
E90/E92世代の320iに載っているN43エンジン。
日本語圏ではどうしても、
「直噴で壊れる」
「NOxセンサーが面倒」
「インジェクターが高い」
「4気筒BMW」
というイメージで語られがちです。
もちろん、それは間違いではありません。
実際、NOxセンサー、NOx触媒、インジェクター、O2センサー、イグニッション系など、きちんと動かそうとすると気にする部分は多いです。
ただ、技術的に見ると、このエンジンはかなり面白い存在だと思っています。
N43は2.0L直列4気筒の自然吸気エンジンで、320iでは170ps級の出力を持ちます。
ここまでは普通の2.0L NAエンジンに見えます。
しかし中身を見ると、単なる直噴エンジンではありません。
N43は、スプレーガイデッド直噴と成層リーンバーンを使うエンジンです。
通常のガソリンエンジンは、空気と燃料をおおむね理論空燃比付近で混ぜて燃やします。
一方、N43は低負荷時に燃焼室全体としてはかなり薄い混合気にしながら、点火プラグ周辺だけ燃えやすい濃度にして燃焼させます。
つまり、燃焼室全体では薄すぎる。
でもプラグ周辺だけは火がつく。
この状態を、燃料噴霧の形、噴射時期、点火時期、筒内流動を使って成立させています。
これがN43の面白いところです。
低負荷巡航ではスロットルをあまり絞らず、空気を多めに入れて、燃料を少なくして燃やす。
ガソリンエンジンでありながら、ある意味ではディーゼル的な「空気過剰・燃料量制御」に近い考え方です。
その結果、条件が合うと燃費がかなり伸びます。
自分のE92 320iでも、長距離巡航では16〜18km/L付近を狙える場面があります。
2.0L NA、170ps級、FR、6ATの車として考えると、これはかなり優秀だと思います。
もちろん、N43は万人向けの名機ではありません。
むしろ維持面では面倒な部類です。
リーンバーンを成立させるには、NOxセンサー、NOx触媒、インジェクター、燃圧系、O2センサー、DMEの適応制御などがきちんと働いている必要があります。
どこかが崩れると、成層燃焼に入らなくなり、ただの直噴NAエンジンに近くなってしまいます。
だからこそ、N43は「壊れる4気筒」とだけ見られることが多いのだと思います。
しかし、燃焼技術として見ると、このエンジンはかなり尖っています。
パワーで語るエンジンではありません。
音で魅せるエンジンでもありません。
高回転まで回して気持ちいい、というタイプでもありません。
でも、自然吸気ガソリンエンジンで低負荷効率をここまで攻めたという意味では、かなり記憶されるべきエンジンだと思います。
N43は、ただの廉価版4気筒ではなく、
BMWが純ガソリンエンジンで燃費と燃焼制御をかなり真面目に突き詰めた、少し変わったエンジンです。
壊れやすいかどうかだけでなく、
「なぜこんな複雑なことをしてまで燃費を稼ごうとしたのか」
という視点で見ると、N43はかなり面白い存在だと思います。
Posted at 2026/06/02 11:12:22 | |
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