2009年08月06日
セッティング考察3。減衰調整。
間違いの指摘は受けるけどクレームは受け付けません。あは。
しつこいようですが、ジムカーナでFFでラジアルタイヤが脳内の基準です。
長いので途中をはしょって最後の方のまとめを読むのも手。
さて、前回はタイヤの空気圧。
次に簡単に弄れる項目ということでショックの減衰力について考えますか。
そもそもショックの減衰力とはなんぞや、という話にもなる気もしつつ。
まず、足回りってのはブレーキなり横Gなりで車体の荷重が移動することでストロークします。
そのストローク量っていうのは当然のことながらバネの固さで決まります。OKですか?
例えば10kgの重りをのせると1mm縮むバネがあったとします。いわゆる10kg/mmってレートのバネです。
仮にこいつに荷重移動されて100kgの重さが追加されたとします。
となるとバネは当然10mm縮みますね。
仮にここで20kg/mmのバネに変更したとしましょう。そしたら、同じ100kgが追加でかかったとしても今度は5mmしか縮みません。
ところで、この考えの中には減衰力だとか、そういう話は一切ありません。つまり減衰力を変更したところで、ストロークの"量"は変わらないってわけです。
つまりロールが大きいからショックを固めるんだ~って考えは正解とは言えないです。
じゃあ減衰力ってなんじゃいって話です。
さっきの考えだと、ストローク中の過渡状態、要するにストロークが始めてから終わるまでの"時間"がないんです。
つまり、100kgの力がかかった瞬間に10mm縮むんです。ほんと一瞬で。瞬間的に。
ただ、現実にはバネにも粘りがあるんでバネが一瞬で縮むことはないでしょうけど。まぁそれで減衰力なしに、バネだけであれば十分に高速にストロークします。
で、すぐにストロークするとどうなるかというと、ものすごくフワフワでシビアなモノになるでしょう。
例えば右にハンドルを切ります。そうするとGを受けて車体の荷重は左によるでしょう。そして車体の荷重が移動した瞬間にサスがストロークします。一瞬でロールするわけです。そして、その荷重は一瞬でタイヤに伝わり地面に押し付けます。
そして次に左に切り替えしたとします。今まで左タイヤにのっていた荷重は一瞬で右に移動し、右にロールします。タイヤにかかっていた荷重も一瞬で右に移動します。
ハンドルに対してものすごくシビアで高速に車体は姿勢をかえ、グリップするタイヤがすぐに入れ替わります。
こんな車を運転するのは至難の業でしょう。ものすごく些細な操作にたいしても過敏に反応するんです。
じゃあこんな車を運転しやすくするためにはどうするか。タイヤへの荷重移動をゆっくりにすれば良いんです。そのためには荷重が移動する時間を長くする、つまりサスのストロークをゆっくりにすれば良いんです。
そこで減衰力が出てきます。ショックの減衰力によってストロークのスピードをコントロールしているんです。ショックが抵抗となってバネが伸びたり縮んだりするのを妨げて、ゆっくりにさせるんです。
こうすることで荷重の移動が遅くなり操作がしやすくなります。
じゃあ荷重移動は遅い方が操作しやすいんだから、減衰力をあげまくれいいじゃないかって話になりますが、もしそうした場合、路面変化への追従性が低下します。
つまり路面に凹凸があった場合などは、すばやくサスがストロークしてタイヤが常に地面に接地するようにすべきです。
ですが減衰力はこれとは全く逆の事です。減衰力を上げればストロークが遅くなるので、例えば出っ張りがあってサスがストロークしようとしたとしても、ストロークが遅すぎるので出っ張りの分をサスが吸収しきれなくなって、車体がハネます。出っ張りが過ぎて元の平坦に戻るときも、サスが伸びるのが遅いため極端に言えば軽く浮いた状態になります。
そんな状態では当然タイヤがグリップするわけもなく、つまり減衰力を高める事でドンドンとグリップ力は下がる事になるんです。
なんで、減衰力は通常丁度良いところに設定されるんです。
減衰力ってのはそういうもんです。
サスのストローク量を決めるものではなくてストローク時間を決めるものです。
ひいては荷重移動の速さを決めるものです。
さて、上のは初歩の話。
ジムカーナにおいて考えます。
上の話は基本の話ではあるけれど、極端なものです。
ジムカーナ上ではまた違った考えになります。
話がややこしくなるので、車体が前後(ピッチング)、左右(ローリング)する時の二つにわけます。
まず、最初にロールの方から行きましょうか。
ハンドルを切って曲がるとします。
実際は前後が同時に荷重移動がおきるわけではないですが、ここではわかりやすくするために前後で同時に荷重移動が発生したとします。
この時、前の減衰力が高くて、後ろの減衰力が低かったとしましょう。
そうすると、前のロールは遅く、後ろのロールは早く終わります。
重要なのはその途中、前はまだ荷重移動中、後ろは荷重移動完了のあたりです。
前は荷重移動中であり、右も左もそれなりに荷重がかかってます。つまり、グリップはまだ片側に偏りきってはおらず、左右のタイヤがそれなりにグリップしています。
大して、後は荷重移動が完了しており、片側に荷重が多くかかっています。反対側は荷重がほとんどかかっておらず、結果的に荷重の無いほうはグリップが大きく低下します。荷重のかかっている方は、かかっていないほうの低下したグリップを補うほどにはグリップが上がっていないので、後ろ全体としてはグリップが低下しています。
つまり、フロントはグリップしているけどリアはグリップを失い気味になり、つまり過渡的にはオーバー傾向になります。
ここでリアがスライドしはじめると、フロントはストロークしきる前に荷重が戻る方向になります。ここでリアがスライドしなければフロントも荷重移動を完了し、後は前後のグリップバランスに応じてアンダーになったりオーバーになったりします。
次に逆です。
前の減衰が弱くて後ろの減衰が強かったとします。
この場合、前は荷重移動が早々と完了し、リアはまだ移動中だとします。
リアはまだ粘っているので安定方向です。相対的に見ればアンダー傾向になります。
この後、リアの荷重移動が完了すれば、後は前後のグリップバランスに応じてアンダーになったりオーバーになったりします。
前後のグリップバランスは当然タイヤとバネの固さです。
次に前後です。
まずブレーキ時に前が沈みこみ、後ろが浮き上がる時。
前が固くて後ろが柔らかかったとします。
前はまだ荷重移動中ですが、後ろはもう荷重移動が完了して見かけ上軽くなっているとします。
前はまだグリップ上昇途中ですが、後ろはもう抜けきってグリップが低下しています。
ここでハンドルを切れば、フロントの入りは悪く逃げ気味に、リアが動きやすくなってスライド方向に、結局全体的に限界が下がった感じです。
逆に前が柔らかくて後ろが固かったとします。
今度はフロントには荷重がかかって十分なグリップがあり、フロントの入りはよくなります。
リアはまだ荷重が抜けきっていませんから、そこそこにグリップします。つまりどっちも限界が上がる方向です。
そして加速時。前が浮き上がり後ろが沈み込むときです。
同様に前が固くて、後が柔らかかったとします。
前にかかっていた荷重はまだ抜けきっておらず、後は荷重がすぐにかかります。
つまりフロントは逃げにくく、リアは安定方向にいきます。
逆に前が柔らかく、後が固かった場合、フロントの荷重はすぐに抜け、後の荷重はなかなかかかりません。つまりアンダー気味なのにリアのスライドも止まりにくいことになります。
さらに言えば、FFなのでフロントが食わないという時は加速時にホイルスピンする可能性がたかまります。
さらに前後の場合はもう一つあります。
分かりやすくするためにフロントの減衰は一定とします。
リアの減衰を柔らかくした場合、リアに荷重移動が早く行われますが=前の荷重も早く引き抜きます。後の変化が終わったので前を今度はひっぱるんです。
逆にリアの減衰を固くした場合、リアになかなか荷重が移動しないのフロントに荷重が残しやすいです。
まとめましょう。
実走行では前後と左右が同時に行われるわけで、複合的な動きをします。
なんで、減衰を変更してどれだけ変わるかはかなり未知数です。
とりあえず前後の減衰バランスが極端になっていなければ、方向としては
前の減衰を上げる
コーナー進入時フロントの入りが悪くなり曲がりにくくなる。
多少リアを動かす方向へ。
立ち上がりのトラクション抜けを防止。アクセルオンでアンダーになったり加速しない場合に有効。
前後のロールスピードのバランスとしてはオーバーの方向へ。
前の減衰を下げる。
進入時フロントの入りをよくしてフロントは曲がる方向へ。
多少リアを安定させる方向へ。
立ち上がり時はトラクションが抜けやすくなる。アクセルオンでアンダーになったりホイルスピンしたりしやすくなる。
前後のロールスピードのバランスとしてはアンダーの方向へ。
後の減衰を上げる
進入時リアの荷重も抜けにくく安定の方向。
多少フロントの荷重移動が遅くなり、頭が入りにくい方向へ
立ち上がりの時はフロントのトラクションを抜けにくくする。
前後のロールスピードのバランスとしてはアンダーの方向へ。
後の減衰を下げる
進入時リアの荷重が抜けやすく動かす方向へ
多少フロントの荷重移動が早くなり、頭が入りやすい方向へ。
立ち上がりの時はフロントのトラクションが抜けやすくなる。
前後のロールスピードのバランスとしてはオーバーの方向へ。
こんな感じでしょうか。
それぞれの要素のどれが自分の車で一番効果が大きいかは、それぞれなので不明です。
つまり自分でやってみて、自分の車はこの要素による挙動変化が大きいから、減衰を調整するとこの方向に行くに違いない、と覚えておく必要があるでしょう。
そして、減衰調整は前後左右のバランスを調整するものです。
だから実は一回決まってしまうとあまり変更する必要がないんです。
だって前後左右のバランスが大幅に変わる事なんて基本的にはあまりありませんから(タイヤの前後銘柄が違ってて、温度特性が大きく違うとかならあり得ますが)
コース設定やコンディションで味付け程度の変更はしますが、大幅に変える事なんて無いんです。
もちろんタイヤ変えたりバネ変えたりすれば再セッティングの必要はありますが、そういう事をしてないならベストを探って、そこからあまり変更しないほうが良いでしょう。
大幅に変えることがないということは、調整段数が多く、細かな調整が出来るショックの方が良いと言うことです。5段階など大雑把にしか変えられない場合、調整することもなく常に固定となるでしょう。
伸び側と縮み側の減衰力とか、スライド中のサスストロークの状態とか、そういのが無いので実はこれだけだと片手落ちです。
つまりサイドターンだとかのスライド中のコントロール性とか、そういうのが抜けてます。
さらにストロークしきる前に切り返したりした場合(つまり小さいコーナーとかスラローム)なんかも抜けてます。
次はその当たりを。
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頭でっかちが考えるセッティング | 日記
Posted at
2009/08/06 02:01:21
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