2011年03月04日
新車のセールス時代。納めたばかりの新車にワックスを掛けるのは塗膜が落ち着く製造後1ヶ月くらい後の方がいいですよ、と言ってみたり。
ナラシと称して一ヶ月位はオトナシめに運転してくださいと言ってみたり。
まあ他にもありますが、結局根拠はありませんでした。つまる所、先輩セールスが言っていたことのパクリであったり、そういうもんだと言われている事の引き写しであったり。
じゃあ、その先輩セールス達の根拠はどうなの?と聞かれれば「そう思う」であったり「そんな感じ」であったり。
結局根拠のある言い草ではないのが殆どです。
先日、お客さんの車のフロントガラス交換がありました。そういう作業に関しては興味津々なのでズーっと作業光景を見ていたのです。もちろん作業者にとってはやりにくいことこの上ないのは承知の上で。
でね。
最後に言われたわけです。「このクルマはいつ納めますか?」って。もちろん私としては現役時代に言われていた「一昼夜の保管」を忘れてはいませんから「今日が土曜日なんで、一晩置くつもりで日曜日、と思っていましたが日曜日に仕事したくないし代車も出してありますから月曜日に納めます」と答えました。するとガラス業者さん。ニコッと笑って「安心しました。今時の接着剤は4時間もあれば硬化してしまいますが、そこまで置いておいてくだされば問題ありません」とのこと。
ホホウ。そこまで接着剤が良くなっているか。
つまり接着力の上昇曲線が早い段階で急激にアップして、完全硬化までは幾ばくの余裕はあるにせよ、実用硬化レベルにおいては3~4時間程度でOKという代物になってきているのでしょう。
おそらくこれは、塗料の世界なんかも同様のはずです。
塗料の乾燥は天日干しで1週間掛かる、とかのたまうところもあるやに聞きますが、1950年代あたりのラッカーやエナメル塗料が主流の時代ならイザ知らず、現代の主流たる補修用ウレタン塗料は硬化剤による化学変化による乾燥ですから、天日乾燥などという縄文時代のやり方が通用するはずがありません。そんなことを試みようとすると表面はボコボコ(ホコリで)、ツヤが出るはずもなく、でも工賃だけは立派に請求される、という事になりかねません。
ただ、もちろん化学反応を適宜進める為にはバッテリーが冬に弱いのと同様に、適切な雰囲気温度というものがありますから、ヒーターであぶるというのは化学反応を進める上で有効な手段ではあります。あらかじめヒーターで暖めておくのも、ポリパテの中に隠れている水分を飛ばすのに有効ですしねえ。
もちろんメーカーの塗装ラインで使用される熱硬化塗装は「設計された温度上において、初めて硬化反応をする」塗料のはずです。前述の「塗膜が落ち着くまでに1ヶ月程度掛かるので........」などという現象が起こり得るはずがありません。ガンプラのラッカー塗料じゃあないんですから。
きちんと設計された温度下できちんと反応する塗料。逆にそういういう状況下にならなければ反応の起こりようがありませんから時間を置けば落ち着くという迷信が起こるはずもない。
よく言う「エンジンの慣らし」にしても同様です。
現代のエンジンはもちろん、納車の日から全開走行してもいいとは何処にも書いてありませんが、その代わり普通に使う分には十分あらかじめ配慮がなされており、ナラシなどということを意識しなくともよい設計や、製造工程を踏んでいます。というか、普通に使っている状況で徐々にナラシが終わるような設計なり作りをしてあります。
どちらかといえば、変にいじられないようにするためには、どういう防御策をとっておくべきかということに腐心し、整備の優先順位の低い箇所はとにかく触りにくい箇所に追いやられていく、とかね。
象徴的な例として、現行クラウンにはATFの点検スティックが無いそうです。
点検スティックを廃止することによって、自動後退やガススタなどのお手軽なATF交換メニューを排除しようとしているのだろうなあ、と邪推しています。20万キロ30万キロの走行を考えるのならばまだしも、得体の知れない添加剤や「非純正」ATFを突っ込まれる方がよほど怖いのでしょう。
わりと整備屋さん的には「ウチの使う油は全部ワコーズだから」とか嘯くのを見かけますが、私的には「だから何?」という感じです。いくら名を聞くブランドであっても「姫のお口に合わぬモノ」は姫のご機嫌を損ねるだけです。特に近頃の姫は好みがうるさいので尚更です。
どうも最近の車にとっての敵は「昔はこうだった」という周囲の思い込みであるような気がしてきています。
もちろん油脂類や水関係は交換した方がいいのは言うまでもありませんが、逆に交換の際の手順や作業精度の不手際により、クルマそのものを傷つけてしまった、という事だってありうる話です。ねじ山舐めちゃったりとか、ボルトを折っちゃったとかね。
名人のプライドも時にはアダになりかねない時代です。「以前はこうだった」が何時まで通用するのか。きちんと見極められるようにしないといかんなあ、とシミジミ思うことがあります。
Posted at 2011/03/04 15:15:00 | |
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2011年03月04日
ハイエースワゴンというクルマがあります。私が思っているのは今の200系ではなく100系のハイエースの事です。
このハイエースの100系に平成6年の8月。とある事件が起きました。知っている人は知っている。知らない人にとってはどうでもいい事件だったのですが。
そう。ハイエースに待望の3000ccディーゼルターボエンジンが登場し、尚且つ全ての車種に3000ターボが設定されたのでした。
今思い起こせば、ガソリンエンジンの3000ccともなれば、みんなちょっとは怯むのが普通なんですが、なぜか当時ハイエースを購入しようとしていた方々は、3000という排気量にはなんら抵抗が無いかの如く、臆することなく迷うことなく「3000ターボ下さい」と手に手に300万位を握り締め、目を輝かせてハイエースを買って行かれたものでした。
それまでは2400ccのディーゼルターボモデルはあったのですが、なぜか4WDモデルにはその設定が無く、不思議なことに走らないことで有名だったノンターボディーゼルの2800ccエンジンしか設定がありませんでした。
ハイエースワゴンといえば、パッと見にはあんまり高そうには見えない外観ではありましたが、何だかんだ言っても当時の1Box界のクラウン的存在です。クラウンといえば「とにかく一番高い奴下さい」という買い方の比重がけっこう高いクルマ(後にセルシオに継承された傾向)ですから、それと同様、ハイエースワゴンも「一番高い『リミテッド』下さい」率がワリと高い車でした。
で、その中でもブルジョワジーなら一度は夢見る「4WDモデルのリミテッド」には当時、あれにしか設定の無かった「オールパールホワイト」のボディーカラーがあり、以後そのボディーカラーが再現されたことが無いこともあり、「4WDのスーパーカスタムリミテッド(でもノンターボの2800cc)のオールパールホワイトボディ」は、何となく近寄りがたい(色んな意味で)プレミアムモデルでした。ある時、それをご契約頂いた先輩セールスが、ようやく新車を納め終え下取車に乗って帰ってきて言う事には。
「あんまり走らんもんだから、文句言われそうで怖くって納めて直ぐに逃げるように帰ってきた」
と息を切らせて言っていた位のモンでした。だから、3000ターボエンジンが全車種、もちろん4WDモデルにも分け隔てなく、均等に搭載されてくるというニュースには、ハイエースをこよなく愛する一部の熱狂的な層にとってはちょっとしたどよめきがあったのです。
これ以降ハイエースの快進撃はとどまることを知りませんでした。なんてったって総額400万を超えるクルマの新車が在庫車としてあったくらいなんですから。
しかしこのハイエースにとって敵なしの状況は、そう長くは続きませんでした。
そう、今都知事選で何とかかんとか言っていますが、当時東京都知事になったばかりだったかの石原君が「ディーゼルってモンはどうしようもない」とペットボトルに黒鉛を入れてハラハラと振って見せたあの会見は、いわば白昼堂々とやって見せた政治的テロのようなモンです。ディーゼルに対する規制を野放しにしてきたことを槍玉にするのではなく、「勧善懲悪・暴れん坊将軍様VS悪の桔梗屋」という思考停止の善悪二元論でもってディーゼルが悪い、という構図にしてしまったわけですから。
規制が無い事をいい事に、メーカーはディーゼルの技術改良を蔑ろにしてきたという論調もあります。が、そんな事言ったって締め切りがなければ夏休みの宿題だって、確定申告だってお尻に火がつかないのは誰でも一緒です。
旧電電公社のように「予算は潤沢にあって、でも締め切りはない」という環境ならば、あまりにも無駄としか思えない方面にだって先行技術の開発を続けられもしましょうが、民間会社ではそうは行きません。どこかで回収を考えるのは神ならぬ経営者としては当然の成り行きでしょう。
そんなことがあって、ディーゼルエンジンは悪者となり、遂にはハイエースもガソリンエンジンだけのラインアップとなってしまいました。当時はグランドハイエースなどの車も売れ始めている時期でもありましたから余計に世間様からは「忘れられた存在」になりかけていた、という事もあり自然消滅というかフェードアウトさせられてしまったわけです。
ハイエースユーザーとか、後ハイラックスサーフとかプラドあたりに乗っていた方々以外は、ほとんどディーゼルエンジンという選択肢がありません。つまり乗ったことの無い人が殆どです。
中には2200ccだったかのコロナディーゼルとかに乗られていた方もありますが、ま、流石にあれはちょっとなあ、と思っていましたが。やはりディーゼルエンジンにターボは不可欠だなあ、と。
それはともかくとして、やはり圧倒的にディーゼルエンジンを知らない人が大多数なのはちょっと、と思います。乗ってみると意外に静かだし乗りやすいし、力はあるし。
でも販売台数が少ないので、どうしても割高になってしまうんですよねえ。販価が。
でも本当に本気になってCO2削減とか何とか言うのであれば、もともと熱効率のいい方の原動機をもっとアピールするべきじゃあないですかね?
まともに考えて、どうやっても価格差が燃費差(つまりコストの大小は最終的には原油の使用量の差に置き換えられる=CO2排出量の差ということ)では現状、回収しきれない電気自動車はいかがなもんかとは思うんですけど。バッテリーの技術開発を待つって言ってもさあ?
ってことで、今ものすごくサクシードディーゼルに気持ちが傾いている今日この頃です。
Posted at 2011/03/04 12:13:36 | |
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