Hondaの純正アクセサリーを手掛けるホンダアクセスから2020年6月に発売された、S2000発売20周年記念アイテムの数々。
これらの開発の中心となったメンバーへのインタビュー、2回目は異例尽くしとなった企画発足から開発、商品化までの経緯について自らS2000オーナーでもあり、
自動車専門媒体で活躍するフリーランスライターの遠藤正賢さんが開発責任者の川村LPLに話を聞きました。
自らもS2000オーナーでもあり、今回のS2000プロジェクトのLPLを務めた川村朋貴(かわむらともき)さん。
遠藤 S2000オーナーでもあり生粋のS2000マニアでもある皆さんが今回、S2000の20周年企画を立ち上げたのは、どのような経緯があってのことなのでしょうか?
川村 私が企画したのですが、ホンダアクセスは過去にもNSXとビートの20周年のタイミングで、用品開発をしている経緯がありました。
先輩方がそういう取り組みをしているのを目の当たりにして、「自分もいつかそういう企画をしたい」とずっと思っていました。
ビートの20周年記念アイテムではサスペンションや専用オーディオなど7アイテム、
NSXにはサスペンションやスポイラーなど4アイテムをともに2011年に発売した。
それで昨年ようやく、S2000に20周年の節目が来るというタイミングが来て、以前にもホンダアクセスとして東京オートサロンにS2000のコンセプトカーを何回か出展したりしていたのですが、S2000のパーツ開発といった具体的な活動には何も動きがなかったのです。
ホンダアクセスは2009年のオートサロンではSports Modulo S2000コンセプトを出展。
Modulo Climaxは2013年のオートサロンで提案したコンセプトカー。
このときは具体的な製品へと発展することはなかった。
2020年のオートサロンではS2000の生誕20周年を祝し、フロントエアロバンパーなどの
アイテムを装着したS2000 20th Anniversary Prototypeを出展。
「このままでは20周年の節目を素通りしてしまう」と危機感を抱き、
意を決して企画を役員に提案して、どうにかGOをもぎ取ったのです。
企画スタート時はそんなに大がかりな感じではなかったかもしれませんが、
検討していいということになり、オーナーズミーティングなどでユーザーさんへの
ヒアリングをしながら開発を進めていきました。
承認されてはじめてGOできるのですが、
私が役員室に乗り込んでいって「こういうことをしたいんです!」と急に話を持って行ったのです。まさに突撃でした(笑)。
NSXとビートもそうなのですが、S2000は残存率こそ高いものの、フィットなどと比べて販売台数が桁違いに少ないので、残っている絶対的な台数はそんなに多くはないのです。
ですから、ビジネスとしては非常に厳しいのですが、ここまで大がかりにやらせてもらえたのは異例だったかもしれませんね。
遠藤 S2000のオーナーズミーティングには、皆さんで行ったのでしょうか?
川村 私の他に数人の開発メンバーで行きました。開発中のフロントバンパーのデザインを含めてお客さんに見てもらい、反応をヒアリングするためでした。
まだ開発途上のデザインはもちろん社外秘のトップシークレットですから、お客さんに見てもらうというのは普通では考えられません。ですから、とても異例なことでした。
当時の弊社社長が
「いろいろやりたいことは分かったけど、そういう活動が本当にお客さんたちに喜んでもらえるか、オーナーさんたちのいる場に行って、聞いてきなさい。発売前のデザインを見せることを許可するから」ということで、
実際にイベントに出向いて、「こういう活動に賛同して下さいますか?」と。
とくに高額なエアロバンパーについて、300人ほどいた参加者の約半数から意見を聞きました。その後社内報告をすると、「それだけの声があるなら、ビジネスとしては厳しいけど、お客さんに喜んでもらうために、やってみたらいい」という話になって。
遠藤 オーナーズミーティングでは、逆にオーナーさんからはどのような要望がありましたか?
川村 それはもう、たくさん(笑)。「ドリンクホルダーがないんだよね」といったものや、「収納がほしい」、「フロアマットに穴が開いて困っている」、「当時のエアロパーツの補修部品がない」など、いろんな声をいただきました。
遠藤 開発初期の段階では、今回発売されたもの以外も、いろいろなアイテムが検討していたのですか?
川村 そうです。プロジェクトチームの中で、お客さんからの要望も含めて検討して、30以上の案があったのですが、「ちょっとこれは多すぎる」ということになり、今回の8アイテムに絞り込みました。
遠藤 デモカーには市販化されていない様々なアイテムが装着されていますが…?
2020年のオートサロンに展示したプロトタイプの実車には市販予定の製品以外にも加飾が施されていた。
川村 シート表皮を替えたり、市販ナビをきれいにインストールしたりしてあります。正式ラインアップは出来ませんでしたが、こういったものもあるということを知っていただきたくて、装着しています。
シート張替えなどが施されているが、これは一般のユーザーでも実現可能な仕様。
それらは実はデモカー向けのワンオフではなく、ああいうことができるショップに依頼したものです。一般のお客さんも望めばそういうことができる仕様にはなっています。
というのも、我々がいろいろ手を出すよりも、サードパーティ製のパーツでケアできる所はそちらを使ってもらった方がリーズナブルな場合もありますので。
「我々ホンダアクセスはサードパーティにできないことを手掛けるべきだ」という結論になったのです。
ですから、サードパーティでは真似しにくい専用設計品や、金型が必要なもの、オーディオリッドのように純正部品の型が必要なものなど、お客さんやサードパーティ製ではなかなか手が入れられない所に、ラインアップを絞っていきました。
全てを手掛けると、プロジェクト自体が成立しなくなりますので…ほかにもいろいろやりたいところをぐっと我慢して(笑)。
つづく
Hondaの純正アクセサリーを手掛けるホンダアクセスから2020年6月に発売された、
S2000発売20周年記念アイテムの数々。
これらの開発を取りまとめた、開発責任者の川村朋貴(かわむらともき)さん、
サスペンションのセッティング担当の清松邦人(きよまつくにと)さん、
空力のセッティング担当の湯沢峰司(ゆざわたかし)さんは三人とも、
S2000オーナーにして生粋のS2000マニアだった!!
そんな熱すぎる開発陣の、オーナーとしてのこだわりを自らもS2000オーナーであり、
様々な自動車専門媒体で活躍するフリーランスライターの遠藤正賢さんがインタビューしました。
遠藤 まずは、皆さんがこれまでにS2000とどのように接してきたか、お教えいただけますか?
川村 私のS2000は2004年モデルで、ビッグマイナーチェンジ後の高根沢生産最終モデルです。最初はノーマルのまま乗っていましたが、サスペンションは弊社製やテインさん、今はオーリンズさんのものを装着しています。他にも無限さんのインテークや戸田レーシングさんのエキゾーストを装着したり、ボディ補強を入れたり…。
今回のS2000の20周年記念アイテムのLPLを務めた川村朋貴さん。
彼の熱意がなければ、このプロジェクトは実現しなかっただろう。
ちなみに川村LPLの愛車はホワイトパール。
パッと見は、今回の20周年記念の「フロントエアロバンパー」を装着している以外、ノーマルに見えるようにしています(笑)。車高も、社外品にしては高めに設定して、できるだけ快適に、純正の良さを損なわないよう気を付けながらファインチューニングしています。
2004年に新車で購入して以来、ずっと乗り続けています。
走行距離は6万kmくらいですね。普段はVAMOS HOBIO、今はN-VANに乗り換えていますが、荷物が載るクルマを使いつつ、休みの日には仲間とのツーリングやムカーナ、ミニサーキットなどでS2000を走らせています。
清松 私は2001年のマイナーチェンジ後のモデルを購入しました。
私は川村と完全に真逆で、ずっとノーマルのまま、メインのクルマとして使っていました。当時は毎日、仕事でいろんな車種、仕様違いのクルマに乗っていて、逆に軸となるクルマが欲しいと思っていたので。
今回のS2000 20周年記念アイテムではスポーツサスペンションのセッティングを担当した清松邦人さん。
2001年のマイナーチェンジではガラス幌以外にも内外装色と幌を好みのカラーから選べる「カスタムカラープラン」を導入。サスペンションも熟成した。
また、ドライビングの基本を学べるクルマでしたし、クルマはいじらず自分の技量を上げたい、感性を磨くためと考えて使っていましたね。でもタイヤはいろいろと交換してみて、新しいタイヤの進化を体感して、それも仕事に活かしていました。
遠藤 S2000は少し部品や消耗品、セッティングを変えるだけで、すごく動きが変わるクルマですよね。
清松 そうですね。あっという間に10万km近く走ってしまい、その経験も今回のサスペンションの開発に活かしています。
S2000に関しては、用品開発PL(プロジェクトリーダー)を担当し、内外装用品を開発していましたので、思い入れもあって購入しました。
湯沢 私は入社して1年経たないくらいの時、新車で買いました。まあ、S2000に乗りたいというのもあって、Hondaに入ったのですが(笑)。自動車メーカーに入社すると、基本的にはそのメーカーのクルマに乗らなければなりませんから(笑)。その頃には日産フェアレディZ(Z33型)も発売されていましたが、結構迷って、でもS2000が…ということも。Hondaを選んだ理由のひとつかもしれません。
Modulo Xの開発者としてもお馴染みの湯沢さんも現役のS2000オーナー。S2000のプロジェクトではエアロ開発を担当。
それに、独身の時しかこういうクルマに乗れないだろうし、若いから少しくらいローンが苦しくても何とかなるだろうと(笑)。実は今も乗っているのですが、トータルで考えたら安い買い物だったなと(笑)。走行距離はもう10万kmを超えていますが、ほぼ何も問題なく走れています。本当にいいクルマですね。
遠藤 いつ頃の仕様のS2000にお乗りなのですか?
湯沢 川村の次のモデル、生産工場が高根沢から鈴鹿製作所に移管された後の2.0L車です。高根沢生産のうちに買おうと思っていたのですが、間に合いませんでした(笑)。
2005年モデルからは2.2L化し、低・中回転域の扱いやすさが向上している。
遠藤 そうなのですね。私も最初に所有したS2000は2005年、鈴鹿生産の2.0L車を、2.2Lになる直前に慌てて新車で購入しました(笑)。
皆さん本当に、S2000が好きで乗りつつ、仕事にも活かしていらっしゃるのですね。
川村 私も入社2年目くらいで、死ぬ思いで買いましたね(笑)。まだ20歳だったので給料のほとんどがクルマの購入費用に消えてしまって…ご飯も削っていました(笑)
若かったから自動車保険も高くて維持費にも苦労していましたが、そんなことはどうでもよくなるくらいS2000は魅力的なクルマでした。
遠藤 私もまだ若かったので、結構苦労しましたが、それでもS2000は欲しいクルマでしたね。
次回、そんなS2000愛溢れる開発メンバーに今回の20周年記念のプロジェクトをどのように進めていったのだろうか。
詳しくインタビューするのでこうご期待!
続く
ホンダ ヴェゼルハイブリッド VEZEL e:HEV ZのFF車に“Urban Style”の純正アクセサリーを装着 ... |
|
ホンダ シビックタイプR CIVIC TYPE R(FK8)に向けに発売した純正アクセサリー装着車。 スポーツマイ ... |
|
ホンダ ビート BEATの発売から20周年を記念して、2011年11月に発売した純正アクセサリー。 iP ... |
|
ホンダ S2000 登場から20年経過した今日でも多くのオーナーに深い愛情を持って所有され続けるS2000 ... |