このクルマを初めて見たのは、モーターファン別冊のスペシャルカーズ・インターナショナルの記事だった。シュトロゼックというチューナーを知ったのはゲンロクで、そのボディラインに一目ぼれ。そしてこのメガスピードスターの記事を見てからはずっと恋焦れていたのだ。
記事では、インプレッションと93年ジュネーブ・オートサロンに出品されていた様子が出ていた。
でもこんなフルコンバージョンのクルマ、どうやったって手に入るわきゃないと10年前は思っていた。あまりにも非現実的だった。
それから約10年の歳月が流れ、インターネットという便利なものが出来た。そこにこのクルマを発見したときは震えた。何とあのジュネーブショーでシュトロゼックのブースに飾っていた車が日本にあるなんて!!
僕で2オーナー目。最初のオーナーはスイスの法人で、覚えがある名前だった。シュトロゼックと組んで、よくコンプリートカーを排出していたスイスのディーラーだ。購入時の走行距離は6500キロ。
エアコンなどもちろん無く、音も激しい。朝、ガレージを出るときは周りに気を使う。(^^;)ボディのほとんどが、カーボン&FRP。総重量は1100キロ台。やっとめぐり合えたこの車は、多分一生手放すことは無い。トラブルも人が言うほど少なく、去年かかった金額は、約6万円のみ。(税金除く)
多分日本で1台。世界で2台。現在確認できているのが、他にシルバーのメガ・スピードスターがあるようだ。限定車ではなく、シュトロゼックに頼めば、作ってくれるので、世界に何台というフレーズは正しくないかもしれない。
シュトロゼックは、自社生産のコンプリートカーに対して、全てシャシーナンバーを控えているようだ。過去にパーツを頼んだときに、シャシーナンバーを聞かれてから、生産の許可が降りた前例がある。
■92年式 シュトロゼック・メガ・スピードスター RS (964 カレラRS ベース)
型式;964A 全長 417cm 全高 122㎝ 全幅 182㎝ 車両重量 1100㎏
ホイールベース 227cm トランスミッション;5速マニュアル
エンジン形式;62 空冷水平対向6気筒SOHC 排気量;3600cc
ボディカラー;ルビーストーンレッド 定員2名
■ 三栄書房 モーターファン別冊 スペシャルカーズ・インターナショナル 1993.VOL3 メガ・スピードスターの記事より抜粋
シュトロゼック・スピードスターは911に似ているようで、実際はかなり異なっている。実際、ボンネット、ドア、エンジンカバーしかノーマル911にフィットしない。それ以外は全て個性的なカーブを描いている。フロントとサイドウインドウはノーマルのスピードスターから流用しているが、ルーフと小さなヴァーティカル・リアウインドウはまったく新しくされている。興味深いディティールは、ストックハンドルのインナートリガーを被っているGRPのドアハンドルだ。ヘッドランプセットはボッシュのポリエリプソイドユニットだが、フロントバンパーのハイビームユニットはホンダCRX、サイドインジケーターはマツダMX-3からとっている。
クルマはRSのシャシー、インナーウイング、そしてエンジンをベースにドアとボンネットはケプラー、リアウイングはGRPとカーボンケプラーのコンピネーション、ハードトップはGRPになっている。膨らんだホイールアーチを埋めているのは、18インチホイールのシュトロゼック・アエラ。9Jと10Jサイズ。それは245/40ZR18と285/35ZR18タイヤで覆われている。260bhpのエンジンに加えられた10bhpは、90ミリ径テールパイプをもったステンレススティール・スポーツエグゾーストによって得られる。サスペンションの改良は不要。ノーマルから280キロもウエイトを落としているのだから、おのずとサスペンションは硬くなる。
RSのシャシーがよりワイドなタイヤとストラットブレース、ロールケイジ、低くなった車体で改善されている。車内は内装が全てはがされ、地がむき出し。唯一手が加えられているといえるのは要所要所に貼り付けられたカーボンパネルだろう。3本スポークのハンドル中央とタコメーターには、シュトロゼックのエンブレムが付く。
コンセプトとしては、シュトロゼック911メガ・スピードスターは古いライトウエイトコンセプトを最大限取り入れて、911がどのようなものに出来るかということを示したのだ。