「忙しいほど乱れ、暇なほど整うのは、一般的に広く通用する法則といって良い」
森博嗣『スカイクロラ』 2004年 中央公論新社
このたび、数日間、ブログの更新が滞った。
ただ、後からフォローアップするので、隙間は埋まってしまう。
この記事はこの日に書かれていない。あとから埋められているものだ。
ブログ主が書くネタは尽きない。
一日一回では語りつくせないが、それ以上に増やすと、生活が立ちゆかなくなるので仕方あるまい。
「忙しいほど乱れ、暇なほど整うのは、一般的に広く通用する法則といってよい」。
車両の状態についても然り。
外観はすっかり汚い車となってしまっている。
・・・・。
いつ洗車しよう・・・。
さて、
これ以降の話はフィクションにつき、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
「・・・でも、それはそうと・・・来月から、アウトバーンを席巻できれば、総帥以上のストリートファイターは、世界中探しても皆無となります!」
「・・・そうだな」
「そうですよ!まず、来月、総帥が乗り込んで、かの地に常駐する。
続いて、自分が乗り込む!
同志たちが代わる代わるに乗り込み、波状攻撃を仕掛けて、締めくくりに総帥がカタをつける!」
「もう、準備も整ったしな」
「ええ。完璧ですよ。みんな息巻いてます。自分以上に」
そういう軽い気持ちで戦いに臨める奴らは・・・正直、羨ましい。
実際には危険極まりないことだが、正直、羨ましい。
特に今日、この男と一緒に来て、今も店の中にいるノンビリ屋たちは。
同じことを目指しているけれど、あの店内のノンビリ屋たちと私は、人間性が違いすぎる。
「・・・ああ。士気が高いのは、いいことだ。
だが、油断は禁物だ。完璧とまではいかないだろう」
「しかし、我々以上のスペックを誇る集団など・・・」
「ああ。去年までは、いなかった。たぶん、今年も。
しかし今シーズン、深夜のアウトバーンは、戦場になるだろう」
「我々と同じような連中が、全世界から、わんさかと押しかけるのですね」
「ああ。全線速度規制まで、もう幾年もないからな。その兆候はもう何十年も前から表れていたがな」
「今、アウトバーンの覇者となった者達が、世界最速の走り屋として永遠に伝説となる」
「ああ。だが、そもそも我々の行為の根本精神は、連盟の憲章に違反している。もとから、いつまでも放任されてよいものではないんだ」
「だから、あのたった一本の追い越し車線が、いつになく輝いて見えるのですね」
「そう。その追い越し車線は、もうすぐ制限速度が課せられる」
「全ての車を追い越している、そんな理屈は通用しなくなる?」
「そう。通用しなくなる」
「制限速度を定めた法の下に?」
「そう。法が全てを支配する時代になる。完全に。その効果はアウトバーンに留まらない」
「天下泰平の時代?じゃあ、今年は、天下分け目の関が原?」
「歴史、好きだな。でも、戦国時代の方は、あまり詳しくないのか」
「関が原だと言ったのが適切ではない、と?」
「ああ。大阪の陣だと思ったほうがいい」
「豊臣を滅ぼすとか、実際は家康は死んでいた、とか?」
「あれとは人間関係とかが随分異なるから、それは、違うと思うな。死については、遺書や遺影はよく更新しているが、ね。三十代になったときには、それが習慣化していたし、年に一度、遺影を撮ったりするのが流行っていたし」
「総帥が死ぬとか、そういう話をしてるんじゃないですよ。総帥は家康より若いし、カッコいい」
「そういう人間ドラマというより、もう大きな戦いが無いってことと、機械的な話だろうな」
「鉄砲とか、大砲とかが規制されたとか、そういう?」
「ああ、そういう話」
「1543年に鉄砲が伝来したときは、ただの火縄銃だったのが、関が原の戦いくらいのときは、引き金と撃鉄のついた、点火にいくらもかからない、現代の銃の雛形が出来上がっていたとかいう、あれ?」
「ああ。その話。それが、規制されてくる」
「スピードに関わる?・・・やはり・・・」
「ああ。そっちの想像通りだよ」
「高高速を目指せるハイパワーカーが・・・」
「生産されなくなる。いや、規制される。そういう世の中になる。個人や結社が闘争行為を志すことが包括的に禁止される。それを刺激するようなモノ、特に道具類の全てが禁止される」
「・・・だから、今しかないと・・・。
そう!
自分も、走りの世界ではもちろんそうだし、
加えて、
総帥と同じ職業の人間としてはなおさらそうなんですが、
ドイツが本場とか、
ドイツ基準とか、
ドイツの法ではとか、
それが僕らのやり方の基盤っていうか、そういうのが永遠に先生っていうか、
・・・それが凄くうざったいっていうか」
「だから、それを踏み越えたい。そうだね?」
今日いる面々の中では、こいつが一番私に近い境遇と心境ではなかろうか。
「ええ。総帥は?」
「私も。大いにそうだとも」
「やはり!踏み越えて、それにとって代わる」
「ああ。
とはいえ、そのドイツ基準というのが、そういう目的をもって創られたものなんだよ」
「踏み越えて、それにとって代わる?」
「そう。先行する強豪を踏み越えて、それにとって代わる。
だがね、それこそが継承するってことなんだよ」
「先行する強豪を踏み越えて、それにとって代わることが?」
「そう。継承するってことの究極の姿なんだ。
君の言っていた、父殺しの成人儀式っていうのは、そういう観念を極論した逸話なんだよ」
「・・・・、なるほど。わかりましたよ、さすが総帥だ。
闘いの魂をよくわかっておられる」