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2020年06月17日

物語A206:「マクレン大佐の思惑」

喉が砂漠の熱砂のように干上がったアイゼン・ブル・マクレン大佐は、「マルケットベルト作戦」の主力部隊「丸太渡河部隊」の全村民兵と、その意思に関わらず途中参加した、もしくは「させられた」全村民兵がブル河岸へ上陸し終えると全身から疲れがどっと出てしまい、その場へ倒れる様に座り込んで一休みしたくなる。
しかし、部隊長である自らが兵達を前にして座り込むという弱味を曝け出す事はできなかった。
ましてやそれら兵の中には新米村民兵が多く混ざっているのである。
正規兵として、さらにその指揮官として、大佐のプライドがこれを許さなかった。
大佐とは、指揮官とは、常に新米村民兵の前では疲れを知らぬ歴戦の勇者でなければならないのだ。
しかし、やはり疲れきっている大佐なのである。

マクレン大佐の疲弊に身を捩って苦悩するその姿を、背後に半円形に配置して並べた床几に楽な姿勢で座り込んだ新米村民兵達がのんびりと眺めていた。
新米村民兵達は甘く冷たいジュースを入れたグラスを手にストローで冷たいドリンクを飲んだり、深みのある珈琲を片手にして香りに堪能しながら啜ったりして寛いでいる。
その中には大佐の尻を小突く為に準備した突き棒を持って、虎視眈々と狙っている新米村民兵もいた。

上陸した村民兵の数は大佐にとっても部下の下級将校達にとっても予想を遥かに超える多さである。
ブル河岸のどこを見回しても、足の踏み場も無い程に新米村民兵の姿で埋め尽くされていた。
さらに、新米村民兵達は「マルケットベルト作戦」遂行に必要な次のステップである「第1拠点、ワンワンセブン高地」への早駆け侵攻を行っていない。

理由は、分隊の隊長となって統率する筈であったアイゼン・ブル・マクレン大佐の部下である下級将校達が担当部隊が急に膨れ上がった事で部下達を掌握できず、また、どこにも所属していない新米村民兵達が目の前を勝手気ままにうろつき回っては部下を連れ回したりしているので、混乱の度合いが増してしまい統率出来ないでいるのである。
さらに、その増えた新米村民兵をどの部隊に所属させるかで、新米村民兵の良兵ねだりをする下級将校達の間で喧嘩になる程に揉めていた。

烏合の集団となっておいるこの新米村民兵達を早急にまとめ上げないと、新米村民兵達は勝手気ままにバラバラな行動をとり始めるのは目に見えていた。
マクレン大佐はこの新米村民兵の勝手気ままな行動が「マルケットベルト作戦」に大きな打撃を与えるのではと恐れた。
しかし、大佐が心配する割には内陸に向かって勝手気ままに進むといった行動をとる新米村民兵はこのブル河岸の何処にも居ない。
むしろブル河岸に近い砂浜や草地で小さな集団を作っており、その集団は時間が経つと共に数を増していた。
新米村民兵達は小さな集団に固まって上陸祝いのパーティの準備を粛々と進めているのだ。

ほとんどの新米村民兵は自ら率先して危険な内陸奥地に入ろうする心意気を全く持っておらず、この安全なブル河岸に居残って内地への進軍をやり過ごそうという魂胆で一杯であった。
この事は大佐にとって、また「マルケットベルト作戦」遂行にとっても幸運であったのかもしれない。
平時なれば、すでに新米村民兵達の大半はブル河岸を離れていたに違いないからである。
マクレン大佐はそのように推測すると少し安心したが、それにしてもその数には暫し目を見開いていた。

その大きく開かれたマクレン大佐の目の片隅には灯の付いた丸太小屋が映っている。
マクレン大佐にとってのもう一つの重大関心事である。
この小屋の中で暖炉を前にして安楽椅子に座りパイプを吹かしながら、グラスを傾けながらワインの芳醇な香りと舌を蕩かす美味を楽しみたいと大佐は思っている。
そして、架空の友を前にして「ワットン君。実に面白い事件だね。ふふふ」と含み笑いをしながら囁いてみたかった。
マクレン大佐は自分の欲望を必ず満足させるタイプである。

だが、その丸太小屋「モロ酒店」の内部では、初上陸したうえに強敵「ろろう三堅神」からこの丸太小屋を奪取した歴戦の強者サンタス軍曹が居座っている。
上陸の証で名誉ある立て看板「モロ海岸」をマクレン大佐によって無残にも引き抜かれ、上からの圧力に従わざる負えない自らの境遇に息の荒くなったサンタス軍曹が居座っていのである。
強敵であった。
I村歴6年物の幻の銘酒「泡立ち盛り」に酔い痴れ、足元に転がってあったスプレー缶を振り回しながら気炎を上げている軍曹。
その姿が窓に映り込み、マクレン大佐はそのスプレー缶攻撃を恐れて今ひと時の間は近寄れないでいた。
丸太小屋を奪還するにはあらゆる軍曹の防御トラップや攻撃に対して、充分に準備を整えたうえで、信頼できる部下で脇を固めて突入する必要がある。
もちろん、緻密な作戦が必要である。

しかし、その前にこの河岸の烏合の集団をまとめ上げてワンワンセブン高地に進撃させなければならない。
気炎を吐くサンタス軍曹制圧・本村への強制帰還を実行する事を一旦諦め、マクレン大佐は暖炉の前の安楽椅子を一時的に頭の片隅に格納して保留とした。

マクレン大佐は河岸に群れ、熱気に蒸れて、今にも爆発しかねない大勢の新米村民兵を前にして、想定外のあらゆる事態に備えて準備している数あるプランの中の「プランU」を頭の中から取り上げた。
「プランU」とは、簡単に一言でいうと「部隊を2分する」である。
上陸部隊の村民兵がかなりの確率で上陸したうえ、上陸兵の数が想定の数を超えた場合に処置するプランである。
しかし、その想定の中に河へ不時着してしまった航空部隊兵など上陸部隊以外の村民兵が加わり数が倍増する事までは考えていなかった。
しかし、この時点での「部隊を2分する」事を基本とするプランUの選択は適切である。

このプランUには様々な付帯事項が付いていた。「右上げて」「左下げて」「右上げないで下げて」と幾つもあるのだ。
その付帯事項の詳細内容はマクレン大佐の頭の中にしかない機密事項である。
それら付帯事項のうちで「上げ下げ」をマクレン大佐は採用した。
丸太部隊の半数以上の作戦行動を補佐役に全てを任せて先行させるのである。

マクレン大佐自らはその先行部隊をリモートコントロールして戦わせて勝利し、現場の労苦を顧みずに楽して栄光のみを得るつもりでいた。

リモートコントロールしやすい黒田大和猫ノ信大尉が脳中に浮かんでくる。
リモートコントロールの伝令役には「毬高雅(いがこうが)忍び隊」が必要であったが、その隊長である猿鳶伽椰子はナイナイメー辺地で黒猫と共に狂喜乱舞していて、ブル河岸には不在である。
副長である服部貞子はこの河岸にまだ居るが、置いて行かれた事にいじけてしまい、新米村民兵を怖がらせる事で自身の技の修練に夢中であった。
そこで、マクレン大佐は「毬高雅(いがこうが)忍び隊」の陰ノ円井賀を伝令役に抜粋し、手早く陰の軍団を組織させ、伝令の任務を命じた。

後陣に付くと決めたマクレン大佐にはもう一つの理由があった。マクレン大佐自身はこのブル河岸で欲望を成就するつもりである。
まず最初は最適な休憩場所である丸太小屋「モロ酒店」を急襲して奪回する必要があった。
そして、思う存分にそこで休んだ後、物見雄山でリモートコントロールした先行部隊の後を追うのである。

考えの固まったマクレン大佐の行動は早かった。
早速、黒田大尉をチュリチュリという餌でおびき寄せて、マクレン大佐は丸太部隊を二つに分けるように指示した。
部隊を任され、自由に行動が出来ると意気揚々と作業に入る黒田大尉の背中を見ながら、今度は懐の隠し剣である右河飛足軍医をチュリチュリでこっそりと呼び寄せ、丸太小屋「モロ酒店」の奪取とサンタス軍曹の処分方法の立案を指示した。

-- 灰色猫の大劇場 その14 ----------------
灰色猫が玉座に座っている。
放火兎が柱の影から玉座を狙っている。
玉座を前に陳情を申し出る・・・・が、玉座前には誰も居ない。
電気ウナギは王様である灰色猫に「・・・・・・」(無言)で、身を隠しながらジワリジワリと近づいている。

そして、導電性の玉座の足に静かに滑らかに絡みつく。
無言の放電。
灰色猫の体毛の全てが逆立ち、体が数メーターの高さまで飛び上がりる。
灰色猫は飛び跳ねながらどこかへ逃げ去っていった。
久しぶりの放電に電気ウナギは恍惚の表情をした。
「まだまだ、若いものには負けんよ」という顔つきである。

玉座を狙っていた放火兎が飛び跳ねて喜んだ。
そして、飛ぶが如くに玉座に向かい。
ゆっくりと座り心地の感触を楽しむかのようにゆっくりと座る。
もともと猫よりジャンプ力のある兎である。
しかし、それだからという理由では説明しきれない程に、兎は玉座から飛び跳ね灰色猫の後を追って去っていった。

玉座の足にはまだ恍惚の電気ウナギが絡んだままであった。

--続く
この物語はフィクションです。実在の人物、団体とは一切関係ありません。
この物語の著作権はFreedog(ブロガーネーム)にあります。
Copywright 2020 Freedog(blugger-Name)
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Posted at 2020/06/17 13:29:50

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