約半年前、2025年4月26日 山梨県甲府市役所の駐車場で乗用車1台が炎上し、全焼したニュースがあったのを覚えているでしょうか?
自分はこの出火元がドライブレコーダーの駐車監視バッテリーだったのではないかと疑い追加報道を待っていたのですが続報がないので自説を公開します。
まず報道内容から事実を整理
1、所有者は駐車場でエンジンをかけようとした
2、助手席付近より出火
3、所有者は消火を試み軽いやけどを負った
4、消防通報より約30分後に消火
5、警察による調査で助手席下のバッテリーが出火元とみられると発表
■出火車両について
報道映像から推測すると車両は「初代 スバル・レガシイ」
製造は1989~1992年、およそ35年前の経年車であることから、出火元について整備不良等様々な憶測がありましたがその可能性は低いと思われます。

同型と思われる車両 引用元:Wikipedia スバル・レガシィ
■機械的トラブルではない
ガソリンエンジン車の火災はエンジン周辺が出火元となることが多いです。
エンジンルームにはガソリンをはじめ、可燃性油脂がつまっており、引火すればかなりの勢いのある火災につながります。
しかし消火後の当該車両のボンネットには火災の形跡がありません。

引用元:
YBS News ※一部を加工
また、ガソリンタンクのある後部も残っている事から、整備不良による機械的トラブルでないことが推測できます。
(意外かもしれませんが、密封状態の液体ガソリンは燃えにくいです)
出火車両の隣に駐車している車が無傷なことから火災は見た目のインパクトと対照的に、限定的な範囲内で消火されたことがわかります。
一方で車内は焼失し、火元は車内で内装品に燃え移ったと推測できます。

引用元:
YBS News
■電気的トラブルでもなさそう
次に可能性として有り得るのは車内の電気配線トラブルです。
漏電からの火災であればまず煙が上がって焦げ臭くなり、その後火の手が上がるようなケースがほとんどだと思いますが、報道によれば
「所有者がエンジン始動直後に火の手が上がった」とのことで漏電火災にしては早すぎることがわかります。
■では燃え上がった助手席下のバッテリーとは?
当該車両はハイブリッド車でなく、メインの鉛蓄電池バッテリーはエンジンルームにあるため、助手席下にあったのは何らかの後付けバッテリーで間違いないでしょう。
さらにリチウムイオンバッテリーの可能性が高いです。
所有者がエンジン始動直後、つまり運転席から助手席の出火を確認できたのは、かなりの勢いで炎が噴き出したためで、リチウムイオンバッテリー火災の突然激しく燃え上がる性質と一致します。
所有者は消火を行おうとして軽いやけどを負ったことが報道されており、おそらく初期消火があったにもかかわらず全焼したこと、
消火完了は30分後ということからも何度も再発火するリチウムイオンバッテリーである可能性を高めます。
■バッテリーはドラレコの駐車監視用だった可能性が高い
車内の予備バッテリーとしてはポータブル電源が一般的です。しかし、助手席下は狭くて手の届きにくい場所ですので、もっと使い勝手の良い助手席足元などに置いた方がよいでしょう。
つまり助手席下のバッテリーは動かす意図が無かったと思われることから、ドライブレコーダー用バッテリーの可能性が高まります。
ドラレコはエンジン停止中は電力供給がないので駐車中は録画しませんが、そこで数十時間の連続録画を可能にするのがドラレコ駐車監視用のリチウムイオンバッテリーです。
■バッテリーはなぜ発火したのか?
リチウムイオンバッテリーの火災としては高温の車内に放置したことによる火災があげられますが、当日の甲府市の気温は最高気温21.4℃で、火災発生時の午後9時ごろには日が暮れて気温は13.7℃だったことを考慮すれば、車内は涼しかったでしょう。
この条件下で所有者が乗りこんだタイミングで偶然発火したとは考えにくく、バッテリーに蓄積された何らかのダメージから、エンジン始動時の通電をきっかけに爆発したのではないでしょうか。
ある駐車監視バッテリーの施工例では助手席下に固定されず設置されたものが掲載されており、車両が段差で浮き上がった衝撃でバッテリーにダメージを与え続け、火災に至った可能性も有り得るのではないかと思います。
あるいは駐車監視は放電と満充電を繰り返す過酷な環境にあるため、想定よりも早く劣化していたのかもしれません。
いずれにせよ、リチウムイオンバッテリー付きドライブレコーダーに潜む未知のリスクが原因だったのではないか、というのが自分の立てた仮説でした。
(発表からの推測は限界があるので、バッテリーが駐車監視用でなかった可能性やリチウムイオンでない可能性も消えてません)
■個人的な感想
今回の火災車両となった初代レガシィセダンは1993年のWRC8回戦ニュージーランドで1位となり、スバルがWRCで初めて優勝を獲得したモデルだったようです。年齢などからオーナーが青春時代のこの勝利に強い思い入れのある方で、長い間大事に乗ってきた車が失われたことが察せられ残念でなりません。
あくまで想像ですが、オーナーは火災発生後、冷静にエンジンを停止し、燃え盛る助手席側の前後ドアをあけ放って初期消火に当たったと思われます。懸命な努力がガソリンへの延焼を防ぎ、消防隊が車内を消火する手助けとなり被害を最小限に食い止めたのではないでしょうか。
Posted at 2025/12/06 00:51:36 | |
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