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イイね!
2011年01月14日

オプション10万円

とあるお客さんとお話をしていた時の事です。四方山話の中のひとつとして、

「貧弱な内装のクルマを、もっといい素材で仕立てたものとする、というオプションが成立しないもんなのかね?例えば10万円出してもいいから」

というような御質問を受けました。まあ、私如き輩にそんな事言われても...、とは思いましたがそれでも無い頭を捻って考えた揚句「多分出来ないでしょう」と申し上げました。
その方は更に「そういう要望を持っている人は私だけでもないだろうし、クルマはいっぱい作っているんだから、そういう内容のクルマを1台くらいラインの中に紛れ込ませることも出来そうな気もするんだけども」と食い下がられました。まあ、そんな事聞かれてもなあと思いつつも、あまり考えもまとまらないまま「多分ダメだと思いますよ」と、そのお話を堰き止めてしまいました。ちょっとそのお話が今でも引っ掛かっています。


私はよく知りませんが、本国のポルシェやベンツの高額車などでは内外装の色や素材をフルオーダー出来るらしい、というお話は目にしたことがあります。
以前、雑誌記事などで目にしたもので言えば自動車評論家の福野さんがポルシェで、内外装オールパールホワイトの特注車をオーダーしたことがあるという内容は目にしました。当時でオプション金額200万(確かロードスター1台分とかいう表現をしていたような気もします)。注文してから車が来るまでに1年半ほどかかったとか書いてあったかなあ。
他にも当たり前といえば当たり前のような気もしますが、ロールスロイスの話とかね。

内装外装の組み合わせが自由に選べる、という事では40のソアラがそうでしたか。コスモシルバーの外装(特装色で、40万円位高かったような気がする)のときだけは内装色・赤という指定だったような気がしましたが、それ以外の色ならば自由に組み合わせが利いたと思います。
ちなみに私がトヨペット時代に最後に納めた車が40ソアラでしたが内外装オールパールホワイト、木目パネルがバーズアイメープルというクルマでした。

当時のセルシオもある程度までは組み合わせが可能、という状態だったかな。一応推奨色の組み合わせというのはあって、そこからオプションという形で黒の革シートに変更とか。でもインテリアセレクションだけははセミアニリン仕上の革シートだけだったかな。たしか。

バブル期のマークⅡにも内装色が変更出来るオプションというのがありました。でも素材から別のものに変えるというのは無かったですねえ。大概は設定があったとしても革シートに換えるというオプションが20万円とか30万円という程度だったでしょうか。
内装の素材そのものが変わるというと、例えば「グランデ」が「グランデG」に変わればシート生地が随分毛足の長いものに変わるという事はありましたが、それだけでなくその他のモノも一緒にごっそり変わる、というものでした。内装の素材だけ変えるというのは聞いた事がありません。



もちろん先ほどの方には「そんなオプションは聞いた事がないからダメだと思います」というお答えはしていません。では本当に出来ない話なのか。
まずオプションとして設定する為には、という話になります。もちろんメーカーオプションとしての対応で、という事です。まずはそういうシステムを立ち上げる、ということを考えてみると。

最初の障壁はもちろんどういうオプションとするのか?という事になるでしょう。で、またそれがどれ位売れるオプションになるのか?という読みです。それに応じて資材の調達コストは大きく変わります。
市販車の試作を1台造るのに軽く1億以上の金額がかかるらしいという話も聞きますが、それを生産ラインに流して「月に5000台、5年作って30万台」とかいう生産計画でもって、やっとこさ1台200万円とかの金額に落とし込んでいる訳です。
でも、よくよく考えてみるとものすごいダンピング率ですよねえ。仮に試作価格1億円のものを販売価格で200万円に、という事だと2%以下、原価を考えればヘタすると1%未満に生産単価を抑えなきゃいけないわけです。

そういうことを考えると、果たしてオプションとして設定するだけの金額に納まるのか?という事が先ず問題です。
多分、先述の福野さんの「オール・パールホワイト内外装の特注車」のオプション金額が200万円也だったのも、台数をまとめることによる原価低減努力分の値引なんぞ一切無しの、工賃その他そっくりそのまま請求(+ポルシェのマージン分はキッチリ上乗せ)だったんでしょう。
幾ら「オプション金額10万円」となったとしても、果たしてオプションの価値がお客さんの感覚での10万円分として考えてもらえるのか、という問題があります。たしかに一目見ただけで「安そうな素材を使っているなあ」と感じる車があるのも事実ですけど、そこに辿り着くまでのプロセスを考えるとあんまり文句を言ってもイカンのかなあ、と最近は躊躇するようになりました。

例えばセルシオのフロアマットはそれだけで7万円ほどもしましたが、たしかに質は素晴らしい物でした。「おお、これに靴をのっけるのか」と最初は感心したほどの毛足の長さと密度の品です。それと同じ金額の家庭用の絨毯を買おうとすると、どの程度の品物が買えるのでしょう?
また、セルシオのフロアマットと同等の造りで家庭用の絨毯を造ったら幾らの値がつけられるのか?真相は闇の中なんですが、非常に興味のあるところです。

という事で話は飛ぶのですが、恐らく10万円という程度(といっては失礼ですけど)の金額では、原価のオプション金額への反映度を考えるに、一般に期待されるほどの質感の変化は出てこないのではないか?とは予想します。

もうひとつ問題なのが、自動車部品としての「要求性能」というハードルの高さです。私の感覚では、高級素材というのは一般に耐久性能が弱い、という感覚があります。良い風合いとは、良いバランスでアンバランスさが含まれているもので、また、よい肌触りが生命線でもあると思っていますが、それって同時にひどく儚いものでもあるんですよね。寿命が短いといってもいいかもしれません。
で、それらは自動車部品として要求されるものとしては論外なほど弱いので、使えるレベルにするためには何らかの「我慢するべき点」が出てくるだろうなあ、と。耐久性を取るか風合いを取るか。「すぐにダメになった」などというクレームと風評は特に嫌われる所ですから、やはり耐久性だろうなあ。
で、またそれは更に調達価格が高騰する原因にもなりますから、更にハードルが高くなる。しかも、それがラインに供給するための品にするために、注文が入ったら即座に納品できる体制を常にとり続けなければなりません。



以前ハイエースバンのメーカーオプションに関してメーカーのお客様相談室に電話をした事があります。内容は「後席のレスオプション(-25,000円くらいだったかな)がこれだけしか設定が無いのはどういうわけでしょうか?もっと設定車種を拡大できませんか?」というものでした。
こちらとしては「どうせリアシートなんて殆ど使わないんだし、生産ラインにしたってシートを載せないだけでしょ?」という軽い気持ちだったんですが、反論されましたねえ。怒涛のように。
リアシートが要らないことへの製造ラインでの対応や部品調整。その他、バリエーションが増えた分の型式申請にかかる届出書類の膨大さと申請費用などなどのメーカー負担。それらを考えると、リアシートが無い分の金額を減らすどころかプラスで幾らか貰いたいくらいなんだ、と。ただ、それでは納得してもらえないので赤字覚悟でこちら(トヨタ)もレスオプションを、要望の特に多い車形にだけ限定して設定しているんだ、と。文句を言われるどころか、そういうオプションがあること自体を感謝して欲しいくらいだ、と言われました。
どうしてもやりたいのなら、登録する時にリアシートを外して、持ち込み登録車(つまり改造車)として、乗車定員変更をかけて個別対応してくれ、とね。

恐らく内装の変更というオプションだけでも取得税が変わるということも出てくるでしょう。そうなると、やはりそれだけで型式申請が1つ増えることになるでしょうから、そういう意味でもやんないでしょうねえ。


という事で、そういうことを求めるのであれば、そういう対応をしてくれるメーカーのクルマなり、それに似た対応をしている車種の中から選ぶなりしてくれ、という事になるのでしょう。
それか最後に出てきたハイエースバンのように、出来上がったクルマを個別に、そういうことをしてくれる業者に持ち込んで、好きなように仕立ててもらう(キャンピングカーなんかはそういう対応ですよね)しかないのでしょう。もちろん、望む仕上になるかどうかはやってみてからのお楽しみ、という事になってしまいますが。



それを思うとメーカー純正の上級仕様車の仕上げってのは無機質な所も目に付いたりしますけど「ムチャクチャ安上がり」で「でも上質」という、非常にいいバランスの仕上がりということなんだろうなあ、と思うわけです。

セルシオの布シートだとウールマーク付いていましたしね。

この文章であのお客さんが御納得されるかは知る由もありませんが、なんかちょっと自分の中ではスッキリしました。



あ、もちろんクロネコヤマト並みに

「ウチでは○千台の車を使っていて、それを何年サイクルで代替していくので年間○百台の代替需要がある。ついては、ウチで使うクルマをすべてお宅さんで買わせて貰うようにするから、ウチ専用の車としてこういうのを特注で作ってもらえないか。1台あたりの予算は幾ら。それを年間○百台購入させてもらう。一緒に共同開発してもらえないだろうか?」

というある程度まとまった数の要求にして企画を持ち込まれればメーカーも動くでしょうけどねえ。ウォークスルーバンを造る時の実話だそうですけど。
もっとも最初はこの企画を日産に持ち込んで断わられたようで、「じゃあ次は....」という事でトヨタに企画を持ち込んだら「是非。ウチにやらせてくれ」という事になったそうですね。

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Posted at 2011/01/14 14:52:57

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この記事へのコメント

2011年1月14日 17:01
質素な内外装のベースグレードに、好みの駆動方式と変速機を組み合わせ、必要なFOPのみを追加する、といったオーダーが出来れば理想ですが、ご指摘のとおり型式認定や排ガス測定(モード燃費)或いは組み合わせ毎の動作検証等の付随するコストがネックなのでしょうね。

トヨタテクノクラフト等のメーカー系架装業者の手による特装車(持込登録)が多少の融通が利けばよいのですが。カローラ店のセールス氏にTRD名義のカローラ特装車を外装ノーマルのままといったオーダーはできないものか、と相談したことがありますが、「無理」の一言でした。

輸入車だと年間200台(50台だったか?)以内ならば形式審査が簡略化できると聞いたことがありますが、国内メーカーがこの制度を利用することは無理なのでしょうね。
輸入車で尖った性格のモデルの年間販売台数目標が同じような数値になるのは、この制度によるものと推測しているのですが。

コメントへの返答
2011年1月14日 17:47
コメントありがとうございます。

わりとトラックに関しては特装オーダーが利いて、かえってビックリしたことがあります。まあ、トラックという車の成り立ち(ラダーフレームを基本にエンジン、キャビン、荷台等が高度にユニット化されている構成)と、顧客の要求の細やかさが故に辿り着いた構造なんでしょうけど。
ある商談で、どうしても上手く嵌まらない組み合わせとなるトラックの話があって、トラック課(こういう部署があるのです)の人間に聞いたところ「無ければ作ってもらえばいい」と無造作に言われてのけぞった記憶があります。

あと、これは架装業者専用車(一般販売の出来ない車)というのがあります。有名どころでは「ハイエース キャンパーベース」と呼ばれる特装車で、キャンピングカーとして仕上げることが前提条件の車です。
これを売った時には8ナンバー登録をしたことの証明として、後日完成後の車検証をメーカーに送付する、という義務が課せられています。


これは売る側の問題でもあるのですが、基本現場のセールスはカタログが存在するモデルしか、その存在を知らされていません。先ほどのキャンパーベース車両などは、当時の所長の顧客でそういう業者があったから私も知っているだけで、その他の営業所のセールスではその存在を知りませんでしたし。
結局全ての情報が現場のセールスに公開されているわけではないのです。

例えば、緊急オーダーとかね。

通常は、「いついつまでにオーダーすると、いつまでの生産スケジュールに生産日程が組まれて、順次出荷予定日が付いてくる」という流れがあるのですが、何らかの理由(発注ミスとか、特に重要な顧客との間で起きたトラブルを早く解消する為とか)で、今すぐにでも車を用意しなくてはならない、という緊急事態に備えて「数日で車が来てしまう」というレスキューコールみたいな発注方法がある、とか。流石に滅多やたらに使えないらしいですけど。

個人的にはモデリスタ車両は一度しか納めた事がありませんでしたけど、ディーラーとはいえ、ああいうところとのお付き合いのルートはありませんでした。上層部レベルでは知りませんけど。TRDやトムスに関してもカタログが置いてあった、という以上ではありませんでしたね。
販売部門としては「登録して1台のカウント」という縛りがありますので、納期の見えない、いつナンバーが取れるのか見当もつかない車両などには、あまり積極的では無い、という基本姿勢はあるでしょうね。

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