
前編からの続きです。
モアンはネットの評判通りに良いホテルでした。
宿泊客なら深夜や早朝に温泉入り放題なのも嬉しい。
しかしこの日は朝から雨。
今回の旅における重要な一日で、状況に応じた2つのプランを組んでいるのですが、正直なところ雨だとお手上げです。
6日目 … 2023年8月16日(水)
雨に絶望していたドライブに光明が。

雨上がりと同時に見事な虹が現れました。
知床に着く頃には待望の青空です。
この日が潰れる=旅の失敗ぐらいの位置付けだったので、ホッとしたというのが正直な気持ちでした。

以前にどこかで書いた記憶がありますが、自分にとって特別感のある場所は屋久島と知床。
言葉や理屈ではなく、単純に魅かれる感覚をずっと持っています。
ただ残念なことに、予約していた知床遊覧船は、強風と高波のため前日に欠航の通知が届きました。
実際に凄い風なので仕方がありません。
必然的にプランBに移行。

テンション高めで目的地に向けて走ります。
念願の知床五湖。
2014年に長すぎる駐車場待ち時間で断念したこともあり、今回が9年越しのリベンジです。

高架木道であれば無料かつ安全ですが、見られるのは五湖のうち一湖のみ。
五湖全部を見るためには10分間のレクチャーを受け、立入認定証を受け取る必要があります。
この時の説明で驚いたのがヒグマの遭遇率。

ほぼ毎日で多い時は1日に数回、地上遊歩道から確認出来る距離でヒグマを目撃しているそうです。
さらに驚いたのがレクチャー終了後。
てっきりガイドの引率があるものだと思っていたら「気を付けていってらっしゃい」でした。

どうやら5月〜7月末までのヒグマ活動機はガイドツアーに参加という形で、それ以外の植生保護期だと自由に回れるようです。
参加者もまとまって動くのではなく、道中は完全にバラけて約3kmの遊歩道を歩きます。

世界一のヒグマ密集地である知床の森を丸腰ですよ。
しかし世界自然遺産で「最後の秘境」と呼ばれる知床に踏み込む貴重な機会。
五湖から順番にカウントダウンで進みます。

非日常が旅の醍醐味だと思っていますが、日常との乖離が大き過ぎて現実味が乏しく感じます。
なんか岩とか木とか、全部ヒグマのような気がする。

実際に見てみたい気持ちもなくはないのですが、やっぱり怖いものは怖い。
美しいと評判の三湖に到着。

確かにこれは美しいとしか言いようがない湖です。
三湖が人気というのも納得でした。
知床五湖で最も大きいのが二湖。

巨大な壁のような雲が知床連山を覆っています。
最後の一湖に到着です。

あと少し…あと少しで生きて帰れるんだ。(死亡フラグ)
高架木道が見えた時の安心感。
緊張からの開放は、おそらく実際に歩いた人しかわからないと思います。

橋脚に電流を通しているためヒグマは登れないそうです。
原生林に囲まれた大自然の知床五湖。
高架木道だけでも素晴らしい景色を楽しめますが、地上遊歩道は唯一無二の体験と言っても過言ではないと思います。
ただしヒグマは本気で怖いです。だって絶対に近くに居るんだもん。
車に戻ると再出発。
知床峠に行こうか考えたのですが、あの雲では景観を望めそうにないため次を目指します。
天に続く道

28.1kmの直線道路。
北海道のスケールが極まってしまった眺めです。
日本一の直線道路である美唄市から滝川市までの29.2kmには及ばないものの、走って楽しいのは圧倒的にこちらだと思います。
特にこのスタート地点からの光景は圧巻としか言いようがありません。
次は2014年の旅で美しさに驚いた場所です。
時間も十分にあるし、素晴らしい景色を見ながら食事でも出来たら良いな。
美幌峠

これは酷い。
あの美しかった美幌峠が真っ白です。
一縷の望みで食事をしながら回復を待っていたら、嘲笑うかのように雨が降り始めました。
ホテルサンシャイン

この日のゴールは遠軽町のホテル。
充実感の反面、心身共に消耗を感じたため、早めの就寝で翌日に備えます。
明日はこの旅で最長となる約600kmの行程です。
予定通りであれば、ですが。
7日目 … 2023年8月17日(木)
北上を続ける台風7号と最接近する日。

2時間の前倒しで出発したものの、どう転ぶかは完全に天任せ。
決して無理はせず、状況次第で行程を大幅カットの覚悟でスタートしました。
しかし滝上町から西興部村へと走り、オホーツクラインに出る頃には予想外の青空です。

こうなると欲が出て来ます。
行ける所まで行くか。(←結局こうなる)
北見神威岬

もう一つの神威岬。
海側ではなく、道路を挟んだ山側に灯台があります。
ここに限っては霧が良い演出に感じました。
反対の海側は見通し良好。

強風という事もあり、少し移動したり、僅かな時間差だけでも大きく状況が変わっていました。
次の場所はすぐ近く。
そしてこの旅で楽しみにしていた場所の一つです。
猿払村道エサヌカ線

前も後ろも、あるのは真っ直ぐな道路のみ。
運転しながら不思議と笑いが込み上げてきます。

しかしですよ。
この世界は実は仮想現実という説もありますが、これは明らかにバグっていますね。
走っても景色が変わらない。

それはもうデータが飛んでいるとしか思えません。
過去に2回、近くまで来ていながら存在を知らなかった道。
SNSで情報の共有が盛んになり、遠く離れた地でこうした驚きと出会えるのは、本当に便利な時代になったと思います。
宗谷岬

日本最北端の宗谷岬です。
3回目の訪問ですが相変わらずの曇り空。
暴風警報下の2019年と比べたらこれでも天国ですが、どうも宗谷村とは相性が悪い。
嫌な予感しかしませんが次の場所を目指します。

スタート地点が近づいてきました。
これから走る白い道は、宗谷丘陵のフットパス(歩くことを楽しむための道)に、稚内の名産であるホタテの貝殻を砕いて、3kmに渡って敷き詰めてあるそうです。
白い道

何かが違う。
いや、むしろ全然違う。
青い空と緑の牧草地。
そして白い道を走る赤い車。
このために赤い車を買ったと言ったら過言でしかないですが、そんな写真を撮りたいと思っていたのは事実。

これではただ白っぽいダートを走っているだけではないか。
またしてもリベンジすべき場所が増えてしまいました。
とことん宗谷村とは相性が悪いようです。
開基百年記念塔

稚内市の中心部を過ぎると透き通った青空です。
なんでこうも極端なのかと愚痴りたくなりますが、せっかくなのでタワーに登ろうと思います。
稚内市宗谷地区に戸長役場が置かれたのが1879年。
この年を稚内市の開基とし、100年目にあたる1978年に建設されたそうです。
地上80mのタワーですが、稚内公園の丘陵上にあるため海抜だと250m。

地上高だけでも凄い高度感です。
眺めも素晴らしい。

広大な北海道を遥か彼方まで見渡せます。
急な思い付きだったけど、本当に来て良かった。
ガラスの汚れが少なく、写真が撮りやすかったのも高評価。
ノシャップ岬

岬というより漁港といった感じですが、利尻島と礼文島を望める夕日の名所。
「岬がアゴのように突き出たところ」というアイヌ語「ノッ・シャム」が語源だそうです。
余談ですが、撮影時は正午ジャストなのに時計がズレています。
特に短針が変な位置にあるので、次の訪問時には直っていることを期待して先に進みましょう。
オロロンライン

北海道の直線道路を語る上で絶対に欠かせない道です。
総延長約380kmのオロロンライン。
その中の稚内から天塩町へサロベツ原野を突き進む海岸線、
道道106号稚内天塩線の区間はまさに圧巻。
今回の旅はこれまでにも直線道路を走ってきましたが、やはり王者の貫禄すら感じます。
あれ、そういえば台風はどうなった?

時間的にも場所的にも、ちょうど真西ぐらいの位置で温帯低気圧に変わったようです。
出発前から悩まされ続けた台風6号と7号。
大きな影響がなかったのは、ただ運が良かったとしか言いようがありません。
オトンルイ風力発電所の風車群にて撮影。

この日のゴールは名寄市のホテル。
久しぶりに走りきった感のある一日でした。
8日目 … 2023年8月18日(金)
ホテルマイステイズ名寄から雨の最終日をスタート。

リーズナブルながら満足度の高いホテルでした。
それはそうと北海道での6日間、全ての日が曇りか雨のスタートというのは何気に凄いと思います。
少しも嬉しくはありませんが。
この最終日は複数のルートを用意していました。
1つは初日の美瑛・富良野で天気が悪かった場合の予備日ですが、これは不要になったのでキャンセル。
ではどうするかですが、実はここまでの旅で答えが出ています。
旅の道中でキタキツネ、エゾシカは何回も会えました。
焦点はヒグマが見れるかどうか。
その結果として「見れなかったら動物園」プランに決定です。
旭山動物園

北海道旅行の定番スポットに初訪問。
自然に近い環境を作り上げ、動物本来の生態や動きを生かした「行動展示」が魅力の動物園だそうです。
お目当てのエゾヒグマがいました。

メスのヒグマで名前は「とんこ」だそうです。
詳しくは書きませんが、とんこには悲しい過去があると知りました。
人からするとクマは恐怖の対象でしかないですが、クマからしても人間は恐怖。
あまりにも難しい問題ですが、どちらにとっても悲しい事が起きないよう願うばかりです。
次は気持ち良さそうに泳ぐホッキョクグマですが。

すごい勢いで水槽に突進&クマパンチ!
突然のことで驚きましたが、何が気に入らなかったんだろうか。
お客さんの持つぬいぐるみに興味津々。

ほのぼのしたひととき。
この日は気温が29℃まで上がり、北海道に来て初めて暑さを感じました。

園内の木にシマエナガが遊びに来ることがあるそうですが、やっぱり冬じゃないと無理なのかな。
北海道にのみ生息する、雪の妖精とも呼ばれるシマエナガ。
いつか実際に会ってみたいです。
というわけで、次回は
真冬の北海道一周の旅に決定しました。(え?)
道の駅石狩 あいろーど厚田

2018年開業後、半年で55万人もの来場者を記録した人気の道の駅だそうです。
3階建てのモダンな建物で、最上階には日本海を一望出来る展望台がありました。
実際に施設内を歩いてみると、なるほど人気なのも納得です。
でも、ここに来た最大の目的はこちら。

2014年の初上陸から実に9年。
もっと嬉しいかと思いきや、終わってしまった寂しさも感じます。
白い恋人パーク

今回もお土産は定番中の定番。
仕事関連だけで54個入を2つも購入しました。
旅行に行くなんて言わなければ良かったけど、こうなったからには値段分のマウントを取ろうと固く決意。
最後に向かったのは藻岩山です。

観光道路を走って中腹駅に到着。
次はミニケーブルカーに乗って山頂を目指します。
藻岩山 山頂展望台

北海道3回目にしてやっとの訪問ですが、パノラマ状の素晴らしい眺めです。
日本最北の政令指定都市である札幌市。
さすがに大きな都市だと感じました。
ただ、これで見納めだと思うと本当に切ない。
そして不本意ながら小樽フェリーターミナルに到着。
ドナドナの仔牛の心境がわかった気がします。

船は往路と同じあかしあで、ステートBの同じ部屋番号を予約済み。
ついに市場に向けて荷馬車がゴトゴト発進。

本当に終わってしまいました。
さようなら、そしてありがとう北海道。
9日目 … 2023年8月19日(土)

目が覚めると佐渡島沖を航行中のようです。
撮影した写真を確認してはため息。
これが燃え尽き症候群だろうか。
夕日撮影タイムの場所取りにも敗北。

現在は能登半島沖を航行中らしい。
というか暑いんですけど。
暑いというか蒸し暑くて不快極まりない。
なんなんだこれは。
北海道移住を真剣に検討しようと思います。
おしまい。