この車『コスパが良い』が連呼されすぎているため、本来は褒め言葉なはずなのに「価格の割にはでしょ?」なドライなイメージすらついている気がしますが、そんな浅い車ではありません。
よく言われる内装のハードプラの多さについてはその通りですが、前車のようにソフトダッシュボードながら経年でベタついてきたり、ドアトリムソフトパッドの接着が剥がれてプカプカ浮いてくるくらいなら、スイフトのように最初から割り切っている方が好感が持てます。
その上で走行性能の面では何の不満もありません。むしろ大満足です。Bセグコンパクトサイズであったり、その中でもホイールベースも短め(←何と妻のラパンよりも) のため、そういったカタログスペックだけでは長距離はきついか?な印象もありますが、全くそんなこともありませんでした。疲れないシート、余裕あるエンジン、余裕あるシャーシ、しっかり動いて粘る足回り、ブレない重厚なハンドリングで高速~名阪のような酷道も大変気持ちよく楽しめます。
個人的にホームオーディオのスピーカーが大好きなのですが、スピーカーでもよくあるんです。
(※価格の高い順に①>②≒③>④が多いです)
①外装素材/仕上げも心臓部(ユニットやネットワーク)も満足いくモデル
②外装素材は塩ビシートで仕上げも雑ながら、代わりにコストを全て中身に注いで出てくる音は侮れないモデル
③外装〃/〃は最高ながら中身がスカスカで音を聴いてガッカリするモデル
④外装も中身もすべてが手抜きでもはや存在価値の無いモデル
市販スピーカーを大雑把に分けるとこの4パターンに分かれるのですが、これになぞらえるとZC33Sスイスポはまさに②に該当します。とはいうものの内装素材等がそう感じるだけで、組付けはちゃんと丁寧に造られており雑さは感じませんでした。
最後に
~ZC33Sのスイスポの◎と×~
【◎な点】
・スズキの、特にここ20年近くの欧州を見据えた車造りの地道な努力の結晶と実感できる車
・ベンチマークの欧州フォード車フィエスタ(ST)の良い所をうまくトレースできている(乗るとすぐ分かる)
・シートがしっかりしている
・どの速度域でもエンジンの余裕が感じられる
・エンジンブレーキも良く効き、パドル→実際の変速反応もまるでDCTのように良い
・軽いのに重厚感のある乗り心地
・もちろん柔らかいか?硬めか?と言われれば硬めだが、足が良く動いて最後の角は丸められており、かつてのSX4 2.0S等とは別物。それどころか硬さはかつて祖父が乗っていたビル足DBA-BLE レガシィB4 並みだがそれより上質に感じるしなやかさがある
・(よくカックンブレーキと言われているが3型だからなのか?)全然カックンでなくジワッとコントローラブルなブレーキ
・重厚でシャープなハンドリング(私が乗ったことのある欧州フォード車の中でも一番好きな初代フォーカスに一番近い)
・乗り心地は重厚だが車体が軽いので余分な動きがないため、高速から名阪のようなアップダウンが激しく危険なコーナーの多い酷道も余裕でスイスイ
・レバー類の操作感がしっとりしている
・歴代のスイフト、スイスポも真面目に地道に進化してきたが、運転の楽しさはそのままに、ZC33Sはしっとり感すらあり一気に走りの上質さが増している
・初代SX4時代のスズキ普通車は、カーテンエアバッグ&ESP搭載はSX4 2.0Lモデル及びキザシ、スプラッシュ(ESPはMC後)くらいしかなかったが、それを思うと(他の車種含め当時より)安全面の抜かりなさを感じる
・地味ながら前席のみならず後部左右席のシートベルトもフォースリミッター&プリテンショナー付
【△/×な点】
・ルームランプがフロント1灯のみで暗い
・シート高をあともう少し下げられると良かった
・『コスパが良い』という言葉が良くも悪くも独り歩きしすぎている