2010年09月08日
いまでこそ、耳にイヤホン入れてコードたらして歩いたり、電車に乗っている姿は当たり前ですが、30年ほど前はそうではありませんでした。
古いハナシで長~くなりますが、良ければお付き合いください。
さて、正確には31年前、若かりし自分は大学受験浪人中で、東京に出て予備校の寮に住み、近くの予備校に通う毎日でした。あんましマジメに行ってなかったけど。
予備校の寮で来る日も来る日も問題集とにらめっこしていると、息抜きも欲しくなります。
中学のころより自称オーディオマニアで、音楽好きだった自分は、音楽を聴くことに息抜きを求めました。しかし、まわりも必死になって勉強しているところに、ラジカセで音楽をかけるわけにもいかず、「そうだ、ヘッドホンだ!」と思いつきました。
「ラジカセ」ももはや死語ですかね。自分ら、中学のころより「オールナイトニッポン族」でしたから、ラジオカセットプレイヤー、略してラジカセは生活必需品でした。
ラジオから音楽を録音して聴くのが当たり前だった時代です。
話をもどして、ヘッドホンですが(当時はイヤホンと言うものは、テレビにオマケでついてくる片耳用のやすっちいものしかありません)、もともとアキバオタクでしたから、すぐさまアキバへ行きました。今とは違う意味でマニアックな街でしたよ。
いろいろなヘッドホンがあって悩みました。ゼンハイザーのHD424Xが、試聴の結果一番良かったのですが浪人生の身には値段が高すぎ、廉価版超軽量モデルのHD400にしました。
HD400の写真はありませんが、黒いプラスチックのヘッドバンドに、黄色いスポンジパッドが特徴のヘッドホンで、上級機のHD414と似たデザインでした。HD414は2001年に復刻版がでて、なつかしがって買った人が多かったようですね。
廉価版といっても、HD400はアキバ価格で8千円くらいしたと思います。30年前の浪人生にとっては、お高い買い物でした。ラーメンが200円の時代です。
ゼンハイザーとはそれからの長い付き合いになりました。
さて、コレを寮にある自分のラジカセで聴くのは、なんとなくレベルが違うような気がして、ふと目にとまったのがカーステレオコンポ。コンポというのは、カセットプレイヤー単体、アンプ単体、チューナー単体を組み合わせるもので、いま主流のオールインワンとは逆です。当時はこれが流行りだした頃でした。
安めのカセットプレイヤーと一番小さいアンプ、12ボルトの安定化電源!を買い、スピーカ出力からヘッドホンは音が大きすぎるので、アッテネータ付きヘッドホンジャックソケットを自作するための部品を買いこみ、寮に帰りました。
寮の同期生たちが、「何を買いこんできたんだ」と興味しんしんで見守る中、組み立て、配線がおわり、ヘッドホンジャックを差し込んで始めての音出し。
おおー、とおもわず喜びの声をだしてしまい、「オレにも聴かせろ」と皆かわるがわるヘッドホンをかぶります。皆同じように驚きの声。
それから、同期生の間でヘッドホンブームとなり、翌週にはみなでアキバへ行きました。
そうこうするうちに、夏が来て、衝撃的なニュース、ソニーウォークマンの発売です。
もちろん、最初の最初、初代ウォークマンです。7月発売開始だったと思いますが、夏休み後半の8月末には、ウォークマンを腰につけ、ヘッドホンをつけて電車に乗っている人が多くなってきました。
初代ウォークマンは、それまでの常識、(ラジカセの常識)であるスピーカーと録音機能をとっぱらい、小型化することで携帯性を高めました。
小型化にもうひとつ貢献したのは、ステレオミニジャックです。
それまで、ステレオのジャックは、標準サイズの大きいものしかなく(いま高級ヘッドホンを買うとアダプタでついてくるデカイやつがもともと標準なのです)ミニジャックはモノラルのものしかなかったのです。
SONYは、独自にステレオミニジャックを開発し、コレはその後のウォークマンの世界的ヒットによって世界標準になりました。
初代で面白いのは、このステレオミニジャックソケットが2個ついていたことです。
最初期ロット3000個は、そこに「Guys & Dolls」と書いてあったことからもわかるように、彼と彼女が、1台のウォークマンで仲良く同じ曲を聴いたらいいんじゃない?というノリでした。さらに面白いのは、初代はもともと録音機能のあった機種の転用だったので、マイクがついていて、「ホットライン」というボタンを押すと、音楽がカットされ、マイクで拾った音が両方のヘッドホンで聞こえるようになっていました。
つまり、彼と彼女が、会話したくなったとき、いちいちヘッドホンをはずさずに「ホットライン」ボタンを押すことによって話せるというなんともありがたい機能がついていたのです。実際に彼女とこの機能を使った人がいたかどうかはわかりませんが。
初代についていたヘッドホンは、ヘッドバンドがプラスチック、長さ調整のところが金属性で、青いスポンジパッドのヘッドホンでした。
当時自分の持っていたゼンハイザーHD400が重さ80グラムで世界最軽量をうたっていたのですが、「それより軽くしろ!」の至上命令によって超小型のユニットが新開発されたとの事。
このヘッドホンは構造上仕方ないのですがけっこう音洩れがして、新聞などで問題になっていたと思います。ゼンハイザーも音漏れしましたが、売れた数が違います。
ウォークマンの値段はたしか3万3千円、アキバでも値引無し!浪人生にはとても買えるモンではありません。
しかし、その値段にもかかわらず、一時期は品切れで手に入れるのも大変だったような大ブームとなりました。
それまで外で気軽に音楽を楽しむ、という文化はありませんでした。
ラジカセをかついで歩いている人はいましたが、重くてデカくてあまり「気軽」じゃないですよね。
ウォークマンの大ブームによって、音楽の楽しみ方がガラッと変わってしまいました。
Posted at 2010/09/08 22:06:21 | |
トラックバック(3) |
趣味 | 趣味