
前回の続きです。
種子島の島間港からフェリー太陽に乗船。
この船は屋久島町役場の町営船で、種子島~屋久島~口永良部島の航路を運行しています。
乗り心地はまるで遊園地のバイキング。
波に乗っては落下を繰り返します。
後日ネットで調べると、やはり揺れることで有名な船のようです。
個人的には嫌いじゃないけど、車が少し心配でした。
洋上アルプスと称される屋久島。

降水量は国内屈指で、1ヶ月に35日とか1年で400日雨が降るとすら言われます。
1日目 … 3月2日(金)
ところでこの船、偶数日と奇数日でダイヤが異なり、当日は運悪く午後の便。
16時前に着なので、初日は殆ど時間が残されていません。
屋久島灯台 [
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登山用品一式をレンタル後、最初に向かったのは屋久島灯台。
美しい造形を誇る白亜の灯台です。
灯台へのアクセスは狭い上に、両脇が溝なのが嫌な感じでした。

脱輪がとても多いらしいので、訪れる際はご注意下さい。
灯台裏の永田岬から眺める口永良部島。

2015年5月の爆発的噴火は記憶に新しいところですが、現在はレベル3(入山規制)となっており、上記のフェリーで訪れることが出来ます。
赤い矢印が灯台の場所。

その下の四角枠は、今回とても楽しみにしていたエリアでした。
西部林道 [
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この区画は西部林道と呼ばれ、国立公園特別保護地区を縦断します。
さらに
世界遺産条約登録地域でありながら、車での走行が可能です。
注意点は午後5時から午前7時まで夜間通行止めである事。
超高確率で動物と遭遇するため、超安全運転で走行する事が求められます。
さっそくヤクシカが現れました。

屋久島と口永良部島のみに生息し、本土の鹿と比べて半分程度の大きさだそうです。
話に聞いていたとはいえ、遭遇率の高さに驚きます。

車から降りて、至近距離で撮影しても全然逃げません。
人が危害を加えないのを知っているのかな。
ヤクザル(ヤクシマザル)も現れました。

ところで、頭上からやたらと何かが落ちてきます。
何かと思えば木の上にヤクザルが。

このサルが落とした枝の葉っぱを、ヤクシカ達が食べていました。
異種族間の共存関係が面白かったです。
西部林道は見応えも十分。

屋久島のガイドの方は、大雨で登山が出来ない時など、代わりにこの地方を紹介する事もあるようです。
大川の滝 [
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西部林道を南に抜けると、県道78号から滝が見えました。
「日本の滝百選」に選ばれる屋久島最大の滝で、88メートルの落差は九州一だそうです。

写真で伝わらないのが残念ですが、間近で見る迫力は全国でも屈指に感じました。
モッチョム岳 [
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大岩からのパノラマが素晴らしいと評判ですが、登山の難易度は高め。
経験値を積んでレベルアップしたら挑戦してみたい…無理?
モスバーガー 屋久島安房店 [
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屋久島にはマクドナルドや、全国チェーンのコンビニ、ファミレスはありません。
そんな中、何故かモスだけがありました。
モス派としては嬉しく、テイクアウトしてホテルでお食事。
eco hotel SORA [
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素泊まり専門の簡素なホテルですが、屋久島はこのスタイルで良いと思います。
木造で木の香りが心地良い宿でした。
2日目 … 3月3日(土)
縄文杉に挑むつもりで来た。
登山届も書いた。

しかし朝から雨で、午後は大雨の予報。
往復22km、所要約10時間のトレッキングコース。
激務でトレーニングが出来ず、山のド素人がソロで大雨って、果たしてそれは大丈夫なのだろうか?
考えた結果、今回は「縄文杉以外の要素」を楽しむことにしました。
そうすれば次回は単純明快な目標で挑める。
屋久島の再訪は既に決めているし、悪い決断ではない…と思う。
紀元杉 [
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標高1,200メートルに位置する紀元杉は、島で唯一の車窓から見られる屋久杉。
推定樹齢は約3,000年とのこと。
屋久杉の定義は、
島の標高500メートル以上に自生する杉のうち、樹齢が1,000年以上のものを指すそうです。
植物学的な屋久杉という種はない一方、他地域の杉との比較において、多数の特異性が見られるといった説もあります。
ヤクスギランド [
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午前7時前に到着すると、他に車はおらず人の姿も見当たりません。
子供向けの遊園地みたいな名称ですね。

でも中は紛れもない屋久島の森。
時間や体力に合わせてコースを選べるので、幅広い年齢層が楽しめる場所のようです。

例えばこの分岐で右側の下りを選ぶと…。
千年杉が現れました。

このまま登り坂を進むと、分岐前の左側通路と合流します。
やあ。

ヤクシカとの遭遇。
ランド内は30分、50分、80分、150分のコースが設定されています。

さらに派生して本格的な登山もありますが、150分コースを進むことにしました。
80分、150分コースに入った途端に狭い急階段。

どんどんと険しくなり、手も使わずには厳しい場所が頻繁に現れます。
川沿いは特に気持ちが良い。

朝が早かったため誰とも会わず、屋久島の森を独り占めです。
この後、諸々の事情により150分コースを断念し、80分コースに進みました。
簡単に言えば、雨で濡れた木の根で滑って転んだわけですが。
転んだのなんていつ以来だろう。
次はハイドラの名水CP「屋久島宮之浦岳流水」の検証です。

まず、auは電波なし。
docomoは受信可能との事前情報でしたが、SIMを挿したタブレットは圏外を表示しました。
以前から思っているのですが、MVNOって本家より性能が低くない?
⑬の案内板でこの位置関係。

ログで見るとこんな感じ。
上の案内板を見ると、⑧から⑬に抜ける点線の道があるので、たぶんそこが最短地点だと思います。
⑩の仏陀杉に到着すると、既にCPから離れた状態でした。

まあ、この距離なら大丈夫かな?
ハイドラを起動したまま、iPhoneの電源をオフにします。
確実に受信出来る場所まで戻ると、電源オンから下記の手順で無事に獲得成功。
[1] 前回正しく終了できませんでした。 走行再開を試みますか? → いいえ
[2] drive start!
[3] すでに走行中です。再スタートしますか? → はい
どうやら、[1] で
いいえを選ぶのが大事なようです。
圏外CP対策が確立して以来、今のところ失敗無しなのが本当に嬉しい。
下の写真は、ヤクスギランドから東に少し戻った場所。

ここは荒川分れで、閉ざされた門の奥には縄文杉に通ずる
荒川登山口があります。
ハイドラのダムCPもこの奥です。
今回最大の誤算は、欠航続きで3月になってしまったこと。
3月1日~11月末の期間、マイカーはここから先へ進めません。
バスかタクシーを使って登山口に行く必要があります…が、まあそれは再訪時のお話。
この日は、前日と反対周りに屋久島を一周することにしました。
千尋の滝 [
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千尋は「せんぴろ」と読みます。
どこかで聞いたような名前と思うかもしれませんが、実はそれで合っているそうです(後述)

滝の周辺全てが花崗岩の一枚岩。
屋久島の本体は巨大な岩そのもので、実に面積の7割が花崗岩なのだそうです。
土壌は堆積物によって形成されています。
再び西部林道を訪れました。

前日はヤクシカが多かったけど、この日はヤクザルが優勢。
車が近づいても、なかなか動いてくれないのが困りもの♪

今まで猿がカワイイと思った事はなかったけど、考えが変わってしまいました。
永田いなか浜 [
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日本一、そして世界でも有数のウミガメの産卵地。
5月から7月のシーズンには、1晩で平均70頭の上陸があるそうです。
この砂浜を散策中、急激に雨雲が空を覆うと、続けざまに熱帯雨林のスコールを思わせる豪雨。
縄文杉を諦めたのは正解だったかもしれない。
3日目 … 3月4日(日)
晴れ間は午前中のみ。
そして昼過ぎには帰りの船が出港します。
縄文杉は諦めたけど、ここは諦めません。

縄文杉と並ぶ人気のトレッキングコースに挑戦です。
白谷雲水峡 [
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宮之浦川の支流、白谷川の上流にある自然休養林。
標高620メートル地点からスタートします。
ここもヤクスギランドと同じく、複数のモデルコースが用意されています。
ルートを外れる危険性は殆どありませんが、ヤクスギランドよりも難易度は高めでした。
大岩を登り…。

徐々に険しくなる山道を登り…。
沢を渡って…。

杉をくぐり…。
ようやく白谷小屋との分岐地点に到着。

思ったよりも大変だけど、思ったほどは大変じゃない(どっちだよ)
変な感想ですが実際にそう感じていました。
立派な杉です。

直立の七本杉は、イメージしていた屋久杉の姿そのもの。
個性的な屋久杉には名称が付けられており、一般公募による命名も多数見受けられました。
ここまで来ると、最初の目的地まであと少しです。
苔むす森 [
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ジブリ映画「もののけ姫」のイメージソースになった場所。
宮﨑駿監督が何度も訪れたそうです。
屋久島とジブリの関係は深く、前述の「千尋の滝」は「千と千尋の神隠し」の名前の由来と言われています。
一面が緑色の神秘の森。

日本の約1,600種の苔のうち、屋久島には約600種が生育します。
この場所に限っては、曇りや軽めの霧の方が雰囲気が出るそうです。
…なにかいる!?

お約束の遊びをしてみました。
「こだま」はアマゾンで購入。
ただ、おそらくはライセンスを受けていない中国製で、製品名は
エイリアン(笑)
再出発後、いよいよ辻峠に到着。

右の道を下ると、楠川別れで縄文杉へのトロッコ道と合流。
左の道を登ると、旅の最終目的地です。

ただ、この最後の急坂が本当にキツイ。
僅か250mの距離なのに、モデルコースで約25分は伊達じゃなかったです。

あと5メートルなのに足がガクガク。
太鼓岩 [
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ついに太鼓岩に到着。
普段登山をしない人が、この景色を見ると人生観が変わるという。
その景色とは如何ほどのものか。

言葉では表現できない光景。
ただ、登山をする人達の気持ちが、ようやく少し理解出来た気がします。
標高約1,050メートル。
スタート地点との高低差約430メートル。
普段から登山をする人には楽勝であっても、自分としては相当頑張りました。
正面には九州最高峰の宮之浦岳。

眩い程の青空。
恐る恐る下を覗いてみる。

写真ではわかりにくいですが、落ちたら助からないほどの高さがあります。
これはなんだろう。

自分の影の周りに虹が架かってる。
下山後にネットで調べると、どうやら
ブロッケン現象のようです。
登山では稀によくあるらしい(どっちだよ)
登っている最中に心配だったのは下り。

実際に下ってみれば、案外なんとかなるものだとわかりました。
駐車場に戻ると観光バスやらでいっぱい。

出発して3時間強。
目安の4時間と比べて早かったのは、往路では誰も居らず、常に自分のペースで行けたからだと思います。
苔の生育からわかるように屋久島の森は高湿度。
夏場はサウナのようだと聞きます。
雪解け後の時期は人が少なく、虫やヤマビルも居ない狙い目なのかもしれません。
車で下山中、宮之浦港が見えました。

屋久島での時間もあと少し。
延長も考えたのですが、暫く雨続きの予報なので諦めて帰ります。
また欠航で、身動きが取れなくなるのが怖いのです…(欠航恐怖症)
ヤクサル達は、少し山に入ればどこにでも居ました。

餌を求めてくるわけでも、逃げるわけでもない。
人と野生動物の自然な距離感も、屋久島の魅力の一つだと思いました。
楠川温泉 [
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下山後はとにかく着替えがしたく、港から近くの温泉を訪れました。
評判通りの泉質のお湯を満喫。
地元の方の日常に溶け込んだような施設で、ちょっとした会話も楽しかったです。
フェリー屋久島2 [
公式]

食堂に浴室、ウミガメ水槽、イベントホールまである快適な船でした。
まさに「は○びすかす」とは対極。
いや、はいびす○すも面白い船でしたよ!(フォローになってない)
驚いたのは誘導された場所。

なんとスロープの途中に坂道駐車です。
しかも下船時にはバックでスロープを降りて、船尾のランプから上陸しました。
世の中にはいろんな船があるものです。
やがて時間となり宮之浦港を出港。

先程までの青空から一転、山は深い霧に包まれています。
ずっと憧れていた屋久島。
目的の完遂は叶いませんでしたが、次回への明確な目標が出来ました。
大阪の伊丹空港から直通便があるので、次は飛行機で訪れようと思います。
海上から眺める佐多岬。

続いて開聞岳が見えました。
まるで旅のダイジェストのような、粋なエンディングです。

この地方を訪れたのが遥か昔のような気がします。
鹿児島港に到着。

さあ帰ろう。
帰ってうどんを食べよう。
家まで750kmもあるのはたぶん気のせい。
有給をまとめて使った今回の旅。
3月21日から職場が変わりますが、心機一転で頑張ろうと思います。
とはいえ実情は面識ある仕事仲間に、仕事内容や仕事相手も殆ど変わらないという、実に気楽なものではあります。
初めて3分割にもなった「鹿児島の旅」ですが、これで終了となります。
最後まで読んで頂きありがとうございました。