
初雪が舞っている。目の前では日本海の荒波が長い冬の到来を告げている。ここは12月中旬になると一面銀世界になる。かつては漁師町として賑わったこの町だがここ10数年は漁獲高は以前の半分近くに減少している。しかし歓楽街は今でも往時を偲ばせる雰囲気がある。そんな小さな飲み屋街にひっそりと佇む小料理屋がある。女将は40代になるかならないか。背が高く長い黒髪を束ねた美人である。若い時分から男に泣かされ随分苦労を重ねてきたようだ。生まれは四国だが神戸のスナックを皮切りに大阪、横浜…夜の街を渡り歩きこの地で店を開いた苦労人だ。結婚を考えた男がギャンブルに明け暮れ借金を女将が払う…それでも男はギャンブルを止めないが女将は惚れぬいた男がいつか立ち直り所帯を持てる日が来ると信じて夜の街で働き続けた。だがある日、男は女将の前から忽然と姿を消した。女将のライフに乗って…いらっしゃいませ♪今日は寒いわね。何にします?寒いから熱燗にしましょうか!?うんそうしてくれ。男の名は龍さん(笑)九州で事業に失敗してこの地に流れ着いて半年になる。地場大手病院で運転主として働いている。車の運転が巧いようで休日はレンタカーのバスのドライバーのアルバイトの依頼があるようだ。龍さんは毎日この店に通っている。あまり酒は飲めないのだが女将に惚れているのだ。女将もまた龍さんからの誘いをずっと待っている。外は細雪が舞っている。今日はこの天気だからもうお客さんは来ないわね。龍さん二人で飲みましょうよ

ああそうしよう。女将…この酒を飲み干したら俺はあんたを抱くよ。いいだろう!龍さんその言葉を待ってたのよずっとね

その時この店は昭和の薫りが漂っていた。有線から風雪ながれ旅が

女将の白い肌があらわになった。龍さんは優しくその柔肌に…酸いも甘いも人生の荒波を味わってきた二人。日本海の荒波のように二人は愛し合った

注)薄恋とはさっき考えた造語。

Posted at 2012/11/15 10:58:04 | |
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