ある未来のある日の、レーシングチームの採用テスト

ある未来の、ある日、あるサーキットで、
あるレーシングチームのドライバーの選考が行われていた。




選考担当のテクニカルディレクターは、憂鬱な気分だった。


私は、このチームのトップである「総帥」から、ドライバーの選考について一任されているが、
気まぐれな「総帥」が、ひとつの実技テストの「執行」だけは、任せてもらいたい、と。
「その、テストの内容は、その時まで、お楽しみ、ということで＾＾
もちろん、選考の「結論」については、私は口出ししない。選考の権限を持つ、テクニカルディレクターが、決めてほしい。
テストの様子を見て、決めてほしい、ということ＾＾」


総帥が考えていることは、大抵、下らない。
聞いた時点で、予測がついた。

「ロボットカーとバトルしろ」おおかた、そういう内容に違いなかった。



選考担当のマネージャーと集まっているドライバー候補者たちの前に、
案の定、
2台のファントムブラックパールの三菱ランエボがやって来た。



エボテン、とかいうやつかな。
ずいぶん前の車両で、10年近くに渡って生産されていたから、中古車市場では、相当な台数がダブついているくせに、
物凄いパフォーマンスだ、とか・・・

三菱の、20世紀末の最高傑作とか、
ガソリンカーの、ヘビー級の集大成とか言われているか・・・



2台のランエボ。
案の定、
中から出てきたのは、総帥だけだった。

もう一台には、ヒトさえ乗っていない。


総帥が考えていることは、大抵、下らない。まったく、憂鬱な気分だ・・・。(つづく)