マイコン演算のための計算負荷の小さいローパスフィルタ

　なにかのECU（Electronic Control Unit）をつくるとき、マイコンのソフトウェアでセンサ信号用のローパスフィルタを作りたくなることがありますよね？
でも、マイコンでは本来の目的のために計算能力を最大限に使いたいので、フィルタのための計算負荷は軽ければ軽いほどうれしいはずです。そこで計算負荷が最も小さくなるローパスフィルタの演算について考えてみます。

まず、元になるバタワース型のアナログフィルタの伝達関数を①に示します。

ωcは遮断角周波数で、RCローパスフィルタでは1/RＣになります。R*Cは時定数です。
RCローパスフィルタはECU基板内に入れることがあります。安くて、実装面積も小さいですからね。
フィルタ定数を決めるときには、ノイズはきっちり減衰させたいけれど、反応スピードが遅くなりすぎるのは困るし、かといって、2次フィルタにすると、オペアンプが必要になって部品コストは上がるし、実装面積も増えてしまうのでイヤだ、などと考えるわけです。自分の場合は基板上の軽い１次のアナログフィルタと、ソフトウェアで作る１次のディジタルフィルタを組み合わせて使っています。

さて、連続時間の伝達関数式①を離散時間に変換するときには、次の②式示す、双１次変換を使います。


②式を①式に代入して③式を得ます。


さらに④式の置き換えをして、整理して⑤式を得ます。



⑤式より、入力Xと出力Yの関係は⑥式の通り導くことができます。
また⑥式は下のブロック図で表現できます。



このフィルタ演算は加算2回と乗算2回、使用する係数は2種類です。この乗算と加算は同時に実行可能なので、積和演算器を持つマイコンの場合、命令実行回数は2回となります。