外人女性のVitzが不調

以前、異音対処をしたことのあるVitzにお乗りで、近所のショップに来られた外人女性が、
「最近、排気ガスが臭く、またエンジンの振動が悪化してきた。」
という話しをコーヒータイムの折にされた。

このVitzには3気筒エンジンが搭載されており、クランク両端を互い違いに上下させる偶力が発生するので、独特の振動があるのは致し方ないが、振動の感じが以前と変わってきた上、激しくなったとのことだった。

3気筒エンジンは、クランクの回転で発生する1次成分と、コンロッドの傾きの変化によって発生する2次成分の振動があるが、それらは、正確に120度に区分したピストンの配列で、振動はかなり抑えられる。しかし、クランク軸の物理長による独特の振動は残る。このVitzは1次も2次の振動もあり、1気筒が機能不全に陥っている感じがした。

このエンジン、すでに11万km程を走行していて、１KR-FEに多いオイル消費が始まっていることは分かってはいた。プラグでも燻っているのかと思い、またシリンダー内の様子を見てみようと、＃１シリンダーのイグナイターを外してびっくり、オイルがどっぷりと溜まっていて、イグナイターもこってりと汚れていた。

これでは高圧リークが起き、ミスファイヤーしても不思議ではないし、変な振動も出るはずだ。また未燃焼ガスにより、排ガスが臭くなるのも頷ける。

他はこのとおりで、＃２シリンダーも僅かにオイルが侵入していたが、＃３シリンダーは大丈夫だった。プラグホールガスケットが若いシリンダー＃ほど劣化が進んでいる様子だが、これが部品要因なのか、設計要因なのかが気になるのは私の職業病ということにしておこう。

LS400/セルシオでも、プラグホールガスケットの劣化によって、ここにオイルの溜る事例がある。セルシオの場合、これを交換するには、アルミ製の枠を変形させる必要があるが、１KR-FEではバルブカバーを外すだけで簡単にできてしまった。

外したスパークプラグはこのとおりだった。左から右の順で＃１，＃２，＃３シリンダー用である。碍子は＃１が他の２つよりやや白く、逆に外側電極は黒っぽい。この意味するところは、ミスファイヤーにより、ガソリンベーパーが作用したということなのだろうか？

ピストンクラウン部にはカーボンデポジットがこのレベルで溜まっていて、シリンダーウォールに目を移すと、クロスハッチはよく分からず、縦方向の筋の方が見えて、これが気にはなった。

プラグホールガスケットはバルブカバーガスケットと一体型だと分かり、その交換は店長さんがされるとのことだったのでお任せした。

このVitzのオーナーさんは、県内外の複数の高校や企業で授業をお持ちで、この日は修理後、一番遠方にある高校まで高速道路を50km近く運転して行かねばならないとのことだった。その後、Lineにメッセージが入った。
「同じ車とは思えないくらい。よく走り、振動も気にならなくなった。まさに、Godsendね。」

と驚き、かつ、お喜びの様子だった。3気筒車がミスファイヤーして2気筒になり、しかも、不発の1気筒が負荷になっていた状態からすれば、大きな改善は当然であろう。ミスファイアーは完治したが、シリンダーウォールとピストンクラウン部については、距離を走り込んだ１KR-FEには付き物の問題ではあるようだ。ネットを見ても、例えば、これらのように。
https://www.yarisworld.com/forums/showpost.php?p=796833&postcount=9
https://www.pakwheels.com/forums/t/vitz-2013-engine-oil-burn-issue/1104917

(追記 ２０２１．６．１８ 21:30）
またメッセージがLine に入った。
It's a great improvement. My car has undergone a metamorphosis. It feels much smoother. Driving doesn't feel as tiring before. Thank you so much.
抄訳：凄く良くなったわ。私の車がさなぎから蝶に変身したかのように。とてもスムーズに走り、前みたいに運転疲れしない。とても感謝しています。

プラグホールの掃除とバルブカバーガスケットを交換しただけだが、ミスファイヤーが無くなったことで、undergone a metamorphosis という表現をされるくらい、大きな変化があったということで、喜ばれている様子が見えてくる。私のちょっとした手助けなのに、とても喜ばれることになってしまった。