2016年10月12日
日産ルークス ML21S インプレ
****************************************
型式 : DBA-ML21S
年式 : 平成24年
グレード : 660 ハイウェイスター
ミッション : CVT
駆動方式 : FF
車両重量 : 930kg
前軸重 : 560 kg
後軸重 : 370 kg
ホイールベース : 2,400mm
エンジン : K6A 直列3気筒DOHC
排気量 : 660cc
最高出力 : 54ps/6,500rpm
最大トルク : 6.4kgm/3,500rpm
タイヤ・サイズ : 165/55R14
****************************************
スカイラインの雨漏り(2回目)の修理の為、代車をお借りした。
最初に結論を書いてしまうのだけれど、私はこの車に至極満足しており、もうスカイラインが戻ってこなくてもいいじゃないかと真剣に思った次第。
室内は広く、それでいてコンパクトな車体は取り回しも楽で気を遣う必要もなく、あらゆる操作も全く楽でストレスがない。まるで温泉に浸かりながら移動するような心地がして、極楽気分なのだ。
車に乗るのに何もそんなに苦労して乗らなくても、楽でいいじゃないかと思えてきたのは、恐らく私も年を取ったせいだと思われる・・・。心なしか少し切ない・・・。
<外観>
正直に言えば、街中で見かける軽自動車がすべて同じに見えてしまう。
スポーツ・カー以外はどれも同じに見えてしまう私であるから、この車の外観について云々する事ができない・・・。
<室内>
日産キューブも広いと思ったが、こちらも負けず劣らず広い。フロント・ガラスは遥か前方にあり、天井は遥か上方にある。横幅はさすがにキューブに比べてずっと狭いが、レイアウトが巧妙なのでそれほど狭いと感じる事はない。シートも、昔の車のように足を前に投げ出して座る感じではなく、ソファに自然に腰掛ける感じなので大変楽だ。
目線も高く、軽自動車でありながら、格上のセダンに乗る人を見下ろすのはちょっと不思議な感じがする。
だが、本当に感心したのはそこではない。
まず、シフト・ギアだ。
日産キューブはコラム・シフトだが、これがどうにも使いづらかった。今何速に入っているのか、さっぱり分からない上、操作するにもガチャガチャと異様に引っ掛かってイライラする。その点、こちらはコラム・シフトでもなく、フロア・シフトでもない、センター・コンソール(インパネ?)からニョキニョキっと生え出たタイプで、これが視認性も操作性も抜群なのだ。フロア・シフトのATよりもずっと小振りなレバーの大きさも絶妙だ。リバースもドライブも狙った所に一発で決まる。これは素晴らしい!
ひと昔前、シビック・タイプRのシフト・レバーがこんな位置にあった記憶があるが、その時は伝統的なフロア・シフトに固執する気持ちから何とも違和感を感じた。しかし、あれはもしかしたら最高の操作性だったのかもしれない。ATやCVTは所詮頻繁な変速操作はないけれど、マニュアル・シフトなら比べ物にならない頻度で操作するのだから、まさにマニュアルこそ重宝するはずだ。なにせ、手をレバーに近付けるよりレバーの方から手に接近してくれるのだから。
次に感激したのは、エアコンの温度設定する回転スイッチ(?)だ。今まで私が知っているのは、0.5度上げるのに必ず一回スイッチを押す必要があり、5℃、6℃も変える為には10回、12回と連続して押さなければならない。それがこの回転スイッチでは一瞬で、しかもアナログ的な人間の自然な感覚で世にも簡単に操作できる。しかも、その操作フィーリングが非常にしっとりしていて高級感があり、とにかく気持ちがいい。これには感激した。
リアの荷物スペースはさすがに猫の額のようなと言うべきか、雀の涙と言うべきか、とにかく狭い。リア・シートを倒したり移動させたりする事で何とか工面できるのだろうが、日常生活では幾らか不便に感じる事があるのではないかと思う。
それから、ちょっと嫌だなと思ったのは、運転席のメーター・パネルやセンター・コンソールのカー・ナビのライトが夜になると露骨にガラスに映る事だ。助手席側のドア・ミラーを見ようとするとカー・ナビの光に邪魔され、運転席側のドア・ミラーを見ようとするとメーター・パネルの光が映り込んで邪魔される。
<エンジン>
最初、『あれ、この車、長らくオイル交換していないのかな?』と思った。
音がうるさく、振動が大きい為に、ちっともスムーズでない。サニーやキューブ、マーチと比べても振動が大きい気がする。しかし、軽自動車はそもそも遮音の点で不利なので、こんなものだと思う。
ただ、ウ~ン、ウ~ンという唸るような音が聞こえるのは、不具合なのか正常なのか・・・。どこかの回転部分と思われる。明らかな異常音ではないので気にする必要もないのかもしれないが・・・。
さて、加速について。
一言で言えば、ひとたびブレーキを踏んだら最後、もう二度と加速しないのではと思われる感じ。スカイラインに乗った後にキューブに乗ると全く加速しないように感じられるが、この車に乗った後にキューブに乗るとものすごく加速が良く感じられる。しかし、軽自動車はすべてこんなものだと思うから、こればっかりは致し方ない。私が今まで乗った中で、マーチやヴィッツほどにも加速する軽自動車は一度も見た事がない。
それに、このような加速のなさはすぐに慣れてしまう。それどころか、なにも焦る事はないじゃないかと思えてきて、却ってゆったりした気分で運転できて良い。これは一種の断捨離かもしれない。思い切ってモノを捨てて執着から解き放たれると、人間、すがすがしく楽になると言う。私はこの車で加速というものを捨て去った事で、むしろ加速の優劣という尺度から解き放たれ、今や200馬力も300馬力も超越したような気分になった・・・。
メーター表示では、走っていると燃費が20km/ℓとか30km/ℓとか、さらには40km/ℓとか表示されるが、それにしては見る見る内にガソリンが減っていくのはどういう事だろう・・・。
<駆動系>
個人的にCVTはATよりも好きなのだが、この車に関してはCVTである良さが余り感じられない。ATだったとしても大して変わらないのではと感じてしまう。
特筆すべきは、右折や左折時の制御だ。
交差点が近付き、ブレーキを踏んで減速すると回転数は下がりATと同じようにギアが上がったような状態になる。ハンドルを切り始めて車も曲がり始め、さて、クリッピング・ポイントを過ぎた辺りから加速しようとアクセルを踏む。すると、突然ギアが下がったような状態になり、回転数は急激に上がるが、突然ブレーキが掛かった状態になり、前につんのめってしまうのだ。マニュアル・シフトでは、ギアを落とした際に回転数が足りないとやはりこういう状態になる事はある。しかし、こちらはCVTでギアがないはずなのに、同じような事が起こるのだ。余りに不自然な動きなので、これは間違いなく欠陥だと思う。もしかしたら、この個体固有の問題という可能性もある。アクセルを踏んでいるのに急激なブレーキが掛かるので、これによって後ろの車に追突されそうになる事もあるのではないかと心配になる。スポーツ・モードだとこのような現象は起きなかった。
<ブレーキ>
初めての車に乗る時、気を遣うポイントの一つがブレーキだと思う。それは車によってブレーキの効きやフィーリングが全然違うからだ。この車も、最初に乗った時は、ブレーキ・ペダルがどこまでも奥に行ってしまうので、ブレーキが効かないのではないかと思って一瞬ひやっとした。しかし、勿論、全く問題はない。ブレーキ・ペダルのストロークがものすごく大きくて、その長いストローク全体を使って効き具合を調節できる感じだ。その為、慣れない車を乗る時に必ず起こるカクンという動きが一度もなかった。
スポーツ走行をする時にこれだけ大きなストロークがあったのでは幾ら冷や汗を流しても足りないが、街中での操作には気を遣う必要がなくて良いと思う。急な操作をしても、車が勝手にマイルドな動きに変換してくれる。
<足回り・ハンドリング>
足回りは相当に柔らかい。乗車位置が高くふわふわしている上、横幅が非常に狭い車の為、大きくロールさせると横転しそうで怖い。こういう車に慣れている人には何でもない事だろうけれど、今まで足回りの硬い車しか乗ってこなかった私としては慣れるのに相当の時間が掛かりそうだ。
これだけ車体が軽くてホイールベースの短い車なのだからハンドルを切ればすぐにヨーが立ち上がって鋭敏なコーナリングが楽しめると期待したが、そうではなかった。とにかく足回りが柔らか過ぎて、すべての反応が時間差でやってくる。まるでいっこく堂の声と唇の動きがずれる時間差腹話術のようだ。とはいえ、そもそもが軽い車なので、動きそのものは軽快でストレスがない。
操作がうまく決まるとバシッと姿勢が決まるが、相当に柔らかい足回りの為、操作が悪いとなかなか思うように姿勢を決められない気難しさもある。最近の車はただハンドルを切るだけでレールの上を走るように簡単に姿勢が決まると思っていたが、この車はそうでもないようだ。
いずれにしても、とにもかくにも足回りが柔らか過ぎて、コーナリングを楽しむような設定ではない。勿論、そもそもがそういう目的の車ではないのだけれど・・・。ただ、乗っていて強く感じるのは、こんなにフニャフニャの足回りだと、急ブレーキ、急ハンドルで簡単に制御不能に陥るのではという不安感だ。例えば、高速道路で相当のスピードを出していて、(運転の下手な人が)車線変更をしようと急ハンドルを切っただけで壁や中央分離帯に向かって飛んでいってしまう事は簡単に起こり得ると思う。少なくとも私は怖くて一定以上のスピードを出す事ができない。でも、実際には高速道路を走っているとこのような軽自動車でも相当のスピードで走っている人をたくさん見かけるし、街中でもビュンビュン飛ばしている。長らく乗っていて慣れてくるとそんなものなのだろうか・・・・。
恐らく車体が軽い分乗り心地を良くするにはそれなりに足回りを柔らかくする必要があるのだろうが、乗り心地と操縦安定性を両立するのはなかなか難しい事なのだろうと思う。
ブログ一覧 |
試乗 | クルマ
Posted at
2016/10/16 11:03:20
今、あなたにおすすめ