念願のピアッツァ納車。
引き渡しを終え、初めての自宅までドライブで帰るわけですが、
最初の印象は「なんて運転しずらいんだ!!」というものでした。
操作系の特異さはコックピットドリルが必要なレベル。。。
(ウインカーが通常のレバーじゃなく小さなフラップスイッチだったり)
(エアコンから何から何までコラム周辺に集中していたり)
給油口・トランクのレバーはなんとセンターコンソール。
優雅なスタイルとは裏腹にかなりスパルタンな乗り味を持っており、
カローラの時の様に当たり前のように当たり前に走らせることが難しかった
のです。
簡単に言えば
「全てがずっしりと重い」感じで統一されていて、
カローラの至れり尽くせりなフレンドリーさが微塵もない感じ。
パワステ(なんと3段階に重さを変えられる)は付いてるのかと思うほどの
ずっしりとしたステアリング。
重くて繋がりの浅いクラッチ、カッチリした感触の縦置きダイレクトの5MT。
4AGの電光石火の吹けあがりに比べグワワワーンとディーゼルエンジン並みに
重い吹けあがりの4ZC1・SOHCターボエンジンは
その重い吹けあがり故に、シフトタイミングが難しく、回転が落ちないように
素早く繋がないとギクシャクしがち。エンストも良くしました。
それでもターボならではの乱暴なトルク感は低速から感じることができて
タダモノではない感じ、じゃじゃ馬感は半端ではなかったです。
足回りがどうこうなんて感じる余裕もなく、やっとのことで家に着いた時
には疲労困憊。
「これ、乗りこなすことが出来るんだろうか・・・・」
手に入れた喜びよりも、エライもの買っちゃたなぁという不安が大きく
なっていたのでした。
しかし、これがピアッツァとの付き合いが長くなる秘訣だったのかもしれません。
うまくスムーズに走らせることが難しい=乗りこなし甲斐があるわけで、
誰が乗ってもスムーズに走らせられるわけではないところは、
SDXのココロに火を付けたわけです。
うまく回転をドロップさせないように、ギア鳴りをしないように、
回転を合わせ、素早く優しくシフト。ターボの効き始めを計算したアクセルワーク。
スムーズに速く走らせた時の快感は格別でした。
もちろん、良くできたクルマだ!と言い難い点もたくさんありました。
雨が降ればワンアームのワイパーは正直あまり視界が良くなく、
ガラコなどの撥水剤は必須でしたし、停車中に動作すると容赦なく
歩行者や高速ゲートのオジサンに水を飛ばして攻撃するこまったヤツでした。
また油断すると簡単にスピンするテールハッピーさには手を焼きました。
タイヤは良いモノを履かないと痛い目にあう、ということを知りました。
そして、ハンドリングバイロータスというロータス社の名前を誇らしげに
主張するモデルの醍醐味が判ったのは、かなり後の話になります。
ピアッツァのオーナーズクラブに入会し、他の方のクルマに乗ることによって
いかに最終型のピアッツァが熟成されているかが判ったのです。
SDXのロータスにのったある方は「まるでトヨタのクルマみたいだ」と
仰っていました。その意味は、その方の初期型DOHCモデルに乗ると
ようやく分かったのです。
SDXのピアッツァ以上に「見た目」と「走り」が乖離している!!
優雅なスタイリングに対し、武骨で勇ましい、荒っぽいエンジンと
すぐにトラクションが抜けるリアタイヤ。それでいて柔らかいサス。。
これは大変なクルマだとすぐに思いました。
つまり、60年代~70年代ののクラシックカーの野性味あふれる乗り味その
もののシャシーの上に未来的なボディが乗っているだけだったのです。

初期型DOHCのXEは最上級モデルでデジパネも備わっていましたが、
「グワワアアアアアン」という勇ましいエンジン音と重い吹け、大きな振動はまるで
そのキャラクターに似合っていませんでしたし、その走りも良路はともかく、
すこでも荒れた路面ではユルイボディと相まってまっすぐさえ走りません。
そして、その後にSDXのHBL(ハンドリングバイロータス)に乗り換えると
まぁ、同じクルマとは思えないくらいにモダナイズされていることがわかります。
ボディの固さ、振動の少なさ、スムーズさ。全てにおいて別次元だったのです。
もちろん、乗った初期型のコンディションもあったでしょうが、数台乗った
初期型はおおむねそんな感じでした。

その後も、イルムシャーに乗ってみたり、初期型ターボを運転させてもらったり
といろいろなピアッツァを経験して、自分のピアッツァがいかに地道に改良を受け、いかに乗りやすいかを知ったわけです。
ですが、どこをどうやったからロータスの味なのかはついぞ判らずじまいでしたが(笑)。
それからというもの、その美しいスタイル、独特な世界観、
乗りこなすのが難しいが、うまく走ればそこそこ速い、という特別感も
あいまって心の底からこのクルマにどっぷりハマっていったのです。
もちろん、その当時平成6年前後のクルマたちと比較しても、
古臭いエンジン、シャシー、ボディーであったことは間違いなく、
リアサスはターボエンジンにも関わらず、5リンクリジットでしたし、
すぐにホイールスピンをするのでトランクに漬物石を積んだりもしました。
ボディはいくら強化されたとはいえ悪路ではいつもワナワナ・プルプルしており、
カッチリしていたカローラやレーザーに比べてもその弱さは明白でした。
今のトラヴィック何かとくらべると「段ボール?」なんていっちゃうと
かわいそうですが、そんなレベルでした。
当時のスカイライン(R32)を運転した時は、
あまりのレベルの違いに「乗らなきゃよかった・・・」と大後悔もしましたが、
「クルマは走りだけに非ず」ということを思い知ったのもピアッツァが最初でした。
とにかく、レストランに停めて、入口に入るまで、必ずピアッツァを振り返る、
そんなキモチ、判りませんか??
「んー。やっぱりカッコいい(ニヤニヤ)」
それが出来るクルマってSDXにとってはこのピアッツァと500くらいだった
様に思います。
在りし日のピアッツァとSDX。まだ痩せていたなぁ。
この薄眼を開けたようなふてぶてしい顔と優雅にも豪快にも走れる、
乗り手次第のスペシャリティ・カー。
思い出は美しいと言いますが、未だに魅力は色褪せていないと思います。