「G2」　－G来襲完結編

Gはスイベル・スイーパーに飲み込まれ、回転するブラシの奥へとその姿を消した。

ヤツに無残な最期を負わせたことに一抹の後悔の念がない訳ではないが、ヤツも私の足をカサカサと這い登るという残虐非道な行いを冒したのだ。恐らく私がこの件で司法に問われることはないだろう。

「ケリをつけなければいけないな。。。」

一夜明け、私はそう呟いた。危機は去ったのだ。しかしまだやらなければいけないことがある。
スイブルスイーパーを開けて、中のゴミと共にヤツの屍骸を始末しなければならない。それを済ませて初めて決着がついたと言えるのだ。

気付けに一杯のコーヒーを飲み、おもむろに私は床に古新聞紙を広げた。
そして意を決して、勢い良くスイブルスイーパーのゴミ収納部の蓋を開いた。

「・・・・・・・・・・・！！」

恐るべきことにそこにヤツの屍骸はなかった。いや、ヤツの姿はそこになかったと言うべきか。

「生きていたのか。。。」

私は思わず唸り声を上げた。

私の推理はこうだ。私がスイブルスイーパーをヤツに向けた時、恐らくヤツはその驚くべき超感覚で即座にブラシの隙間を見出し、そしてその刹那そのほんの小さな隙間にその超人染みた身体能力で己の体を潜り込ませ、瞬時に事無きを得たのだろう。そしてその後、私が寝入るまでスイブルスイーパーの奥にじっと身を潜め、明け方そっと逃げ出したのであろう。

「止めを刺しておくべきだったかもしれないな。」

あの時スイブルスイーパーのその奥にキンチョール系猛毒ガスをたっぷりと注入しておけば、間違いなくヤツの息の根を止めることが出来ただろう。
しかしその時の私の脳裏には幼い頃のトラウマ、～雑誌で叩かれて胴体の半分を飛び散らせてなお、残った3本の足で逃げ回るヤツの姿～、が浮かび、こともあろうに猛毒ガスを注入されて半身がバラバラになって怒り狂った状態で飛び出してくるヤツの姿を妄想し、その恐ろしさのあまり私はとうとう引導を渡すことが出来なかったのだ。。。

今頃ヤツは光の射さないジメジメした部屋の片隅の暗がりで息を潜め私の姿を凝視し、私の一挙手一投足を眺めながら復讐の機会を待っているに違いない。

「これからまだ第2、第3の悲劇が続くのか。。。」

ふとどこからか生暖かい風が私の頬を撫でた。時計を見ると既に深夜の12時を過ぎていた。
またヤツらが徘徊する時間がやって来る。そしてその中には間違いなく昨日のヤツがいるのだ。

嵐がやって来る。本当のギグの始まりだ。。。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　～fin・・・