「ハーレーで、しかも、スポーツスターではなく“ビッグ・ツイン”で、峠も首都高もコーナーを楽しみたい・・攻めてみたい。並居る競合他社製のバイク達にコーナリングでも負けたくない・・・。」そんなコンセプトで仕上げた異色のFXD-ダイナスーパーグライドです。
「ハーレーでそんな事をする必要ないでしょ?」「そういうバイクではないでしょ。(笑)」「もっと他のバイクがあるでしょうに。・・」そんな声が聞こえてきそうですが、「だからこそ造りたかった」のです。
今でこそ「バガーレース」など、ハーレーのソフテイル系ビッグツインのレースが流行りつつありますが、このバイクを手に入れた当時は、せいぜいダートトラッカー系のスポーツスターか、ドラッグレース系のビッグツインくらいしか「スポーツ系ハーレー」はなかったのです。
現在に於いても、はたしてどれくらいのハーレーがこのようなチューニング&カスタムをしているかは分かりませんが、少なくとも私自身では今までに「遭遇した事」はありません。
そもそも「バイク」と「車」は正反対の性質を持っており、時速0km/hでは横に倒れるのがバイクで一番安定しているのが車であるところ、速度を出せば出すほど安定するのがバイクで、不安定になって行くのが車という「相反」する特性が正に“北極と南極”ほど異なると言えます。
慣性モーメントの話をしだすとややこしくなるので割愛しますが、これら「バイク特有の動き」の中でのコーナリングは、車での踏ん張り方とも全く異なる「体全体を使った荷重移動」が必要で「これこそがバイク最大の魅力」であり「楽しさ・醍醐味」であると常々感じておりました。
ハーレーダビッドソンというバイクは、直線でドコドコと鼓動を感じながらゆっくり走るのは世界一楽しいと感じさせてくれるものの、「コーナリングではバンク角が浅くてすぐにマフラーやステップを擦ってしまう」という何とも残念な一面がありました。
それに加えて非常に重く、ブレーキやサスペンションの造りも「それなり」の物しか付いておらず、国産大型バイクも経験してきた自分にとっては中途半端なキャラクターで「目の敵」となる様な存在でした。
しかしながら、幼い頃から映画やCMで目にした「世界一有名なバイク」でもあり「バイクの王様」感が漂う雰囲気と“ネームバリュー”には心のどこかで「憧れ」を抱いていたのだと思います。
そこで、ツインスパークでリザーブタンク付き調整式サスペンションが装着されたXL1200Sスポーツスターを手に入れたのですが、さすがダートトラッカー出身であるだけに右と左が全くの非対称で、ダートトラックの左回りの事しか考えて作られていないかの様な造りに驚きました。
ニーグリップバーを入れて右回りにも対応しやすい様にしたり、フリスコステップを入れてさらにバンク角をつけられる様にと色々な手法でカスタムやチューニングを施し、そこそこの出来栄えまで仕上げたのですが、高速域でのリジットマウントの振動には耐え難いものがあり、目線すらブレるかの様な強烈さに段々と限界を感じ、心が離れつつあったのです。
まだ私の心が刺々しかったのか、極め付けには「ビッグツイン」に乗るハーレー乗りの方々達からは、どことなく「スポーツスターはハーレー乗りの入門編だろ」的な雰囲気で接してくる人も少なくはなく、「コーナリングで鈍足であるのに上から目線で話をされている」感に苛々をつのらせていました。
挙げ句の果てには、週末深夜の首都高で国産空冷四発乗りに前へ行かれ、ステップから立ち上がりお尻をシートから持ち上げて“フリフリ”して煽られるなど、いい加減にもう我慢の限界に達したのです。
「オールラウンドで“世界一速い”、“世界一楽しい”ハーレーダビッドソンを造りたい。・・」そんな強い思いだけが先行して行きました。・・
正直に言うと、スポーツスターを買う時でさえ、本心から一番最初に欲しかったモデルは「ダイナグライド」でした。その中でも、リザーブタンク付きでは無かったものの最初から減衰力調整式サスペンションが純正で奢られている「FXDX」というモデルでした。
その頃の自分には到底予算が許される物ではなく「高嶺の花」であったのです。
やはり、その様な「心のシコリ」がある限りは、本当に自分自身を騙し切る事は出来ないものです。気が付けばバイクの販売サイトを幾度もチェックする様になり、とある一台のバイクに目が止まりました。
それはFXDXよりも安いベースとなる『FXD』であるものの、「目を見張る様なスペシャルパーツ」が奢られた「“未完成”」の車両であったのです。新車から慣らし運転すら終わっていないにも関わらず、勇気のある人がいるものだと感じましたが、その金額も『目が飛び出る程高い』ものでした。
新車の車が買える様な金額であり、到底、自分が買えるような“シロモノ”ではありませんでした。さらには「未完成」という中途半端な状態です。とは言え「理想のハーレーを造るには最高のベース車両」だと感じたのです。
来る日も来る日も「車とバイク2台を売って貯金を足せば買えるかな・・。」ですとか、眠れない夜を過ごしました。その車両のあるロケーションも非常に遠く、新幹線で行くにしろ、バイクや車で行くにしろ、高額な交通費が掛かる事にすら躊躇してしまう自分に買えるはずも無く、いつの間にかサイトから消えてしまったのです。
それから悶々とする日々が始まり、また数年が経過し、ラーメンを食べた後にスポーツスターのハンドルロックを掛けたまま走り出してしまい「思いっきりスッ転ぶ」ところまで“心が離れて”しまいました。幸い1速で転んだので大事に至らず綺麗に直してあげましたが、それと同時に「明確な覚悟」が生まれました。
「もう迷わない」と、再度バイク販売サイトのサージングを再開したのです。すると、なんとまたあの「“未完成のFXD”」が出ているではないですか・・。しかも、今度は近隣に姉妹店のあるショップから出ていたのです。
すぐさま近隣のショップの方へと連絡を入れて、「その姉妹店からこっちへ持って来て見せて頂くことは可能ですか?」と伺い、可能だという事でお願いしたのです。
その時の私は、スピード違反で3回も捕まり「免許取消し対象」から、何とか社会奉仕活動のボランティアで老人ホームの手伝いをして「免許停止180日」になり、短縮講習を受けて「免許停止90日」の真っ最中でした。
近隣とは言え、交通費すらも節約する為に自転車で2時間掛けて股擦れを起こしながら見に行ったものです。もう心は決まっておりましたが、一生懸命「買うかどうか迷うフリ」をして役者さながらの演技で、まだ取り付けられていないパーツと未完成のFXDを目の前に価格交渉をしたのです。
前オーナーさんは「彫り師」の方で、ムーンアイズ主催の「クールブレイカー」というハーレーダビッドソンのカスカムショーに出展する為に造り始めたのだそうですが、志半ばで心が折れてしまったというのです。
「未完成の状態」である事がこちら側としては最大の交渉の『武器』でしたので、「値引きしてくれとは言いませんので、その代わり、スポーツスターの純正パーツも全てお付けするので下取り価格を“高取り”してくれませんか?」という条件で了承を頂き、話を成立させたのです。
その当時、「非常に恐ろしい地元の先輩が乗っていた“カワサキKDX250SR”」という2ストロークのモトクロスバイクへの憧れで、”最終型の非常に程度の良い物”も持っており、それも併せて売る決断をして何とかお金をかき集めました。
この「カワサキ2ストロークKDX250SR最終F4型」は、生産中止と2ストロークの生産禁止という世の中の情勢と相まって希少価値がつき始めており、欲しいという人はスポーツスターよりも“引く手あまた”で、近所のバイク屋さんの社長がBMW850CSiを乗り付けて夜遅くに買いに来ました。
「これは強気で売れるぞ!」と意気込んだ事は勿論の事、ほぼ買った金額で売れたのも思い出深い出来事です。
・・・しかし、「手に入れてからが本当の“苦労の連続”」となりました。・・・
このFXDにはドラッグレース用のヘッドやシリンダーが奢られており、圧縮比が「13.1:1」という『レーシングスペックを誇る1650cc』で、少しでもバッテリーが弱いと“全くセルモーターが回らなくなる”のです。
その為、毎回「祈りを捧げて」からセルモーターのスイッチに指を掛ける始末でした。“ロードサービス常連バイク”となり、泊まりで行く遠くへのツーリング等での次の朝は非常に憂鬱になるのです。
「エンジンが掛からないという事態」は、一緒に行くツーリング仲間等への迷惑にもなるということで、『ハイトルクスターター』の導入もしましたが、今度は勢いよく回るもののミスファイヤーで「プラグが湿気ってしまい」エンジンが掛からなくなるという状況に見舞われたのです。
仕方がないので、分厚いメタルのシリンダーガスケットを製作して、シリンダーそのものの位置関係を持ち上げて圧縮比を落とそうと(11.5:1)まで下げる事に成功しましたが、それでもクランキング中に「パンパン!」とバックファイヤーやクシャミをしているうちにプラグが湿り、ハイトルクスターターは電力消費が激しくてバッテリーを弱らせてしまい上手くいかなかったのです。
なんとか「キャブレターのセッティング」で誤魔化し誤魔化し乗り続けておりましたが、1〜2週間経過してキャブに残っていたガソリンがエアクリーナーから気化して少し引くと、また、ガソリンをスロットルで送りながらクランキング中にミスファイヤーやバッテリー弱りでエンジンが掛からなくなるという「悪魔のようなバイク」でした。
とは言え、一度エンジンが掛かってしまえばこちらのもので、走り出せば調子も良く、信号待ちから勢いよく回転を煽って一気にクラッチミートをすればホイールスピンをしながら発信する程パワーもあり、何とも言えないスリルを味わう事も出来ておりました。
その為、エンジンの振動を和らげるためのラバーマウントもあまり効果を発揮していないかの如くの強烈さがあり、チェーンドライブ化しているものの、ギヤ比も低速よりの大きな物で直ぐに回転が頭打ちとなるので、「6速化してスプロケットをもう少し最高速寄りの小さな物にしたいなぁ・・。」と思うようになっていったのです。
そこで、軽量で歯数の少ないスプロケット、モトGPで使用される軽量で強靭なチェーンとモトクロス用のチェーンスライダー、アメリカより6速トランスミッションを取り寄せて組み込み、スピードメーターカウンターギアを調整しました。
それと同時に、スクリーミンイーグルからリリースされているデコンプ穴(写真参照)を設けて挿入し、クランキング時の圧縮を抜くように細工を施して圧縮を13.1:1へと戻し、新品のエンジンラバーマウントへ交換しました。
リアショックも単筒式サンダンスクアンタムでは、まだ峠のタイトターンでマフラーを擦っていたので、CB1300用の複筒式オーリンズを本社へと送り、ハーレー用の最長のエンドアイに打ち替えてもらいヒップアップにしてセットしました。
強化されたトリプルツリーに収まる太いイタリア製セリアーニフロントフォークはオーバーホールして一番硬いカヤバ製オイルを注入し、さらに強化する為、ビューエル用NHKステアリングダンパーやGPZ900Rニンジャ用のスタビライザーを加工して取り付け、アレンネスのアンダーカウルでダウンフォースとコーナリングの安定性をも獲得するようにしたのです。
外装は全て「アルミでワンオフ」にて製作しており、倒したり転んだりしたらそこで“終了”です。タンク形状は上手くシリンダーヘッド上に空気を流し込む様に工夫し、溶接痕は全てパテで綺麗に修正し直してあります。
ビキニカウルは三菱マテリアルのものを加工して取り付けており、更に風圧を利用した安定感を得るためにカーボンのグリップガードを取り付け、「チタンマフラーをワンオフで製作」するなどして軽量化を図り、ようやくスポーツスターと同じくらいの軽いフィーリングを実現できる様になるなど現在進行形です。
「足のつま先がやっと地面に接地する程度の車高」であり、軽くなったとは言え、そこそこの角度が付くと強烈に重みを感じる『“確実に乗り手を選ぶ”』ような仕様となっておりますが、世界中のどんなバイクにもない興奮を与えてくれる存在です。
かろうじて「やっと最近になってまともに走るようになった」と言っても過言では無く、約18年間も所有し続けていて未だに走行距離が「10000km」程度という、どれだけ修正に時間が掛かっている車両かがお分かり頂けると思います。
書いても書いても書ききれないぐらいの「涙の連続」であり、正に「人生を賭けた執念」とも言えますが、キリが無くなってしまう為、今後、ブログやSNSで少しずつでもご披露できればと思います。
現在のプロジェクト車両の中で「1番長い付き合い」であるにも関わらず、未だに、またがった瞬間から言葉にできない独特な“緊張感”が走る「鉄馬」です。
これからも進化を続けて行くであろうとは思いつつも「これに乗り続ける自信を失った時、私の人生も終焉を迎えるであろう・・。」という考えすらもよぎる、感慨深い想いにさせてくれるバイクです。
*チューニング&アップグレード
↓
アクステルシリンダーヘッド&JIMS Big ボアシリンダー
スクリーミンイーグルデコンプキット
ナイトプロウラ630カムシャフト
鍛造ハイコンプピストン&コンロッド
K&P低抵抗メッシュオイルフィルター&ビレットアルミケース
ビレットオイルカバー&フィラーキャップレベルゲージ
クロームハイトルクスターターモーター
USミクニビッグキャブレター&K&Nパワーフィルター
ワンオフエアクリーナーカバー
リンカーンコンパスエンブレム
汎用大容量オイルクーラー&アールズフィッティングホース&ワンオフステー
ノロジーホットワイヤーアーシングプラグコード
トルクマスター360°スパークプラグ
ノロジーアーシングキット&ホットイナズマ
ショーライリチウムイオンバッテリー
HD純正オプションクロームバッテリーカバー
ワンオフ“FXDR”バッテリーカバーエンブレム
クロームスターサイドカバーエンブレム
ダイノテックイグニッションモジュール&ハイテンションコイル
ワンオフアルミフロントフェンダー&アルミタンク&シートカウル
HD純正バー&シールドタンクエンブレム
キジマ製ニーグリップタンクパッド
ワンオフパンチングレザーショットガンシート
ワンオフビレットミッドバックコントロールステップ
三菱マテリアルビキニカウル
アレンネスアンダーカウル
H4イエローLEDバルブ&ビレットウインカー
メーターパネルインジゲーター麦球&ウインカー&テールランプ全てLED化
ワンオフ1ピース2in2チタンマフラー
PMビレットスロットルホルダー&スイッチキット
PMビレットレバーキット
PM強化油圧クラッチキット
PM6ポッドブレーキキャリパー&2ピースローター前後トリプル
PMステンレスメッシュブレーキホース前後
スタージスビレットメッシュホイール前後
エイボンコブラAV72ハイパフォーマンスタイヤ
セリアーニトリプルツリー&強化フロントフォーク
クロームファイヤーパターンサイドミラー
ワンオフカーボンナックルディフューザー
Poshアルミハンドルクロスバー
真鍮ウエイトバーエンド
KYBフロントフォークオイル
NHKダンパー&デイトナダンパーブラケット
オーリンズ複筒式リアサスペンション
ワンオフロングサイドスタンド
軽量アルミスイングアーム
アファムA7075-T6軽量アルミスプロケット
MotoGP用DID超軽量チェーン
ワンオフチェーンスライダー
リアブレーキフローティングマウントキット
ワンオフフェンダーレスキット&ナンバープレートステー
チタンナンバープレートボルト
スパイボールセキュリティーシステム
ガーミンナビゲーションシステム
ハーレー純正本革ETCケース&ミツバETC2.0キット