2021年03月10日
大昔のバブルの頃、オンキョーのメーカーセールスとしてステレオを売るアルバイトをしていた時期があります。南野陽子に宣伝してもらっていた頃ですね。
音は他社の製品と比べてソコソコ良かったとは思うのですが、如何せんデザインがダサいので売るのに苦労した覚えがあります。
というか、はっきりと苦労した。音が良いですって言ったって振り向いてくれないだもん。どうせ音なんて、どれも似た様なモノでしょ?ってな言われ様で。イヤ、俺聞いても分かんないし、って言われた事が何度あった事か。あんまりシツコイと他のお店に行かれかねないのも難しい。
その点一般的なクルマの買われ方と一緒で、いくら走りが良いとか設計が優秀です、と言われても誰も乗り比べて云々なんて言ってる人は居ないのと同じです。結局みんなが選んでる無難なメーカー・聞いたことのある名前のクルマを選んでしまう。だから高齢者は軒並みプリウスを買い、老いも若きも軽と聞けばNBoxを思い浮かべて買う訳です。クルマの良い悪いはあんまり関係ない。良いらしいという幻想で買われていく。
商機というモノが何処にあるのか?と聞かれれば、世間様の耳目を引く「あのクルマは良さそう」という分かり易さや評判をどうやって作れるか?という点だと思います。アルファードという分かり易さ、ハリアーという記号。広くて乗りやすそうな軽というイメージ。
一旦イメージが出来てしまえば開発する側としてもそのイメージを如何にして前年同条件として追うか?という話になるわけですが、クラウンやマークXの様に一旦ブランド・イメージやポジションが枯れてしまうと失地回復も難しいものです。ここで妙な前年同条件とか過去の栄光を追ってしまうから枯れちゃうんだろうなあ。上手いことプライドを捨てるのは難しいものです。
でまた、こういうものは回答のある世界ではないので何とかプランナーだとか、〇×アドバイザー、消費者動向マーケティング調査何とかやら等といった魑魅魍魎が跋扈する世界になるんだろうなあ。信用した所でどうせ責任は取ってくれないのに安心材料欲しさにお金払っちゃう。またその安心材料を頼りに企画を立ち上げちゃうこともあったりするんだろうなあ。とまあ、車の話はさておき。
オーディオに話を戻して、ちなみに当時一所懸命いろいろ聞き比べてコレ良い音出すステレオだなあ、と感心したのはA&Dでした。知らない人もあるでしょうけど赤井&ダイアトーンでした。
で、バブルの頃のケンウッドって自社工場は持ってなくって、やっていたのは企画と製品デザインだけいう話でした。じゃあ生産は?というと当時のアイワに委託していたそうです。OEMってヤツですね。
当時、電機屋さんに販売研修に来ていたアイワの技術者の人から直接聞いた話ですから多分間違っていないと思います。物はウチで作ってますって教えてくれました。企画・デサインをひとりの部長が先導してまとめて、生産は外部委託。
それ以前はトリオという名で無線機器とかをやっていた会社がAV機器向けにKENWOODというかっこいいブランドロゴを立ち上げ、当時のAV機器としては際だってスタイリッシュなデザインでまとめられた製品を世に送り出していました。カッコ良かったなあ。当時のオンキョー製品と比べるとため息が出る程に羨ましかった。だって売るのに苦労しないんだもん。
まあ正直な所、音はホドホドっていう程度だったけど音を気にしてシステムコンポ買う奴は殆どいなかったし、というか指名買いが殆どだったし。そういう戦略で突っ走ることを決断した経営陣も、いい度胸してたんだろうと思う。
結局AV機器向けだったブランド名は本体のトリオを飲み込み、後に社名自体がKENWOODになってしまう。しかも今ではビクターとも合併しててしっかり生き残ってるし。
バブル時期のパイオニアもKENWOODと並び称されたスタイリッシュなデザインの大手AV機器メーカーでしたが今現在は消えかかってます。美味しそうな所から各部門が売りに出されて今は何が残ってるんでしょう。今度は地図データの管理部門を売るらしい。
いや、たしかに技術は素晴らしかったかもしれません。KUROとか、さ。バーチカル・ツイン・スピーカーとか今でも個人的には欲しい位です。S-1000twinAとかマジで。ただ、売れてナンボの世界でもある。残すことを前提にするなら製造数を絞って値付けを高くするとか、核になる技術は自社内に残して外部に生産委託するとか方法はあった様な気がするんだけどなあ。そこで変に商売っ気を出して売らんかなの値付けと生産・販売方法が中途半端過ぎた気がする。
ソニーのテレビとかが分かり易いかもしれないけど、あそこの液晶パネルって暫く前から韓国製でしょ?いずれ技術が成熟すれば競争できなくなると思える部材はさっさと切り捨てて外部からの部品調達に切り替え、でも競争力の核になるであろう画像エンジンの製造開発は今も自社でしっかりと囲ってる。
シャープもそうだけどマスの大きな製品は製造ラインもデカいから、どれだけ安く作れるかが鍵になってくる。ライバルは国内だけじゃない。となると今だから言える話なのかもしれないけど、液晶に限らず製品技術と製造技術だけの開発に特化する方が良かった気はする。こういう所が大企業だからといって安心してばかりは居られない、という今の時代なんでしょう。今さらながら一体何処で道が分かれたんだろうな、と沁みじみ思う。
だからトヨタも必死だと思う。企業規模は守りの保証にはならない。GMだって破綻したし。危機感を煽るばかりではイカンと思うけど、でも安穏としている人もいっぱい居る。トヨタの中だけじゃなくって、私も含めてトヨタにぶら下がっている人。その一方でアンチ・トヨタの人もいっぱい居て、やれEV化に後塵を拝してるだの、企業規模がデカいだけだの、金持ち企業だのと揶揄されたり。
雇用を守る、ってのは素晴らしい考えだけど、難しい舵取りでもある。いっその事、外部に生産委託してしまって自分たちは企画開発と金融業に特化してしまう方がよほど楽なのかもしれない、とも思ったり。
サラリーマン社長なら前年同条件で先例に倣えで済ませてしまうのかもしれないけど、トヨタの生命線の1つは社長が創業者一族の中の人、という事なのかもしれない。
Posted at 2021/03/10 04:44:33 | |
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