きいMiddletonだとその極低域を再生しようと頑張っていることが分かる。
いずれのモデルも、
「このサイズからこんなに伸びやかな低音が出るの?」
「下から上までバランスはとても良い」
「パワフルで元気な鳴りっぷりはとても気持ちいい」
というMarshallのポリシーを共通して感じさせてくれる。
大切なのは、両モデルとも大きさゆえに出しようもない低域を膨らませて演出するのではなく、聞いている者にできる範囲の音を伸びやかに気持ちよくデリバリーし、場合によっては聞こえない音域を自然と脳内再生させてくれる印象があること。
イニシャルDでかかるようなタイプの曲は、とにかく大音量でボンつく迫力がウリだろうけれど、
このスピーカーはそういう低音の鳴り方ではなく、このBali runが余裕で気持ちよく聴けるような品質の良い鳴り方をする。
とりあえず、とてもいい。気に入った。
オランダのフュージョンバンド、On ImpulseのMankini Song
Apple Musicへのリンク
この曲も、冒頭のバスドラのキックが押し出す空気感が伝わってくるMiddletonに嬉しくなる。そしてやはりうねりながら歌う速いベースラインも気持ちよく再生できるかどうか。そういう極低音は、小さなEmberton II では苦しい。が・・・
メロディーは軽くミュートさせたトランペットと、エレピソロが引っ張るのだが、ざらついて湿ったペットの色艶と、柔らかいのに指でキーを叩くアタック(ベロシティ)のヒューマンさがしっかりと再生できるか。その中高域の元気さと透明感は、あれれ、小さなEmberton II の方が得意なようだ。抜け感がMiddletonよりも明らかに上で。
おもしろいなぁ。
Chick Corea Elektric Band II のアルバム「ペイント・ザ・ワールド」の4曲目、CTA
この辺りの曲は、一般人には「なにがいいの?」という印象かも知れない。
超強力なミュージシャンたちが「さ、やってみようか」と一発録りしたら、インプロビゼーション炸裂なアドリブソロ、フィルイン、手数オカズテンコ盛りなのにライブ盤ではなくやはりスタジオ録音作品だよねぇこれ。という怪作。
Middletonに求めたいのは、やはりベースの低音。
多分、この曲の一番低いベースラインはかなりのもの。
それを十分とは言わないまでも再生の片鱗を醸し出しているこのスピーカー、欲を言えばキリがないが、この小ささ軽さ手頃さでこれだけ鳴れば嬉しいよね、というレベルではあった。
あと、やはり中高音のスッキリさは小さなEmberton II の方が一枚うわてだな。
帝王マイルスデイビスのC.T.A.
先のチックコリアのCTAの原曲だ。
C.T.A.とは、マイルスのプレイヤー仲間でサックス奏者のジミーヒースが付き合っていた彼女の名前 Connie Theresa Ann ということ。オシャレやなぁ。自分のイニシャルがトッププロの楽曲名になるなんて。
録音は古いので音の上や下がどうこうと言うことはしないが、空気感は伝わってくる。
というか、こういう古い録音こそ小さなEmberton II の聞かせどころかも知れない。
オスカーピーターソンのアルバム「WE GET REQUESTS」のYou Look Good To Me
アルバムの邦題が「プリーズリクエスト」ってのにひっくり返りそうになるが、間違いなくジャズピアノ界の名盤中の名盤。
全曲が短い小品かつとても聴きやすくて楽しいので、ジャズ初心者入門者にはうってつけ。
そうでありながら、ひと回りしてからここに戻るとやはりこのアルバムすごいなぁと感服する。
大学生になって学生生協のCDの棚にあるのを見つけて一番最初に買ったのだが、それを
タカヒトさんに伝えた時には「ドラえもんで出てきた大学生みたい」と言われた。
話が逸れたが、マイルスのアルバム同様古い録音なので全体の空気感が上手く再生できるかどうかが重要。
そしてこの曲You Look Good To Meは、アルバム全曲の中では、一聴しただけではパッとしないかも。
ところが聴き込めば聴き込むほどに味わい深い。
簡単に書くと、印象的なボウドベース(カタカナで書くもんじゃないな、bowed bassだ)とピアノの穏やかな旋律、そしてドラマーはトライアングル?
そんなとても静かで穏やかなワンコーラスで始まる。
それから2コーラス目はいきなりベースソロ。低音の王さまベースが、野太い地声を使わずに頑張って高い音域で猫なで声でやさしく語り掛けるところから物語が展開していく。
ピアノに主役が受け渡されてからストーリーはどんどん調子が上がっていく。それはもう気持ちよく快調に軽やかなステップを重ねていくように。
最高潮に向かってあとひと息!
と思った時に、物語は急速に終焉に。グッドエンドなのかそうでないのかは聴く者の胸に委ねられるが、しかしとても穏やかで静かに閉じるんだ。
4分52秒の決して長くはない小品に、これだけの物語と余韻を詰め込んだ、このアルバムの中では地味なのに最も印象的な曲。
1,2曲目なんてサイコーに楽しいんだけど、最後に選ぶのはこの曲だった。
スピーカーとしては、そういう空気感を再現できるかということだが、ピアノトリオというシンプルな構成の楽曲は、Marshallスピーカーたちにとっては得意みたいだ。
長くなったから、
視聴した残り7曲は後日アップしようかな。