
デフレだそうです。
確かに、ユニクロの躍進に代表されるように「そこそこの品質のものがやたらと安い」という現象は、財布の紐をしっかり管理したい消費者に大受けで、「安く買わなければ賢い消費者ではない」という風潮がありますね。
また、LOHASというなんだかよく分からない言葉に代表されるように、「無駄をなくして質素を旨とし、倹約して生きることが環境との共生に繋がる」という考え方もかなりの広がりを見せているようです。
確かに、一個人の生き方してはこれはこれで見上げたものだと思います。誰にも文句を言われる筋合いはありません。
でも。でもですよ。この延長線上には、かなり長~く続く低成長あるいはマイナス成長の日本経済の姿が見えるような気がしてなりません。
というのも、経済成長というのは「怠けて楽をしたい、我慢したくない、見栄をはりたい、無駄もある程度許容する」という人間の根源的な我儘な欲求を満たすことで実現されてきたのが事実だからです。
遠くまで歩いて移動するのが大変だから馬に乗り、馬車を開発し、さらに安定して速く移動したいから鉄道をつくり、クルマを発明してきました。クルマも最初はもっと楽をしたい、というところからスタートをしたはずですが、やがては「もっとカッコいい乗り物に乗りたい」とプレミアム車メーカーやカスタムメーカーが繁盛し、「移動中に我慢したくない」ということで、サスペンションやタイヤが進化し、エアコンやオーディオが必需品となり、十分乗れるクルマも「そろそろ憧れのあのクルマに乗り替えよう」といって下取りにだすという無駄なことを行うことで、自動車業界は現代を代表する一大産業となったわけです。
住宅にしても、最初の最初は洞窟あたりからスタートし、竪穴式住居、高床式、寝殿造り、書院造などを経て現代のRC住宅まで、「もっと楽に暮らせて、我慢する必要がなくて、見栄がはれる家が欲しい」という消費者がいて、ある程度の無駄もしながらローンを組んで購入してくれたからこそ、大きな産業として進化してきました。
消費者が「がんばります、我慢もします、見栄もはりません、無駄もしません」というのを徹底したら、崩壊する業界だらけでしょう。モノやサービスを「これでいいじゃん」という、最低限の「実質的価値」で我慢し、しかも無駄を極力なくして必要最小限の消費をする社会は、環境には優しいと思いますが目の前で進行する高齢化社会を支えていく力がなくなってしまうのではないか、と心配してます。
仕事の場面においても「上昇志向を持ってガンガン頑張る。ある程度苦しくても自己の成長と仕事の成功のために受け入れる」というスタンスは近年、どんどん少数派になっていると思います。「無理をせず、自分の出来る範囲で仕事をする。がんばったところで将来が大きく変わるわけではないし、仕事は程々にしてプライベートを重視」という考え方が、まだ主流派とまではいかなくとも、かなり多くなりつつあるのではないか、という気がします。
つまり、「ガシガシ働く」そして「バンバン使う」というタイプは白い目で見られる絶滅危惧種となりつつあり、「出来る範囲で働く」なかで「使えるお金が限られるから倹約する」というタイプがどんどん増えているようです。こうなると、企業サイドから見ると市場はどんどん縮小し、しかもボリュームゾーンが低価格帯に移行するため、コストを徹底的に絞らないと事業が成り立ちません。勢い、人件費の単価や人数を絞らざるを得なくなり、国内で対応できない場合には生産拠点を低コスト国に移すことに繋がります。この結果として、国内での給与総額が減り、家計ではますます使えるお金が少なくなり、さらに倹約が進み、、、、という悪循環になりますね。よくわかりませんが、デフレってのはこういう悪循環が続くことのような気がします。
これに対して、「ガシガシ働く」そして「バンバン使う」型の経済は好循環が回るのは容易に想像がつきます。アジアを中心とした新興国の経済ではこのサイクルがある程度成り立っていると思います。高度成長期の日本も、「三種の神器」や「新三種の神器」、はたまた「いつかはクラウン」のキャッチフレーズで消費者に「がんばってあれを買えるようになりたい、来年はこれも」という夢を持たせて消費を加速したことで成長したのだと思います。(もちろん輸出の役割も大きかったですが)
「出来る範囲で働く」けど「バンバン使う」というのは、よっぽどの資産家でない限りはできない芸当ですね。ヨーロッパのかつての貴族や富裕層がこれに当たるでしょうか。いまでもラテン系を中心とした南ヨーロッパにはこういった雰囲気が残っているようで、「出来る範囲で働く」なかで、「自分が好きなもの、大切なものには金を使って人生を楽しむ」というバランスをうまくとっている人が結構いるように思います。「これ
でいいじゃん」ではなく、「これ
がいいんだよ!」って感じですね。
逆に、「ガシガシ働く」けど、「倹約して無駄をしない」というのは、クリスマスキャロルのスクルージ老人?あるいは、経済発展の段階が低すぎてガシガシ働いても倹約しないと生きていけないぐらいしか稼げない国や、某独裁者や一部の特権階級が国民を搾取しているような国でしょうか。
さてさて、堅苦しい話を脈絡もなく書き連ねてしまってドーモすみませーんって感じなんですが、ニッポンはどの方向に行くんでしょうかね?南ヨーロッパ的な感じをいまの日本型に取り入れて、人生を楽しみながらそれなりに頑張って働く、というスタイルになっていくのが、皆にとって結構幸せなことに繋がりそうな気がしてます。
ってことで、イタリア風でも中華風でもいいから、「チョイ悪オヤジ」を気取って人生エンジョイしようとするのは、薄っぺらくて浅はかな様に捉えられがちですが、実は大きな目で見てみると悪くないのかも~と思った次第でございまする。やっぱり「ゼイタクは素敵だ」ってことで、ニッポンの今後のためにも皆さんどーぞヨロシク、でござる。
Posted at 2009/11/24 17:51:54 | |
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