• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!
2016年11月04日

【70年代こぼれ話】レビン/トレノ、その最初の名前は……?

【70年代こぼれ話】レビン/トレノ、その最初の名前は……? 「トヨタをつくった技術者たち」という書は、トヨタで仕事をしてきたエンジニアがインタビューに答えて、社内での自分のキャリアを、時に個人史も交えながら語るという構成だ。インタビューをしているのは“後輩”に当たるトヨタのエンジニア諸氏で、そのため、専門用語や社内用語が説明されないままに飛び交うという特徴(欠点か?)はあるが、言い換えれば、登場する諸氏が率直な物言いに終始しているということでもある。また、トークによる社内史を作ろうという意図もあったはずで、歴史書としてもなかなか興味深い内容になっている。

今日はそんな中から、「カローラ・レビン/スプリンター・トレノ」の誕生と、そのネーミングをめぐるこぼれ話を紹介したい。語っているのは、本ブログにも既に登場いただいたカローラとターセルの主査、佐々木紫郎氏。初代カローラの主査・長谷川龍雄氏が役員に昇格したため、開発途中の二代目カローラの主査に佐々木氏が就任したのが1967年7月のことだが、このクルマを開発している時に浮上した企画が「レビン/トレノ」だった。

そのキッカケとなったのは、その頃シャシー設計担当で、後に初代セリカの主査になる久保地理介技師のひと言。彼はラリー・マニアで、山岳路を走るのが好きだったが、ある日佐々木主査に、「セリカ用に開発した2T-Gをカローラに載せませんか?」という「入れ知恵をしてくれた」(佐々木氏)のだ。「これはおもしろいぞ」と、佐々木主査は話に乗り、ハイパワー・カローラの企画がスタートする。

その車名を決める段になり、佐々木氏は取締役の長谷川氏に、「体育の日までに決めてください」と要請。これに対して程なくリプライがあり、長谷川氏から佐々木主査に一枚のメモが渡された。そこに書かれていた車名は、「カローラ鷲/スプリンター鷹」──。名付け親は、豊田英二社長(当時)。佐々木氏は、その頃「英二さんは『自動車の名前が英語ばかりでおもしろくない。日本語の名前を付けたい』という気持ちを持っていたようで」と語っている。

しかしこの時、佐々木氏は、内心「ウエッと思った」と告白する。上司の長谷川氏は、「体育の日までと言うから、決めてもらった。この車名が気にくわなければ、佐々木君が文句を言って来なさい」と言う。何といっても社長直々のジョブであり、「困ったなと思ったけど、決めてくれたものを『嫌です』とは言えない」(佐々木氏)。

とりあえず、クルマの販売を担当する「自販」側と相談するが、案の定、「日本語の名前では、まだ商売をしにくい、困る」という反応だった。しかし、そんな理由では断われないぞと話し合いつつ、まずは名前の登録ができるかどうかを特許部に調べてもらうことにする。

その結果、幸いにも(?)大阪の自転車屋が「ホーク」を登録していたことが判明。そこから、ホークは鷹に通ずる、「自転車も自動車も乗り物のジャンルだから駄目」という判断を下し、その後に、みんなで智恵を絞って考え出したのが「レビン」(雷の光り)と「トレノ」(雷の音)という二つの名前だった。このオリジナルの段階では「カローラ・トレノ、スプリンター・レビン」であったという。

後日、佐々木氏は、そのメモをポケットに入れて、恐る恐る社長のところへ行く。ちなみに、この時が英二社長との初対面だった。特許部の見解では「鷲と鷹」は登録がむずかしいと報告すると、「そうか、どうするんだ」と社長。佐々木主査は車名を書いてきたメモを提出。すると社長はそれを机の上に置き、さらに窓際で行ったり来たりしながら、しばらく考えていた。

そして、英二社長は椅子に座ると、名前を入れ替え、カローラ・レビン、スプリンター・トレノと書いて、「これに決めたとサインをしてくれた」(佐々木氏)。名前を入れ替えた理由として、「レビンは光りで、音よりも速い。速い方は兄貴分のカローラにやれ。スプリンターの方はトレノ」と英二社長は言った。

なるほど、クルマに日本語の名前……。さすが進取の精神、他社と違ったことをやろうという姿勢には注目だが、でも自販側が言ったように、1960~70年代の時点では、やはり和風の名前は時期尚早だったのではないか。「鷲/鷹」では、レビン/トレノほどには売れなかったと思う。まあ当時も「すばる」という日本語の車種名は、既にあったのだが。そういえば、いすゞがミッド・セダンに「アスカ」(飛鳥)という名を与えたのは1980年代だったか。また、カムリの語源は「冠」だといわれている

そして二輪の方の日本語名では、極めつけと“勘弁してくれ”のどっちの選手権も、私見ではスズキが持っている。卓抜な方では、やっぱり「カタナ」! そして一方、彼らは1950年代に、バイクならこれだ!という「コレダ」を二輪車の名前にしていた。さらに1990年代の「ワゴンであーる → ワゴンR」という展開も、スズキ的な傑作ネーミングのひとつであろうか。
ブログ一覧 | クルマ史探索file | 日記
Posted at 2016/11/04 17:19:37

イイね!0件



タグ

今、あなたにおすすめ

ブログ人気記事

そうだ!ドライブに行こう\(^o^ ...
変り者さん

静内20間道路桜並木&浦河優駿さく ...
s-k-m-tさん

✨スバル✨
.ξさん

今日は休日出勤 4/27
とも ucf31さん

雨のち曇り(今日は)
らんさまさん

雪壁2024㊗️開通 志賀草津道路 ...
まあちゃ55さん

この記事へのコメント

コメントはありません。

スペシャルブログ 自動車評論家&著名人の本音

プロフィール

「【 20世紀 J-Car select 】vol.14 スカイラインGT S-54 http://cvw.jp/b/2106389/39179052/
何シテル?   01/15 10:59
家村浩明です、どうぞよろしく。 クルマとその世界への関心から、いろいろ文章を書いてきました。 「クルマは多面体の鏡である」なんて、最初の本の前書きに...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2024/4 >>

 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930    

愛車一覧

スバル R1 スバル R1
スバル R1に乗っています。デビュー時から、これは21世紀の“テントウムシ”だと思ってい ...
ヘルプ利用規約サイトマップ

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!

あなたの愛車、今いくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離(km)
© LY Corporation