
この間香港に行ったときに、いろいろな店を見ていて思いました。
よくもまあ、世の中にはいろんなブランドがあって、それぞれ頑張って消費者に自分の商品を売りつけようとしてるもんだなって。
アジアの人たちも結構ブランド好きのようで、ショッピングモールを歩いている女性の多くが、垢抜けない服装の人も含めてルイ・ヴィトンのバッグ(あるいはそのイミテーション)を持っていて、ふた昔ほど前のバブル全盛期の日本をちょっと思い出しました。
考えてみると、いわゆる高級ブランドの大半はヨーロッパ系です。一部ハリー・ウィンストンのようなアメリカ系もありますが、例外的。日本発の高級ブランドといえば、何でしょうか?日本では和服、工芸品などの分野で有名な職人や産地による贅沢品が栄えましたが、ブランドというのとはちょっと違うかな?でも「輪島塗」なんてのはブランドみたいな感じだったのかも。レクサスは?これもちょっと違うかも。
ブランドというものを通じて、メーカーは消費者に「安心」や「憧れ」、「持つ喜び」、「自慢する楽しみ」などを提供しています。消費者はそれに対して、ブランドのないものよりも高いお金を払うことで応えています。全く同じ材料と工程、職人の熟練度でルイ・ヴィトンと同様のバッグを作っても、LVのロゴが入ってなければ当たり前ですが思いっきり安い値段でしか売れません。それどころか贋物呼ばわりされますね。
つまり、ブランドというのは結局のところ「購買者が感じる精神的な価値」に他なりません。別の言い方をすれば、「購買者に幻想を抱かせることで物理的実体以上に高められた価値」ということです。身も蓋もありませんが、そういうことです。
なぜ日本発の高級ブランドがないのか、と考えると僕にはなんとなく「日本人が真面目、というか、余裕がなくなるほど真面目すぎるから」というのが理由のように思えます。
日本のメーカーが作る製品の多くは、品質的にはとても優れてます。細やかな気配りにあふれ、個別の製品ごとのばらつきもありません。
ただ、そういう製品を一生懸命、一途に真面目に「いいものにしよう」と頑張ってしまう結果、消費者から見て「お!」となる面白さや驚きが逆になくなってしまい、「客観的に冷静に評価すると高い点数が付く」でも「ワクワクしたりあこがれたりする対象になりにくい」ものが多くなってしまうのでは?アップルのiPodなんて、技術的には特に最先端でもなかったのに、ユーザーとしてはとてもワクワクさせられたし、iPhoneになってますますはまってます。日本のケータイメーカーがiPhone作ろうとしても、ついついボタンをいっぱい付けちゃって、結局みょーにカッコ悪いものになっちゃうんでしょうね。
さらに、消費者に売り込むときにも真面目に「この製品はこんなに良くできてます。しかもお値段もお買い得!競合のあの会社の製品よりもお安いですよ」ってな感じにアプローチしちゃう。トヨタが、ホンダのインサイトに対抗してプリウスを安くして売ったのなんかがいい例ですね。
僕の個人的意見ですが、こういうことをやってるから日本のメーカーはダメになるんだと思います。
いいもの作ってるんだったら、必死になってどうやって高く売りつけるかを「実態的価値」だけじゃなくて「精神的価値」あるいは「妄想的価値」まで含めて考えに考え抜いて、こだわり抜いて売らないとダメです。だって、それだけ価値あるもの作ってるんでしょ。(実際には、もっとワクワクさせるものを作らないと、ってのもあります。平均的優等生の製品ではなく)
それができないから、日本の企業はほとんどの場合同業種の欧米企業に比べて利益率が低いように思えます。唯一頑張ってきた自動車産業だって、これからは大変です。韓国メーカーも「そこそこ良いもの」を作るようになってきたし、電気自動車の時代になったら中国、インドの企業も伸びてくるでしょう。単純に「いいもの作れば買ってもらえる」ってワケにはいきません。
時計の世界でも、例えばランゲ&ゾーネみたいに無理やり創業者の子孫を引っ張り出してきて、実際上は昔のブランドで作っていたものとは全く繋がりがなくても、そのブランドストーリーを強烈に宣伝するのと同時に時計マニアに受けるポイントをついてそれなりにコストをかけた良い製品作りを行い、実態的価値を大幅に上回る値付けを行いながらも、短期間に大きく躍進した、というようなことはセイコーには全くできてません。良い時計を作ってると思いますが、セイコーが500万円の時計を出しても今のブランドのままでは誰も買いたくなりませんよね。でもランゲだったら喜んで買う人がいっぱい居るわけです。
なんだかしょうもないことを脈絡なく書き連ねてしまいましたが、やっぱり日本企業ももっと「儲けるぞ!いいもの作ってるんだから、なんとしても儲けるぞ!!」という意志をむき出しにして、「良いものなんだから、より高く」買ってもらうことに正面から取り組むべきでしょう。
「デフレだから、どんどん安くするしかない、ちょっと品質が落ちても安いんだから消費者も我慢するよ」、な~んて考えてモノづくりをやっていたら、自殺行為だと思いますよ。中国企業の思うつぼにはまります。
人間、自分にとってドーデモいいものについては節約したいですが、自分が好きなものについては気に入った高いものを買うのは嬉しいんですよ。そういうときには理屈じゃありません。「言い訳」はいっぱいくっつけますがね。ですから、日本メーカーの皆さん、僕たちが喜んで高い金を払いたくなる製品を、僕たちがあこがれるようなブランドのもとに出せるように、必死に取り組んでいってみてはどうでしょうかね?だめ?
いやはや、いつものごとく、無責任な天然野郎のたわごと、しっつれいしやした~。
Posted at 2010/01/31 21:13:17 | |
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