
小学生3年生位の頃、
当時はまだ最先端であったであろうし、
今でも既製品では見たことのないLEDテールと偉く太いマフラーを付けた真っ青なスポーツカーを見た。
近所のお兄さんが乗っていた車。
大きく膨らんだマッチョなフェンダーと丸い4灯のテールレンズが酷く興奮させた。
「あの車何て言うの?」
親父に聞いた。
「R32GT-R。」
この時初めてGT-Rという車を知った。
平成元年生まれの私が、小学3年生頃と言うと既にR33GT-Rが出始め、32GT-Rが庶民の手の届く価格になってきた頃だと思う。観光地の地元では毎日と言っていい程GT-Rが見れた。
一番好きなミニカーはガンメタの32GT-Rだった。
塗装が剥げて樹脂が見えてもなお持ち歩いていた。
それから十数年が経ち免許を取り就職した時両親が車を買ってくれると言った。
でもGT-Rだけは許してくれなかった。
軽なら買ってやると。
でもそんなものはいらない。
自分で買うと言って断った。
暫くして中古車情報誌でとんでもない32GT-Rを見つけた。
溶接止めロールゲージ
フルスポット増し
ブレンボモノブロックキャリパー
ワンオフチタンマフラー
ドライカーボンボンネット
社外タービン
残念ながら修復歴はあったがむしろそれはハクが付いている様な気さえした。
お前にこの俺を操れんのか?
そう言われている気がした。
誰かに取られると思って即決契約した。
納車の日の遠くからやって来るブタ鼻のダクトの光景は今でも記憶に新しい。
興奮して車の中で寝ようかと思った。
600馬力近くあるこの車は当然ながら操りきれず事故を起こした。
それも2度も。
それでも直して乗りたい。どんなにボロボロになっても乗り続けたいと思った。
だからある漫画に出て来る主人公の気持ちがよくわかる。
真っ直ぐ走らなくても乗り続けたいと。
2度目の修理は酷く時間がかかっていた。
確かに廃車レベルではあったが、1年以上も待たされてまだ直らない。
そろそろ仕上げのアライメント調整が終わるだろうと思った時、携帯が鳴った
そう、今日の10時頃
ついに完成したから取りに来てくれと言われるのを期待して...
「板金屋です。昨夜火災が起きまして工場が全焼しました。修理中のお車も被害にあってしまいました。」
血の気が引くとはこのこと。
もう全身の力は抜け、震えた。
GT-Rという車を知って今日までそれ一色で生活していたのだから。
辛い残業もこのために頑張れた。
脱力感と怒りで満ち溢れている。
さっきの漫画の中の車は高速道路で燃えてしまうが主人公はそれでも直す。
でももはや自分にそんな気力はない。
ボディ全体に火が入ってしまっては。
補記類も全て水没している。
直す気力も金もない。
ある漫画は言う。
遅くても4年で大金をはたいて車を改造することの無意味さに気付くと。
行く先々のショップで1000万円かけないとこのレベルには持っていけないと言われてそんな車に乗っている自分が嬉しかったはずなのに。
そういうことなのか。
潮時なのか。
工場は保険に入っているものの、21年落ちのこの車に一体いくらの価値があるのか。
聞きたくもない。
生き甲斐をなくしてしまった。
生き甲斐をなくしてしまった。
Posted at 2014/03/21 13:32:26 | |
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