2012年09月17日
よく「椅子の文化の違い」とは言われるところです。先日の「輸入車雑感」でもじょい@さんもそれに触れられていました。じゃあ、はたして椅子の文化って?という事に付いての雑感です。
もちろん工業大国である日本の事ですから、椅子の生産高だっておそらく相当なもんだと思います。ですが悲しいかな、高級椅子と言われる椅子の話になると天童木工あたりの話は出てくるとは思いますが、それ以外のメーカーの話があまり脚光を浴びる事が少ないのかなあ、と。別にそれ以外でもコクヨとかイトーキ、オカムラなどなど、色々な事務機器を扱っているメーカーだっていっぱいあるのですから、仕事環境を提供する為のギアとしての椅子も少なくないとは思うんですけどね。
と言いつつも私自身が使っている事務椅子はハーマンミラーのアーロンチェアです。じゃあその二つの何が違うんだろう、と。
細かい所の違いを挙げ連ねても長くなるだけですからそこは体よく割愛するとして、両者の違いを主観で挙げるならば、日本製の椅子はサブメンバーとしてあくまでも脇に控えるサポートメンバーの一人という位置づけという性格が濃厚に感じられます。まあ言っちゃえばお買い求めやすい金額と、それ相応の金額並みの存在といったら良いでしょうか。
一方のアーロンチェアは、というと椅子だけで主役がはれるほどの存在感と機能、そして一般的に椅子と言われて思い浮かべる購入金額とはかけ離れた定価っていうか、馬鹿にしてんのかと思うほどの販売価格かな、思い浮かぶのは。
勿論両者とも所詮椅子なワケですから、人の骨盤を支え、座面にかかる圧力を受け止める事には違いはありません。じゃあ何が違う?と聞かれれば。
両者の違いは、端的に、貴重とは「重く貴い」と書くが如くアーロンチェアはやけに重い(一脚およそ25kgくらいはあるようです)という事でしょうか。勿論アーロンチェアが万人にとって貴重と受け取られるか否かはまた別問題として。
しかも良くある組み立て式の椅子ではなく、完成形で梱包されているので、これまた箱もでかい。私の場合、店頭で引き取るために親父のカルディナを借りてきたほどです。あれくらいないと運べません。
ちなみにアーロンチェアに行き着くまでには私も日本製の椅子を何度か買い換えてきました。そのほとんどが軽く、組み立て式のため、それほど大きな梱包という事でもなく運搬に苦労したという事もありませんでした。
一度だけ背もたれも一体式・合皮製の立派な外観に見える奴も買ってみましたが、そのときばかりは少々箱も大きかったですけどマークⅡのリアシートに何とか収めて帰ってきた筈です。
重量級の椅子は勿論どこの部品も重いです。このため、例えばリクライニングの軸一つにしたって華奢な構造ではグラつきも出ますし音もします。でも軽ければそこまでの強度も必要ないわけで。でも軽い奴は軽い奴で、それなりに構造も華奢ですからガタツキは結果的には出てきますけどね。
でもそこはそれ、さすがにアーロンチェアの場合、突拍子もない金額を請求されるだけあって抜かりはないなあ。今現在、買ってから7年ほど経ちますけど軋みやガタはないですもんね。メッシュの座面は通気もいいですから夏でも蒸れは一切なし。
一方の安物事務椅子は、というと買ってすぐに不満点が幾つか出るのが通常でした。蒸れやお尻の痛みや軸のガタツキ、着座姿勢に至るまで万遍なく、ですね。
でも、それでも金の紋所の「お買い求め易さ」で口をつぐむ事も多いわけです。結局椅子はサブメンバーでしかないんだから、という諦めを持っている方々が大半、という事に落ち着いてしまうのかもしれません。そこが椅子の文化って奴の正体なのかなあ、とか思わなくもありません。
対して一方では諦めの悪い連中って奴が世の中にはいますから、そういった連中の中には「金なら望むだけ出してやる。その代わり不平不満の出ない奴をもってこい。」なんていう事を口にする人もいるわけです。椅子に対して諦めの悪い連中という事だと、それは特に向こうの貴族連中とかだったんでしょうね、多分。私なんかはその残滓の裾の裾の裾にやっとこさ与かれた、という事なんでしょう。
で、そうした蓄積されてきた技術とかやらが時代時代の特権階級の崩壊に伴って職を求め、仕事を探して行き着く先の一つが自動車メーカーだったのかな、と。こうして前回のシートの話にも繋がるのかな。
さて、ここでやっと前回の話の続きに繋がるわけですが、良いシートって奴には「ある程度金が掛かって当然」という良い意味での諦めがあって初めて成り立つものなのでしょう。多分。
きちんと座り、足を踏ん張って、望むペダル操作やハンドル捌きを実現する為には良い椅子と良い運転姿勢が大事です。足を踏ん張る為には少々つま先が外向きに出来るスペースが欲しい所でしょうし、正確なハンドル捌きを実現する為にはストレートハンドなんぞ以ての外という事にもなってきます。そういう運転姿勢を設計基準としてエアバックの展開タイミングや速度だって設計されているわけですしね。
ってことは良く見かけるDQN姿勢で、のけぞった横座り姿勢なんぞ論外中の論外という事にもなるわけですが。
ワリと日本ではシートは大物部品という事でコストダウンの槍玉にあげられることも多いようです。勿論そこはそれシートメーカーの必死の抵抗に期待したいところなんですが、見るからにお金を掛けられなかったモデルなどはシートを換えるだけで印象が一変してしまうモデルもあるものです。
私自身が経験済みのモデルという事だと初代インプの1.5NA、C’zがそうでしたねえ。おそらく2代目インプの廉価モデルも初代と同じシートと見受けましたから、シート換えたら印象が変わるんだろうなあ。多分。勿論以前書いたように、標準装着のシートはそのモデルの専用品として設定されている部品ですから、フィッティングという避けて通れない部分がどう影響するか、という問題が大きくのしかかってくるとは思いますけど。
さて、シートという視点で今まで意外に印象がよかったメーカーは三菱です。
アイにせよパジェロミニにせよ、融通の利かないドン臭さ的な部分はあるんですが、それはそれとして意外に良いと思える部分もある。「あ、こんなところが三菱よね」みたいな。昔乗ったこともあるVR4なんかも良い印象だったなあ。結構シートまわりに関しては素直に位置が決まってたかな?という感じがします。他の車は知りませんけど。
一方でトヨタはなかなか運転姿勢が決まらないんですがね。
翻って考えてみれば日本国内の「ヘビーユーザーユース専用品」って奴の製造元は、ワリと元を追っていくと三菱なり住友、日立、石川島播磨とか、そういった良く聞く老舗重工業メーカーというか、かつての財閥系に連なるモノであることが多いような気はします。町工場の工作機械一つとってもですね。勿論新進気鋭のメーカーを否定するつもりはないんですが。
安物はこんなご時勢ですからいっぱい溢れるようにはなりましたが、でもちょっとまともなものを買おうとすると結局はそこに収斂していく、様な雰囲気。
で、良い様に解釈すると三菱ってメーカーにはお堅い所もあるにせよ、そのお堅さがまた良いところでもあるのかもしれません。すぐに馴れ合うのはメーカーの体質が受け付けてこないといったら良いのか。問題はそのお堅さも含めて良い方向に向けていくマネジメントなんでしょうね、つまるところは。
なかなか「輸入車雑感」に戻りませんねえ。次は多分......、辿り着くと思います。
Posted at 2012/09/17 18:05:17 | |
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