さて、
先月に引き続き、
モータージャーナリスト町山絢香さん主催の企画、
第3回 わたしの五選「年代別トヨタ車編」をお送りします。
一応70年代から現代までの「年代別」にまとめることになってるんですが、ご存知のようにトヨタ車って年代をまたがっている車両が多くて、気がついてみると町山さん提示の「特別ルール」適用しまくりのセレクションになりました(^^ゞ
後述しますが、自分自身もトヨタディーラーの一つである
「トヨペット店」で6年メカやっていたこともあって、販売・技術両面から接する機会が多く、そのぶん思い入れも深い車が多いということがその理由です。
故に、登場する車種の取り扱いディーラーに少々偏りがありますが…
あくまでも仕様です(笑)。
1.コロナ(1970年代~1990年代)
今、務めている会社は通学路沿いにあるようで、毎朝幼稚園児から大学生まで様々な児童・生徒・学生たちが通りすぎていく。
その光景を見ていて、時々ふと思うことがある。
「もし、今の子供たちに画用紙とクレヨンを持たせて車の絵を描かせたら、どんなのを描くんだろうか?」
おそらく、1.5BOXのミニバンが圧倒的になるんだろうが、自分のその頃を考えると、教科書通りな3BOXのセダンを書いていたはずである。
クラウンに次ぐ息の長いブランドとなったコロナも、一部モデルで5ドア車があったものの、終始一貫3BOXセダンというスタイルを貫いた車であったが、我が家の家族の一員であり、一番最初に覚えた車の名前でもあり、その後の自分の人生に大きく影響する車になったのは、何を隠そうこのコロナという車だ。
物心ついた辺りに既にあったのは、親父殿が新車で買ったTT100型。このころに、弟が生まれた。
その後「最後のFRコロナ」となったAT140に乗り換え、私が免許取得後初めてハンドルを握ったMT車であり、初めて事故起こしたのはFF化されて2代目に当たり、同時デビューとなったハイメカツインカム第3弾「4S-Fi」搭載の前期ST170であった。
車検取ってまもなく、私の不注意でオフセット衝突の自損事故により一発廃車となったため、数カ月は口も聞いてもらえなかった事を今でも覚えている。
そして2年後にトヨペット店にメカニックとして入社。その頃に買わせたのが、単独でコロナを名乗った最後のモデルとなった190系の4WDモデルであった、3S-FE搭載の4WDモデル「後期ST195EXサルーン」であった。
そんな親父殿はST195を10年所有した後、コロナの名を引き継いだプレミオ(ZZT245)に今乗っている。
実は、弟が生まれた頃に乗っていた100系コロナと、その弟が結婚し、初孫が生まれた現在所有しているプレミオのボディカラーは、偶然にも同じ「シルバーメタリック」だったりする。
つまり、私だけではなく身内にも深く影響し、私自身も、コロナがなければ今整備士として生きていなかったかもしれないのだが、その割に自分自身はST150を半年だけ所有しただけだったりもする。
しかしながら、思い入れが深く、それだけでかなりの量の文章が書けてしまう車なのだ。
2.MR2(1980年代~2000年代)
トヨタ車の特徴の一つに、「既存コンポーネンツの活用」というのがある。
所謂「兄弟車」とか「〇〇ファミリー」と呼ばれる車が多いということなんだが、何もこれは車両開発だけではなく、パーツ単位にも及んでいる。
その理由は単純に「共通化によるコスト削減と生産効率の向上」であり、これによって、それまで高嶺の花であったシステムを使った車を、安価で提供できるのだ。
かつて、フォードがT型で実施した「ライン作業」によってコスト削減と低価格化を実現したのと、同じ理屈だ。
実例を挙げると、レビン・トレノ、カリーナ、セリカに搭載された「2T-G」というエンジンにしても、既存のOHVエンジンであった「2T」型をベースに、ヤマハによってDOHCヘッドを与えられて誕生したものであり、その後国産初のDOHCターボ「3T-GTEU」へ発展することになる。
ところで、MR2という車もこの特徴を遺憾なく発揮された結果誕生したというと、驚くだろうか?
1983年の東京モーターショーにて参考出品され、フジミ模型から1/24スケールでプラモデル化もされた「SV-3」そのままに登場した初代モデルのベースは、当時FF化されて間もないE80系カローラなのだ。
更に、1989年にデビューした2代目SW20のベースに起用されたのがST180系セリカ。しかし、その型式が示すように、源流をたどっていくと、驚くなかれT170系コロナにたどり着くことができるのだ!
ここであえて口汚い言い方をさせていただくと、FF車の鼻先をぶった切り、リアシート取っ払って鼻先をくっつけてできたのがMR2ということになる(うわっ、週明けに会社のオイラの席がなくなってたらどーしよ(^^ゞ)。
しかし、これによって、それまで高価な名だたる外国製スポーツカーのみに許されてきた「ミドシップ+リアドライブ」レイアウトが、自分の手に届く範囲まで降りてくることとなった。しかも、信頼性においては抜群の国産車で。
こうして、腕に覚えのあるドライバーの選択肢に付け加えることになり、モータースポーツ界にも少なからず影響をおよぼすことになる。
実は、今の会社の社長もSW20と出会い、90年代に地元のジムカーナ選手権を皮切りに多数のタイトルを獲得し、今も事務所とショールームには沢山のトロフィーと表彰状がところ狭しと並んでいる。
加えて、ショールームの一角には、社名ステッカーが貼られた真っ赤なSW20の写真が、誇らしげに額に収められ飾ってある。
そのせいか、お客様もSW20乗りが多く、私も接する機会が多くなってきている。
ちなみに下の動画は、その社長がドライブするSW20で氷上トライアルに出走した時のオンボード映像である。
3.コルサ(ターセル・カローラII含む)(1980年代)
今やスターレットと共にヴィッツファミリーに吸収されてしまい、その姿形を見ることが叶わなくなってしまったが、何を隠そうトヨタ初のFF車がターセルとコルサなのだ。
これまでにあまたの「世界初・日本初」があった割には、新しい技術にはすぐ食いつかないというのがトヨタの特徴でもある。
日産から始まったターボ攻勢にあっても、頑なにDOHC・NAで勝負に挑んだ80年代のモータリングシーンをご記憶の方も多いと思いが、既にスバルや日産チェリーで登場していたFF車もトヨタでは例外でなく、後にFF化されるカローラやコロナ・カリーナにしてもFFとFRの併売となり、この車の他にFF単独でラインアップしたのがV10系カムリ・ビスタだけであった。
さて、ターセル・コルサに話を戻すと、当時一番厳しい排ガス規制と言われ、その後10数年に渡り続いた「昭和53年排気ガス規制」が始まった1978年に登場したこの車には、ひとつの特徴がある。
それはエンジン・ミッションが縦置きであったことだ。
当時はまだFRレイアウトが主流であり、それらからの流用で作られたからなのだが、先述のように既存コンポーネンツの活用という特徴を遺憾なく発揮した結果でもある。
このため、ミッションの内部構造が「2階建て」という特殊な構造となったのだが、これによって4WD化が容易となり、その結果初代のスプリンターカリブを生むことになり、後にセダンにも4WD車が設定となった。
更に、意外に思えたことがある。後にトヨタ・ライトウェイトスポーツの屋台骨を支えることになる「4A-G」を生んだ「トヨタA型エンジン」の初号機である「1A」が搭載されたのが初代L10系なのだ。
てっきり70系カローラが最初だと思っていたのだが…。
その後、当時のP70系スターレットがベースとなったことから、L30系でごく普通の横置きレイアウトになったのだが、これ以降最終型となるL50系までスターレットとの蜜月関係が続くことになる。
確かに、30系以降には「スーパーカブかこのエンジンか」と言わしめた、燃費番長のターボディーゼル「1N-T」が存在したとは言え、全般的にどうにも中途半端感が否めなかったのも事実ではある。
個人的には「EP82・91ターボを1.5L化するぐらいなら、これのL40・50系をベースにした方が安上がり」なような気が、どうしても払拭できずにいる。
4.ソアラ(1980年代~1990年代)
それまで両立し得ないと思われていた「高性能車+高級車」というジャンルを、一代で創り上げ、確立させたのがソアラである。
この車もMR2と同じで、1983年に大阪でのモーターショウで参考出品された「EX-8」という車を市販化したという生い立ちを持つ車であるが、当時の税制度の関係で車体サイズが5ナンバーサイズとなり、販売も2.0Lが主体で、最上級の5M-Gと後に登場する6M-G搭載車を手にできるのは、ごく限られた人だけであったように思う。
故に、初代で個人的に印象深いのは、マイナーチェンジで登場した1G-G搭載の2.0GTのスーパーホワイトだったりする。
ソアラって、実はトヨタ店とトヨペット店の併売車種であったのだが、意外とソアラに関わった機会というのは片手で十分に足りる程度であったりする。
私がトヨペット店に居た頃、主流がZ20系からZ30系へ移る過程の頃であったが、身近にソアラがあったといえば、先輩が乗っていたGZ20ツインターボが2台、同期入社の奴が乗っていたMZ21。そして、参事が乗っていたZ30系の3.0GTぐらいなものだった。
そういえば、車検で入庫したMZ11の2.8GTエクストラの作業をしていて、ドアを開けるとスピークモニターが「ドアヲオタシカメクダサイ」と話しかけてきた時に、ものすごく感動したのを鮮明に覚えている。
尤も、140系コロナのEXサルーンADにも装備されていたものだし、その音声もいかにも「機械音声」という代物であったが、近未来感を演出するには充分なものであった。
今の自分には、あまりにも不釣り合いな車に思えるようになってきたが、数々の先進装備を見にまとい、世の車好きに夢を与えたこの車のようなのは、もう2度とでてこない様な気もしている。
ちなみに、下の動画はかつて在庫していた販売車のMZ21GTリミテッド・エアサス仕様の紹介映像。
うちの社長と事務員さんが解説してます(^^ゞ
5.サクシード(現行NCP5#系、NLP5#系)
実を言うと、トヨタの現行ラインアップにおいて「欲しい!」と思えるのがこのサクシードと、兄弟車のプロボックスしか無い。
あまりにも増殖してしまったヴィッツファミリーにおいて、唯一の2BOXステーションワゴンであり商用バンである。
端的に両者の違いを挙げると、その成り立ちにある。
プロボックスは、それまでのカローラ・スプリンターバンの後継として生まれ、これが基本となる。
これに比べ、全高を同じとし、全長・全幅を拡大したのがサクシードということになるのだが、これはそれまでのコロナ・カリーナ・カルディナバンの後継としたためであり、更にサクシードを取り扱うトヨタ店に於いては、クラウンバンの後継というポジションも担っているのだ。
よく「違いがわからない」という話を聞くが、よく見比べてみるとこれだけの違いが出てくる。
しかも、一時期、かつ、バンのみであるが、ヴィッツファミリーの国内販売において唯一のディーゼルエンジン搭載車でもあったりするのだ。
ここ北海道はとにかく土地が広いため、一回の移動距離が本州のそれと比べ長距離になる。しかも、ディーゼル車の排ガス規制関係が一切関係ない土地ということもあって、一時期ディーゼル車が爆発的に売れた時期があった。
何せ当時、カローラバンやコロナバンのガソリン車に乗ってガソリンスタンドに行くと、何故か軽油の給油機に誘導されたり、酷い時には誤給油されたという話をしつこいぐらいに聞いたぐらいなのだ。
その後、100系カローラ・スプリンターバンと、190系カルディナバンにディーゼル4WDが設定になると、MTしか設定されていないにもかかわらず、一気に代替が進むことになったのだが、その頃から商用車にもATへの需要が高まり、当時マッチングが良くなかったらしく設定されなかった「2C、3C型NAディーゼル+4WDのAT」が実現せず、その代わりワゴンと同じ4A-FE,3S-FE搭載のバンが登場する運びとなった。
余談だが、カルディナバンの3S-FE搭載車(ST198V)は、モデルチェンジ寸前の1年間しか販売されなかったため、極めてレアな存在である。
翻ってプロ・サクの場合、4WDはガソリン車のみで、バンのみではあるがミッションもMT/AT併売となったが、圧倒的にATのほうが流通する結果となっている。
もし、直噴ディーゼルターボである「1ND-TV」搭載車に4WDのAT仕様があったなら、北海道では爆発的に売れていたかもしれない。
…オートメカニック誌の企画で「サクシード4WDのディーゼル化」をハリー山崎氏が実現しているので、不可能ではないと思うのだが。
さて、この車そのものも非常に出来がいい。
商用車とは言え、そのメーカーの車種には変わりなく、乗用車モデル販売へのシナジー効果も期待できることから、各メーカーとも並々ならぬ力を入れているというのが実情だったりする。
事実、この車もとにかく実用に徹したクルマづくりが車両各部に見て取れるのだ。
リアラゲッジの積載性はさることながら、取り回しがよく車両感覚がつかみやすい上に、立体駐車場にも気兼ねなく入れるボディサイズに、疲れにくさと使いやすさを両立した室内。
しかも、同じエンジンを搭載するヴィッツファミリーより軽い車重からくる軽快な走りと、とにかくツボな部分が多いのがこの車の特徴である。
しかも、商用車では省略されがちなABSまで全車標準装備である点も見逃せない。
こうした点からなのか、未だに中古車相場が高騰気味なのがネックではあるが、毎年車検からくる維持費の安さもあり、現在次期車両の有力候補の一台でもある。
プロサクどっちでもOKではあるが、どちらかと言うとサクシードが優勢かな。
…尤も、諸々の事情で町山さんが不満点に挙げてたAT仕様になりますが(^^ゞ
さて、長文のお付き合いありがとうございましたm(__)m
やはり、何かしら関わった機会が多いメーカーの車って、それぞれに思い入れが深くて、いざまとめるとなると結構苦労しますな(^^ゞ
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【元】車屋のへっぽこ整備士、かく語りき | 日記
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2011/10/15 18:03:56