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2009年11月20日 イイね!

クルマはこれからどうなるの?

クルマはこれからどうなるの?今日は、時計産業の昔話(?)の続き。

1968年のニューシャテル天文台コンクールが中止となり、残念ながら一等賞を取り逃したセイコーですが、同年のジュネーブ天文台コンクールではついに腕時計総合1位に輝きます。機械式での上位入賞はセイコー製が独占したとのこと。

こうやって、機械式時計の後進国であった日本がスイスの名だたるトップブランドを慌てさせるような躍進を遂げたわけですが、セイコーは間もなく、まったく別の方角から“トップ”の栄冠をつかむことになります。

“アストロン”。セイコーが世界で初めて発売したクオーツ式腕時計です。ジュネーブ天文台で1位を取った翌年、1969年暮れのことでした。当時の価格は45万円。大卒の初任給が4万円もなかった時代に、当時の軽乗用車の価格と同じぐらいだったそうです。最高級の機械式ムーブの精度を遥かに凌駕するクオーツ時計は世の中に衝撃を与えました。

それまでの腕時計の精度競争は、「いかにテンプをハイビート化するか」という方向がメインで、天文台に出品されるモデルには15振動や20振動というものもあったそうです。といっても市販品では、極端なハイビート化は部品の摩耗など耐久性上の問題があるため、10振動がほぼ上限となっていました。当時の有名な10振動ムーブとして、ゼニスとモバードによる共同開発の自動巻きクロノグラフ“エル・プリメロ”があります。(エル・プリメロは8振動化などの変更を施されロレックス・デイトナに採用されていたことでも有名です。)エル・プリメロが発売されたのは1969年。つまり、アストロンの発売と同じ年です。この10振動のムーブは機械式時計の精度競争が生んだ「あだ花」のような存在かもしれません。それ以外にも、1960年代にはアメリカのブローバ社による“アキュトロン”が、音叉の振動を使って機械式時計で言えば720振動というハイビート化を実現し、一世を風靡しました。

当初は極めて高価だったクオーツ腕時計も、セイコーが特許を公開した結果世界中の会社がクオーツムーブメントの製造に乗り出し、70年代には急速な低価格化が進行しました。これが世にいう“クオーツ・ショック”です。機械式時計はクオーツに比べて精度で劣り、コストも高く、数日放っておけば止まってしまう、とまるでいいところがなく、スイスの名門も次々と生産終了、廃業、事業売却などに追い込まれていきます。ゼニス社も経営危機に陥り、70年代にはアメリカのラジオメーカーに買収される、という憂き目にあい、機械式時計の金型や工具も廃棄寸前まで行きました。音叉時計のブローバ社もクオーツの高精度には太刀打ちできず、アキュトロンの製造は76年に終了しました。

クオーツ・ショックの波は、セイコーの機械式時計部門にも容赦なく襲いかかり、1972年には早くも機械式時計の開発は終了となってしまいます。当時のセイコーは「時計の未来はクオーツにあり」と信じていたのでしょう。1980年代後半になって機械式時計が復権の兆しを見せ始めるまで、世の中はクオーツ化、デジタル化が進行していった、という訳ですね。この間、日本の時計メーカーが世界の時計市場を席巻し、1979年には世界一の生産数量となりました。

ところが、1990年代に入り機械式腕時計が息を吹き返すと、2000年代にかけて一大機械式時計ブームが巻き起こるのは皆さんご存じの通り。世界の腕時計市場において、数量ベースではスイス製をはるかに上回る日本の時計ですが、金額ベースではスイス勢の圧勝で、「頑張っていいもの作ってるのになかなか儲からない」、というのが日本の時計メーカーの実態ではないでしょうか。しかも、普及品のカテゴリーでは安価なアジア製との競争が激化し、さらにケータイの時計があるから腕時計は要らない、という若者も増え、日本メーカーが得意としてきた普及~中価格帯が最も不振のようです。

セイコーのかつての技術者が、機械式時計開発を打ち切ったことを振り返り、「機械時計というのはやはり芸術品であり、これほど素晴らしいものはないんです。たとえばトゥールビヨンとか、パーペチュアル・カレンダーとかリピーターという時計が本当にできてからやめるべきだったのかもしれません。そう考えると、やはり時計の一番素晴らしいところが、日本ではまだ実現できてないんじゃないでしょうか。」と述懐していますが、確かにその通りかもしれません。この間、苦しくても頑張り続けてきたスイスの名門ブランドには一本筋の通ったものを感じます。(彼らにはそれしかなかった、とも言えるかもしれませんし、スウォッチやETAなどで上手く乗り切った、という見方もできますが)


長々と腕時計の歴史めいたことを書きましたが、何となく時計の歴史と、自動車を巡る最近の動きに共通性があるような気もしてます。
*機械式の精度競争 : ガソリンエンジンの性能競争(ガソリンエンジンの高性能化は行きつくところまで行ってる感じで、かつての時計の精度競争と似ている)
*ハイビート化 : エンジンの高出力化や省燃費化(ハイビート≒高回転型エンジン?)
*音叉時計の登場 : ハイブリッド車の登場(音叉時計も一時期は大人気で、非常に良く売れていたけど、所詮は過渡期の製品だった)
*クオーツの普及 : 電気自動車の普及(これまで蓄積された技術の多くが不要に。アジアの新興国が大生産拠点に)

といった感じ?

もちろん、クルマの方が複雑度が格段に高いし、サスペンションやブレーキなどの技術はこれからも必要だし、ガソリンエンジン車がすぐに生産終了となることもないと思います。ただ、電気自動車ならガソリンエンジン技術の蓄積が少ない国の企業が結構簡単に参入できそうな気もするし、中国あたりのメーカーがそこを席巻し、趣味的高級カテゴリーはイタリアとドイツのメーカーが独占、日本メーカーが真中で板挟みにあう、という構図も全くないと言えない、というような気もしてます。

日本メーカー、頑張ろうね!!
Posted at 2009/11/20 16:44:53 | コメント(4) | トラックバック(0) | クルマネタ | 日記

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