先日、ちょっとお見受けした記事が有ったのですが、ご本人に対して気に障るといけないかなと思い、直接意見したりトラックバックしたりしませんでしたが、エキマニにバンテージを巻く事への私なりの解釈が有ったので書いてみようかと思いました。
さて本題ですが、先日もエキマニを変えた時にショップの人にも言われましたし、エキマニを換えた話をした時に後輩からもですが
「なぜバンテージを巻かないのですか?」
と言われましたが、私は巻かなかったというより巻くのを止めました。
ネットで色々と検索すると感覚的には95%くらいが「バンテージを巻くと遮蔽断熱効果が有りエンジンルームを熱害から守り、尚且つ排気温度が高くなる事で排気効率が上がる」というような事を書いて有ります。
(残りの5%はエキマニが割れる心配があると書かれていたショップの記事を観たのと、実験結果としてエンジンルームが熱かったという記事を観たので)
こう堂々と書かれていては信じ込んでしまいますが、本当にそうでしょうか?
どんなクルマでも良いのですが、ノーマル車の場合まず遮蔽板が付いています。
この遮蔽板は金属で遮るだけの物と耐火断熱材の一種で形成されたFRPのような物で遮蔽し、エキマニを保温させずにエンジンルーム内の熱害から守る事に主眼を置いています。
※補足説明1)
金属板で遮蔽するのは輻射熱の電磁波を遮る考え方です。一方耐火断熱材で遮蔽する物は遮蔽した板を断熱させて遮蔽板からの輻射を緩和させる目的です。
ですから遮蔽対策は必要だと思います。
ソコだけを考えればバンテージもアリなのですがバンテージを巻くとエキマニを保温してしまいます。薄いとは言え巻く方がエキマニ自体の温度は高くなってしまいます。
例えばランボルギーニやフェラーリ、ポルシェでも良いのですがスーパーカーと言われる手間暇かけて製作されるクルマでさえバンテージは巻いていませんし、バンテージに変わる断熱材を施工しているのを写真等で見かけません。
しかも熱害という意味ではMR、RR等のレイアウト上、エキマニやマフラーと電装品やインテークマニが近いにも関わらず。(遮蔽板は付いていますネ)
一方レース車両を見渡してみても電線の保護やフレッシュエア導入管に対してはバンテージとか表面にアルミを貼った遮蔽効果も持たせた断熱材で養生していますがエキマニには施工していません。
よくエキマニにバンテージを巻いた時のインプレッションで見るフレーズ
「バンテージを巻いたら低速トルクが増した」
というのを拝見する度に私は
「トルクが増したのを体感出来るほど排気効率が悪化してしまった」
と読んでしまいます。
低速トルクが増大する事は単純に考える分にはとても良い事なのですが、高温になった事で管内の断面積不足(容量に対して細い)となり結果的に背圧が増えたから、トルクが増したと考えれば手放しでは喜べません。
一般論ですがエキマニやマフラーは、
細くすると→低速トルクが増える代わりに高回転まで回り難くなります。
太くすると→低速トルクが痩せる代わりに高回転まで回り易くなります。
良いエキマニの役割とは、排気ガスの排気脈動を利用して排気管内を背圧にさせ、混合気を多く取り込んで燃焼させる事でトルクを上げる目的です。
実際に実験すれば判りますがエキマニやマフラーが無ければ全く出力が出ません。
ただ回るだけのエンジンになってしまいます。
そこでエキマニは細い方が背圧になり易く、太い方が背圧になり難いという訳です。
但し細すぎる場合、背圧は増すのですが高回転時には高温高圧の排ガスがどんどん流れて来て圧力が高くなりすぎてしまうので、細すぎると排気ガスが抜けなくなりエンジンが回らなくなってしまいますので適切な太さにしなければいけません。
繰り返しになりますが、ココで言うバンテージを巻いた時に「トルクが太く感じた」理由としては、排気ガスの温度が高くなる事で排気ガスが膨張し管内を通り難くなってしまい、結果的に細いエキマニを付けたのと同じ事が生じてしまったのではないかと思います。
ですから例えばエキマニの設計が悪くて太すぎる径のパイプを使用していてバンテージを巻く事で結果的に背圧が掛かるという場合にのみ有効ですが、そういう理由なら本末転倒です。最初から適切な径のパイプで製作しておけば良いのですから。
またオートバイを見るとレイアウト上の話もありますがエキマニ、マフラー部分は走行風が直接当たります。どちらかと言うと冷やすイメージです。
排気ガスが冷えるという事は、排気ガス自体が同じ量でも体積は減ってより排気効率が上がるのではないかと推測します。
ですからあくまで私の考えですが、エキマニにバンテージを巻く事でのメリットよりも弊害の方が大きいと思います。
また市販しているエキマニの材質を考えると安易にバンテージを巻く事を勧めるのはどうかと考えます。
というのも市販品で使用する材質は一般的にSUS304を使用しています。
例えばRX-8は鋳鉄ですが鋳鉄とオーステナイト系ステンレスでは熱膨張率が2倍強違います。
ただでさえ熱膨張率が2倍も違うのに保温して温度を高めたらより膨張します。
オーステナイト系は高温でクラックが入り易い性質を持っていますのでバンテージを巻かなくても1000℃近くの表面温度になると言われていますから、例え薄いとは言えバンテージを巻く事でそれなりに保温されより高温になります。
またフランジ面だけで言うと伝導伝熱がその分増すので実際その部位だけ観ると温度は高いハズなので溶接面が心配になります。
と申しますのもSUS304という材質は食器にも使用されるような一般的なステンレスですので常用温度は800℃以下が望ましく、どうしてもバンテージを巻いて1000℃以上で使用するなら309や310といった高温に耐えるステンレスの使用を考慮するべきです。
また以前に 「磁石にくっついてます(笑)」 というブログを書きましたが、メーカーが採用しているSUSは膨張率の低いフェライト系で、耐銹性もオーステナイト系と何ら遜色の無い物を鉄鋼メーカーに依頼して製造させ、使用しています。
結果、割れにくく丈夫です。ただ形状的に排気効率よりもコストダウンを考えた造りになっている事が多い(不等長とか)のでエキマニを交換するメリットは有ります。
※ 補足説明2)耐銹(たいしゅう)性とは酸化腐蝕(主に錆のこと)が発生しにくい、錆に耐える性質という意味です。ただ今回の場合には高温酸化(錆というより三酸化鉄化)に対しての耐性を言います。
※ 補足説明3)フェライト系とは金属組織が鉄に近いという事です。因みにステンレスと言っても主成分はみんな鉄でクロムやニッケル等を添加して組織を可変させた合金鋼とお考え下さい。(耐熱鋼の分野ではステンレスは鉄系と呼びます)
まとめ
・バンテージは遮蔽ではなく断熱です。
依って表面温度が徐々にしか熱くならないだけで時間をかければ薄いので、結果的には表面温度は結構熱くなってしまいます。(遮蔽という意味では幾分劣ります)
・バンテージは断熱材です。
ですから薄いとは言えエキマニ自体を断熱してしまうのでエキマニ自体の温度が巻いていない時よりも高くなり冷えるのも遅くなります。(いつまでも熱く冷えない)
・バンテージを巻く事で排気効率がもし上がるというのならエキマニだけと言わずマフラーまでしっかり保温すれば良いのですが、レース界を見渡しても世界の有数なスーパーカーを観ても見当たらないので排気管全てに於いて断熱保温は必要の無い物と考えて問題無いと思います。
皆さんはこの見解を読んでどう思われましたか?
私の知識不足・認識不足の面も有ると思いますので何かご意見頂ければ嬉しいです。
追記)17.01.26.
材質の件は ココ ↓
https://minkara.carview.co.jp/userid/444969/blog/39227594/
にまとめましたので、コメント入れる前に読んでみて下さいませ。
Posted at 2009/07/29 12:39:48 |
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