こんにちは。
すっかり寒くなって来ましたね。
皆さまに於かれましては、体調崩さぬ様に御自愛下さいね。
さて、未だに昔書いたブログへコメントが偶に入ります。
https://minkara.carview.co.jp/userid/444969/blog/14330365/
その事については、本当に有り難く思うのですが、コメントの内容が問題の
無いレベルなら別に良いのですが、間違った事を書かれると黙って放置
出来ない性質なので困ったものですね(苦笑)。
で、もう古い記事なのと、一応意見を下さった方には最大限尊重して個別に
メッセージを差し上げてもみるのですが(以下省略)。
なので、いつまでも面倒なのでリンク先用に今回ブログを上げておくので
よく分からない人は意見する前に、こちらを読んでご理解下さいませ。
1. 金属は熱膨張するという事実
小学生の時に理科の実験で鉄を熱したら膨張すると習ったかと思いますから
説明は不要かと存じて居りましたが、未だこの辺りが若干あやふやな人が
多い様なので、敢えて書きますが
金属は熱を加えると膨張 します。
2. 材質に選って熱膨張係数は大きく異なります
なので、余程の人でなければ材質によっては熱を加えた時に膨張する量や力が
まちまちで違うという事も説明不要かと考えて居たのですが、改めて書きますが
物に依っては大きく異なります。
そこで、以前から具に私のブログをお読み頂いて居る方は読んだ記憶があるかと
思いますが、同じステンレスと呼ばれる材質でも種類があるので、熱膨張係数が
異なります。
専門的な話は、ネットで探せば沢山参考資料が出て来ますので、敢えてココでは
掻い摘んで書きますが、よく後付で売られているエキマニの製作時に使われる
SUS304という材質は、オーステナイト鋼という種類になるので、自動車メーカーが
採用する材質の約2倍膨張する材質を採用しています。
3. ステンレス(オーステナイト鋼)の弱点(高温酸化について)
ステンレスは一般的には錆ない鋼として認識されていて、とても重宝する材質ですが
あくまでも条件に合致した物なのかが大事なポイントです。
で、前述のSUS304という材質は、18-8とかスプーンの裏に刻印されていたり
しますが、要は18%のクロムと8%のニッケルが入っている材質ですよという
表記です。
ステンレスが錆びない仕組みは、このクロムが先ずは酸化して被膜を形成するので、
酸化被膜で金属の表面を守っているという理屈です。
なので、常温下で食器として使用するという条件なら先ず問題はありません。
ところが、高熱を加えられる条件になると酸化が促進されてしまうので、表面の
クロムが減ってしまい13%を切った辺りから、元々ステンレス鋼に含まれる
微量の炭化物とクロムが反応してしまい、クロム炭化物が生成されてしまいます。
化学記号でいうとCrとCは相性が良いので、次々と結束されてしまい冒頭で
説明していた酸化被膜を生成するクロムが無くなってしまい、酸化被膜を生成
できないのでステンレスの鉄分が酸化して腐食が始まります。
4. ステンレス(オーステナイト鋼)の弱点2(鋭敏化)
元々規則正しく配列していた分子が、熱を加えられた事でクロムが析出されて
しまうので分子基配列が崩れてしまうことは、容易に想像が付くかと思います。
故に現象としては鋭敏化と申しまして、強度不足になってひび割れが発生して
しまいます。
個人で御調べになられたら「粒界腐食」とも記載されて居りますので、専門的な
ことは其方に詳しいですから、そちらをお読み頂くとして要するに高温の熱が
加えられたら腐食されて孔が空いたり、強度不足を招いて割れたりします。
5. エキマニの溶接部が割れやすいのはなぜか
で、サーキットを走るとかエキマニを市販品に交換する方なら、エキマニの溶接部が
割れるという話をよく耳にするかと思いますが、真っ先に疑うべきは使用したから
割れたのか、そもそも弱いからかという事です。
どの様な意味かと申しますと、前述の鋭敏化はステンレス鋼の溶接時に最も注意を
払わなければいけない項目だからです。
それらの条件を考慮すれば、そもそも鋭敏化の心配をしなくても済む材質で施工
した方が企業側からすればメリットです。
ドリキンで有名な彼の某有名な方もテレビ番組で仰っていましたが、国産車なら
サーキットで走らせても故障しないと明言していました。
つまり、サーキット走行という苛酷な条件でも耐え得る材質の選定をしている、
或いはそういう施工をしていると考える方が自然ではないですか。
6. 市販車が採用するエキマニの材質
鋳物ではFC-D若しくはFCVと呼ばれる鋳鋼品を採用しています。
重いですが強度もありますし、何より膨張率が低いので熱変形や応力で
割れることは通常有り得ません。逆に云えば鋳鋼品で割れるなら他の
材質でもかなり厳しいと云えるでしょう。
最近、増えているパイプ状のエキマニの材質は市販品で採用されている
SUS304ではなくSUS430(ここでは代表的な材質を選んでいます)という
材質を使用しています。
なぜSUS430を選定するかと申しますと、高温酸化雰囲気下でも材質が
安定して居り、軟性があり熱に因る硬化もしません。
またオーステナイト鋼の問題である、溶接時の鋭敏化(粒界腐食)による
割れも起きず、オーステナイト鋼と比較して熱膨張も約半分です。
更に価格面でも高価ではないので、採用されています。
7. カーショップが採用する材質の問題
なぜ、このように判然としたメリットがあるSUS430を使用しないのか
不思議ですけど、知識が無くて採用しないか、一般道で使用するだけなら
問題が起きないだろうという判断かのどちらかかと思います。
で、面白いのがエキマニを製作されている会社で競技用だけはアルスターを
採用している事です。
アルスターを聞き馴れて居ない方に説明すると、高温酸化で鉄スケールが
発生しないように表面処理を施した鉄です。
要は、SUS430と同じ目的ですね。熱膨張率がアルスターも430も同様です。
因みにアルスターを採用しているエキマニは、表面に耐熱塗料で防錆している
事が多いですね。
上記の様に、競技用では敢えてアルスターを採用しているというショップの
レベルでは、分かっていてやっていると理解出来たかと思います。
但し、アルスターは万能ではないので耐熱温度を超えると鉄が酸化してスケール
を発生してしまいます。
8. 総合的に判断するとエキマニに対して良くない事とは
以上の事を踏まえた場合、エキマニという部品には適した材質があり、また、
エキマニの寿命を考えた時、ただでさえ高温下に晒される訳ですので、無用な
物を装着しない方が無難だと理解出来るかと思います。
つまり、バンテージなどは巻かない方が良いと思いませんか?
どうご判断するかは、個人の裁量にお任せしますが、変な情報に流されたりせず、
よく判断してもらいたいです。
また、この内容を読んでもエキマニにバンテージを巻いたとして、何か不具合が
生じた際は自己責任でお願いしますね。
割れたから悪いとか巻き方が悪いとかではなく、そもそもそのパーツはメーカー
純正品ではなく、
見た目重視 で造られた物かも知れないのですから。
それではまた。