2010年08月25日
ドイツ先生・アメリカ先生のワケを想像してみる
先日のブログを書いてからorいて、思ったことがあります。
もちろん作っている側にしたって、「アメ車の真似」「ドイツ車のデッドコピー」と思われる・評価される。そう思われるのでは?という危惧は当然あっただろう?という事です。別に、似て非なる物を作りたくて作っているわけでもないでしょうし。
ということは。
どこでそうなったのか?どうしてこうなっちゃったのか?
これを考える方が得策であろう、と。
以前目にした話では100系のチェイサー。
本当かどうかは分かりませんが、ディーラーの本当のお偉いさんには、極秘に新モデルに関するヒアリングとかお披露目みたいなものがあるそうです。で、そんな時に。とある「オート店(現ネッツ店)」のお偉いさんが
「ウチにもビーエムみたいな車が欲しい」
と口走ったとか。
この話が本当か否かは知る由もありませんが、目出度く100系チェイサーはBMW風の丸目4灯ヘッドランプとL字テールを髣髴とさせる外観を身に纏って登場いたしました。
馬鹿馬鹿しいことに。そのことに引っ張られ、先代90系の時には見向きもされなかったチェイサーだったのに。100系チェイサーが買えない方々から「同じ名前のクルマ」と言う理由だけで、当時は売れずに困り果てていた90系の中古車の査定価格が急上昇するというね。
もう、当時の状況を知っている人間からするとあまりにも馬鹿げていて。「人間ってバカだなあ」とちょっと呆れしました。まあ、いいけど。
もう1つ。
とある方が、トヨタの幹部クラスの人に、こう尋ねたのだそうです。「あなたがもし、自由に車が選べたとしたら何を買いますか?」
その方は「その道のプロが個人的に推奨する商品ならば、それはやはりいい製品に間違いなかろう」という考えをお持ちだったようです。お仕事上、トヨタの幹部社員とも面識があったようで、機会を捉えて興味半分で聞いてみたのでしょう。
聞かれた側がどの部署のどういう経歴の人なのかは知る由もありませんが、そのトヨタ社員は無邪気にも(そう、あまりにも無邪気にも、)
「BMWがいいですねえ」
と答えたのだそうです。
仮に本田宗一郎さんに同じ事を尋ねたのなら「うちのクルマが良いに決まっている。何せ俺が心血注いで造ったんだからな」とか、「今度作っている奴はもっと良い。苦労してるからな。もっと良くなる。」位のことは言ったのでは?と思うのですがね。
確かに、私もベンツとか乗ってましたので、それらと比べて日本車は.....、とは思います。ただ、それははっきりと「うちはこういう理由だから、こうするんだ」というベンツの主張に比べ、日本車は「俺はこう思う」という根拠が弱いor声が小さいために余計にそう思わされるのかなと思うわけです。
今までの日本車の中で、自己主張の一番ハッキリした車って何?と聞かれれば、想い起こすのはやはり「初代セルシオ」と「R32 GT-R」でしょう?
「静かなことが一番」と「本番では500馬力にして、レースでトップを張る」。単純明快にして分かりやすいことこの上ない。
おそらくインプレッサにしたって「WRCで勝つ為の逆計算したスペックを如何に市販車に残せるか?」というね。あくまでも中の遣り取りは想像の域を出ませんけど。
機械に関して、という事で1つ象徴的なのかな、と思うのは豊田章夫さんの経歴です。
思えば、歴代豊田家の社長経験者は、私の思い浮かぶ限り理系の工学部系出身者ばかりです。初代豊田佐吉は言うに及ばず、豊田喜一郎、豊田英二、豊田章一郎、豊田達郎各氏(敬称略)は工学部機械科の出身者ばかり。
ただ、章夫さんは法学部なんですね。それが悪いとは言いませんし、トヨタ自動車社長への道が既定路線でもあったでしょうから、ハナからその道のほうがいい、という判断もあったでしょう。
でもね。機械を作る会社ですしね。機械に関する思いや嗅覚ということを思うとねえ。
マガジンXでは、車のデザインに関しての話が掲載されていました。「売れるのは営業の手柄だけど、売れないときはデザインの所為にされる」という話ですね。そんな中で、外野の声がうるさすぎて本来の味がスポイルされ続けている、と言った内容でした。
おそらく皆さん売らんが為、一所懸命に商品力の向上に励まれているのだとは思います。先の「うちにもビーエムみたいなのが」発言も「こういうものなら売れるのでは?」とか、「こういうものなら売り易そうだ」という意見であったと受取るならば、まあ、それはそれとして、という話になるのでしょう。
でも結局は「これが良いみたい」という、良く言えば「市場迎合」、悪く言えば「ポリシーの無い」商品開発。そうなってるんじゃあないのかなあ。
で、あまりにもこれらを考えすぎて、結局は「ドイツ先生」「アメリカ先生」から抜け出していない様に見える。
もう、「ビーエム」の様な、「ゴルフ」の様な、「ベンツ」の様なモドキの商品を造って、他人の商品コンセプトで商売をするのはいい加減にしましょうよ。
ホンダ「ビート」の開発ストーリーのエピソードで印象的なものの1つに、当時の飯塚PLが、当時の川本専務(後の社長)に
「ホンダも大きい会社になったから、ひとつくらい失敗してもいい」と言われた、というものがあります。ついでに「オジンの言うことは聞かなくてもいい」「営業の言う事も聞かなくていい」なんてのもあったとか。
いいねえ。これぞ社長でなければ言えない一言です。
ベンツ風、BMW風の商品でなければ安心できないのなら、それはそれで構わないのですが、トヨタほどのラインナップを抱えている会社なら、1つ位その中に「え?」というモデルが紛れ込んでいてもいいと思うんだろうなあ。
でもそれが「FT86」じゃあなあ。
結局、ドイツ先生・アメリカ先生の影が透けて見えるのは、所帯が大きくなりすぎたことも含めて「こういう機械であるべきなんだ」という会社全体のポリシーに関する部分で、はっきりとしたイメージが創れていない、という事が大きいのでしょうね。または売らんがために、お手軽に小手先の小細工を弄しすぎる。
だから安易に「じゃあ、3シリーズみたいな....」となる。
「私の作品」を見せてくれることをお願いしたいのですけどね。
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Posted at
2010/08/25 13:56:30
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