S2000発売20周年記念アクセサリー開発責任者・川村朋貴LPLの愛車は“見る人が見れば分かる”さりげない大人のチューニングメニューが満載だった!
そんな川村LPLの愛機を自身もS2000ジオーレのオーナーでもある、
遠藤正賢がレポートする。
左のジオーレは筆者・遠藤正賢の車両。右のS2000は川村LPLの愛機。
Hondaの純正アクセサリーを手掛けるホンダアクセスから2020年6月に発売された、
S2000発売20周年記念アクセサリーの数々。
これらの開発を取りまとめた、開発責任者の川村朋貴(かわむらともき)さんは、現役のS2000オーナーでもある。
その愛車は一見すると、自身が企画、開発した20周年記念の「エアロバンパー」を装着している以外はごくノーマル然としている。
だが、実車を拝見しながら詳しくお話を伺うと、S2000オーナーなら思わず膝を叩きたくなるであろう、“見る人が見れば分かる”さりげない大人のチューニングメニューがふんだんに盛り込まれていた!
自身で企画したフロントエアロバンパーをもちろん装着。ライセンスフレームは新車当時から装着しているもので、こちらはホンダアクセス製のものだ。
川村 これが私のS2000です。2004年モデルで、ビッグマイナーチェンジ後の高根沢工場での最終生産モデルです。
遠藤 AP1-135といわれる号機のものですね。よく見てみると、Hマークエンブレムが変更されていますね。
川村 はい、これはNSXの純正フロント用エンブレムを流用しています。
S2000の初期型(AP1-100、110)は樹脂で覆われたタイプでしたが、その頃はエンブレムにはプレミアムカラーの設定がなかったんです。ですがNSXにはすでに設定されていたので、そのエンブレムを流用しました。
フロントエアロバンパーを装着する前は、定番のニューフォーミュラレッドのエンブレムを装着してTYPE R風にしていたんですが、バンパーを交換するにあたり「もうそろそろ落ち着いた雰囲気にしたいな」と思いまして。
遠藤 なるほど。
そういえば、このボディカラーはプラチナホワイト・パールですよね?21万円高のプレミアムカラーだったと記憶しています。
川村 はい。とても気に入ったカラーでしたので、
奮発して購入しました(笑)。
これまたS2000に詳しい人でなければカスタマイズされていることに気づけない
さりげないイジり方。
遠藤 リアにはTYPE Sのエンブレムも装着されていますね。
川村 これはINTEGRA TYPE S(DC5)のエンブレムなんですよ。
INTEGRAにはS2000よりも以前にTYPE Sが設定されていたので、
それを装着しました。つまり、私のS2000が元祖TYPE Sです(笑)。
2004年のマイナーチェンジでINTEGRA(DC5)に「TYPE S」を設定。
その前にもPRELUDE(BB6)やINSPIRE/SABAR(UA4)などにTYPE Sを冠したモデルが設定されていた。
2007年の一部改良の際にS2000にも「TYPE S」が設定された。フロントのバンパーと大型のリアウイングが特徴的だ。
遠藤 (笑)。S2000 TYPE Sのエンブレムはマットブラックですものね。
INTEGRA用はSマークがオレンジなのですね。
ところでこのリアスポイラーの正体はなんでしょうか?
あまりにもS2000のデザインにマッチしていて、純正っぽい雰囲気ですが。
川村 この小さいガーニーフラップはどこかの通販サイトで買った社外品です。塗装代込みで2500円くらいでしたね(笑)。
こういうさりげないものを装着して、ちょっとだけ違いを出しています。
フルバケットタイプのRECAROシートを奢る。シート表皮にはアルカンターラが使われており、高級感だけでなく、走行時のホールド感も高めてくれる素材だ。
遠藤 室内に目を移すと、シートは運転席・助手席ともRECARO製のフルバケットシートになっていますね。
川村 「SP-GN」という、日本人の体型に合わせて作られたフルバケットシートのアルカンターラ仕様で、ASMさんが限定で販売されていたものの中でもさらにシルバーシェルモデルといって・・・本来はシェルが黒いのですが、シルバーのものは世界で16脚しかないんです(笑)。
遠藤 それは…凄いレアですね(笑)。インパネ周りはどんなカスタマイズをされているのでしょうか?
川村 ステアリングなどはノーマルですが、間欠時間調整機能付きのワイパーレバーはホンダアクセスが純正アクセサリーとして設定していたものです。これは実は私が以前開発したものなのです。
自分が欲しくて作り、それを装着しました(笑)。もう廃盤になってしまい、買うことができませんが…
遠藤 そうだったんですね! 開発者もひとりのS2000乗りだからこそ、欲しいアイテムがわかるんですね。私も間欠ワイパー、あると便利なので欲しいですね。
川村 それから…もちろん、自分で企画した
今回のS2000 20周年記念アイテムも装着していますよ!
ユーザーの皆さんと同じで、このアイテムのオーダー開始日にわざわざ休みを取って、Honda Carsに行って、フロントエアロバンパーほか、
いろいろと予約して購入しましたよ笑
つづく
S2000発売から20周年を記念して、Hondaの純正アクセサリーを手掛けるホンダアクセスから20周年記念アイテムが2020年6月に発売になった。
その20周年記念アイテムの目玉である「スポーツサスペンション」と「フロントエアロバンパー」を装着したホンダアクセスの広報車を、
Modulo開発アドバイザーを務める“ドリキン”こと土屋圭市氏が試乗した。
土屋圭市 Hondaが1999年4月に発売したS2000は、俺が大好きなFRの、オープンカーでありながら本格的なスポーツカーだったけど、特に初期型はピクピク跳ねて、路面の荒れたワインディングではちょっと怖かったよね。
百戦錬磨のドリキンでさえも「怖かった」と言わしめ、乗り手を選ぶS2000の初期型。この後、改良を重ねるごとに乗りやすくなっていく。
だけど、あれからもう20年。
俺が「モデューロ開発アドバイザー」として長年関わっているホンダアクセスが、S2000の発売20周年を記念して、新しいカスタマイズパーツを開発してきた。
そんな、乗り手を選ぶS2000の初期型に、ホンダアクセスが20年後に作ったパーツを付けてみると、どんな風に変わるのか。今回も俺がメインキャスターを務める「ホットバージョン」誌でもおなじみの、“群サイ”こと群馬サイクルスポーツセンターで試してみた。
ホンダアクセスの広報車は初期型をベースに後期型の17インチアルミホイールを履かせた仕様。
ちなみに群サイは、路面がものすごく荒れていてギャップは多いし、
コース脇には苔が生えていて滑りやすい。オマケに晴れた日は明るい所と暗い所の差が激しくて、ブラインドコーナーも多いんだ。だから、箱根やテストコースでは見えてこない、クルマの本当の良し悪しが全部分かる。
そんな所で足が硬いクルマを走らせても、走れないことはないけど、遅いよね。だって、ギャップの度にクルマが飛んで、アクセルを踏めないんだから(笑)。
全開アタックをするにあたって、ドリキンの正装である、レーシングスーツとヘルメット、グローブを着用してテストした。
実はこれ、俺が完成品に乗るのは今回が初めてなんだよなぁ…。だから俺がどんな風に評価するか、ホンダアクセスの開発メンバーも戦々恐々だったようだけど(笑)。
全開アタック直前に撮影。開発メンバーはドリキンの評価が気になるのか表情がややかたい笑
完熟走行が終わり、一気にレッドゾーンまで踏み込み、全開でエアロバンパーとサスペンションをチェックするドリキン土屋氏。
一言で言って、“楽”だった。「フロントエアロバンパー」のおかげでフロントタイヤの接地感が常に変わらないし、新車が売られていた頃のものからセッティングが変わった「スポーツサスペンション」も、硬すぎず柔らかすぎないから、ノーマルのような突き上げはなくなっている。
だから、ゆっくり流しても気持ち良く走れるし、全開で走っても安心してアクセルを踏んでいける。見た目もそうだけど、走りも“大人のS2000”だよね。
F20Cに容赦なくムチを入れ、全開でテスト。それにしてもF20Cの奏でるエキゾーストノートは美しい。
それと、今回乗ったクルマには、フロント215/45R17 91Y/リヤ245/40R17 91Yのブリヂストン・ポテンザS007Aが装着されていたけど、同じポテンザでもRE-71RSほどハイグリップじゃないから、群サイのようなワインディングなら、フロントダンパーの減衰力調整は真ん中の「3」がいいよね。サーキットを走ったりハイグリップタイヤを履かせたりするなら「4」か「5」に上げて、もっと硬くした方がいいと思う。
普段の街乗りなら「1」か「2」にした方が快適だけど、群サイのようなワインディングでフロントダンパーを柔らかくすると、S字コーナーの2発目で揺り返しが出るようになるから、ちょっと怖くなるよね。だから欲を言えば、リヤダンパーの減衰力も調整できるようにして、今のスプリングレートのまま、バンプスピードを抑えられるようにしたいね。FD2型シビック・タイプRのスポーツサスペンションも、後からリヤダンパーに減衰力調整機構を追加したんだし。
え?このスポーツサスペンション、もう完売しちゃったの?!
じゃあ、買えたラッキーなユーザーはタイヤや自分の走り方に合わせた減衰のセッティングをして欲しいな。
今回の20周年記念パーツを装着したS2000は、ノーマルのまま乗ってきた人にとっては“ワンランク上のリフレッシュプラン”だし、車高調を入れたりして本格的にチューニングして走ってきた人にとっては、すごく“居心地がいい”。
どんなS2000オーナーが乗ってもちょうどいい、“大人のS2000”に仕上がっていると思うよ。
ドリキンの全開アタックの模様はコチラからチェック!
ホンダアクセス S2000 20周年記念アイテム
https://www.honda.co.jp/ACCESS/s2000-20th
Hondaの純正アクセサリーを手掛けるホンダアクセスから2020年6月に発売された、S2000発売20周年記念アイテムの数々。これらの開発の中心となったメンバーへのインタビュー、3回目は新たに開発された「フロントエアロバンパー」やと「スポーツサスペンション」の技術的特徴やセッティングの方向性について、自動車専門媒体で活躍するフリーランスライターの遠藤正賢がインタビューした。
遠藤 では、実際に発売された製品について詳しくお伺いしたいと思います。まず「フロントエアロバンパー」に関して、Modulo Xの開発で培ったノウハウが活かされていると聞きました。S2000のエアロでさらにプラスされた部分はどんなところでしょうか?
湯沢 どちらかというと進化ですね。
これまでModulo Xはモデルを重ねるごとに進化させてきましたが、
さらに上乗せしたイメージです。
遠藤 具体的には
FREED Modulo Xで採用されたバンパー下部中央の「エアロスロープ」と、サイドの「エアロフィン」、タイヤ前の「エアロボトムフィン」…。
湯沢 それらに加えて、全長を24mm延長しています。
遠藤 それだけ伸ばすと、風の流れが大きく変わってくるんでしょうか?
湯沢 そうですね、ノーマルバンパーは正面からの風を面で受ける形状になっているので、それよりも前に出してあげて、左右に流れるようにしています。船と一緒で、後ろに進むより前に進んだ方が、あの形では良いので。まずはそこからスタートしました。
「乗り手を選ぶ」と言われるほど、ドライバー側のテクニックが求められるS2000だが、
ピーキーな性格をエアロと足回りで抑えている。
S2000というクルマの特性上、ステアリング操作に対してピーキーな動きをする傾向がありますが、「ワインディングを気持ち良く走りたい」というのがチームの要望でしたので、ピーキーな動きでは疲れてしまいます。ですから、クルマに任せて運転できるような、インフォメーションをドライバーに与えてくれるような空力を目指していきました。
遠藤 まずノーズを延長してボディ正面の流れを作って、
そこからボディ下面とサイドの流れ作り込んでいったのですね。
湯沢 はい。そもそもS2000は直進安定性がすごく高いクルマというわけではありません。ですから、空気の流れをスムーズにしてやるだけでも大きく変わります。ワインディングを走ってフロントの入り方やリアの荷重の移り変わりをきれいにすると「いいなあ」と思えるクルマになるので、Modulo Xで培ってきた実効空力のノウハウを入れ、ボディ下部の空気の流れをしっかり整えていきました。
最後は、FRらしく走れるように、最終的に形状を決めるモデラーさんにもステアリングを握ってもらいながら、細かく形状変更していきましたね。
ホンダアクセスは日常の速度域でも体感できる空力効果を「実効空力」と呼び、
Modulo Xシリーズでは空力性能を進化させ続けている。
川村 今回はデザイン部門だけではなく品質部門のスタッフにも走行テストに同行してもらっています。というのは、その造形がどれだけ大事か、品質にバラつきが生じると、どれだけ走りに影響するのか理解したいという申し出があったからです。
それで、面を高い精度できれいに作ることの重要性を体感してもらいました。
遠藤 バンパーはあれだけ大きな樹脂の部品ですから、歪むこともありそうですよね。
川村 はい。高い品質が望める製法を採用し、品質管理を徹底しないとそういった可能性もあるかと思います。生産数量の多い純正アクセサリーのエアロバンパーではそういった条件を満たす射出成形で作るのですが、今回のS2000のプロジェクトでは作る本数が少ないので、その製法では今回の定価では実現できません。
ですからクオリティが下がらず、小ロットに適した製法である真空成形を採用して、純正アクセサリーとしても高価になりすぎない価格設定にしています。
遠藤 今回「トランクスポイラー ダックテールタイプ」と「リアストレーキ」を復刻生産していますが、前後の空力バランスはどのように…?
フロントエアロバンパーは純正バンパーよりも24㎜全長が長くなっている。
湯沢 走り込みながらバランスを取りましたが、今回はその復刻生産したものがありますので、ゼロから全部作り直すよりは楽でした。
しかし、現存するS2000には様々な仕様がありますので、どれをターゲットにするかを考えつつバランスを取るのは難しかったですね。
川村 今回のダイナミック(動的)コンセプトを“ワインディングマスター”としました。
わかりやすく言うと「誰もがドライビングの達人になったようにワインディングを気持ち良く走れるようにし、しかもオープンの気持ちよさは大切にする」というものなのですが、リヤが動きぎみなS2000の空力特性を抑えるために大きなウィングを付けたりすると、オープン時とクローズ時とで変化が大きくなりすぎます。
また、クローズ時には良くてもオープン時は悪いとなると、コンセプトともずれてくるので、効きは控えめながら幌開閉での空力特性の変動が少ないダックテール型の方が良いということになりました。幌を開けるとシート後方辺りで空気が乱れて、それがリヤまで続きますので、ウィングの効果が発揮できないのですね。
遠藤 幌を閉めて走行するとフロントのダウンフォースが効き過ぎている印象があったのですが、開けると前後バランスがちょうどいいように感じました。
川村 今回はまさに、オープン時の走りを気持ち良くしたいという思いで、走りを作り込みましたね。
遠藤「スポーツサスペンション」は、新車販売当時にラインナップしていた純正アクセサリーと今回新規開発したものとでは、どのような点が異なるのでしょうか?
見た目は新車当時のModuloのサスペンションと変わらないが、中身は大きく異なる。
清松 スプリングも新作で、減衰力も全く違うものになっていて、ダンパーのメインバルブも新作するほど、大きく手を入れました。
BEATとNSXは新車当時に純正アクセサリーとしてサスペンションを発売しておらず、交換するものがないということで、「Moduloとして出しましょう」ということにすぐ決まったんですが、S2000は新車販売時に設定していましたので、それを復刻するのかそれとも新規開発するのか議論になりました。
ですが、S2000自体がデビュー後に複数回のマイナーチェンジによって進化していて、タイヤも当時よりも進化していますし、お客さんのニーズも変わっていますので、S2000を知り尽くしたうえでの新たなセッティングを欲しているであろう、という所にたどり着いて、敢えて新たにセッティングをしました。
遠藤 そのセッティングの方向性は、従来とどのように違っていますか?
清松 簡単に言えば、前後をより均等に近いバランスにしているということですね。元々Moduloは「四輪で舵を切る」というコンセプトがあります。そもそもS2000 自体が前後重量配分が50:50で、リヤにトラクションがかかるFRという駆動方式というのもあるのですが、数値的にも前後が近いスプリングレートにしています。
というのも、新車に近いコンディションのお客さんもいれば、走り尽くしたお客さんもいる。あるいは自分好みに仕立てた個体もあったり、さらにタイプSなど車両自体が大きく異なるものもありますので、いかに同じフィーリングに近づけるかにこだわっています。Modulo Xと同じことをすれば、汎用性があって接地感が分かりやすいという所にたどりつけるので、そういうバランスを狙っています。
遠藤 新車販売時の純正アクセサリーの「スポーツサスペンション」は「よりハードに、よりクイックに」という方向性だったのでしょうか?
清松 当時のサスペンションは、ノーマルのタイヤ&ホイールが16インチだったので、それをインチアップしつつサスペンションもそれに合わせるという、セットで一つの形を提示していました。
その後マイナーチェンジで変わっていっても、「スポーツサスペンション」には汎用性がありましたが、今改めてお客さんのニーズを見ると、当時とは少し違ってきているのを感じて、新作することにしました。
今回のダイナミックコンセプトである「ワインディングマスター」と「オープンで気持ち良く走る」というのも、S2000デビュー当初はあまりニーズが強くなかったのかなと。
遠藤 最後に、もし今後も新しいS2000用の純正アクセサリーを開発できるとしたら、どんなものを作りたいですか?
川村 お客さんの要望として多かったのが電装パーツ、「ナビゲーション、当時のものがもうダメです」、「ヘッドライト・テールライトのデザインが一昔前」といったものがありましたね。ですが電装パーツを新作するにはかなりの投資額が必要で、今回のラインアップからは外れています。でも細かい収納用品は喜んでいただけるのかなと。
走りの面に関しては、このプロジェクトでは「20年目のMMC」というグランドコンセプトを掲げていますが、これは今回で完結したと思っていて。
S2000には二つのテーマがあり、一つは我々が今回重きを置いた「ワインディングを気持ち良く走る」という方向性、もう一つが「本籍はサーキット」というものです。後者は最終モデルのタイプSで完結しているので、前者の方を伸ばした…と捉えていただけるといいですね。
清松 実現性はさておき、クローズドボディのS2000を作ってみたいですね。S2000は運動性能を追求したクルマでもあるのですが、オープンではなく、クローズドボディで走りを突き詰めた形を見てみたいですね。
遠藤 S2000はAピラーを立たせたりなど、オープンカーとしての要件を優先した面は多いですよね。また、あのボディ剛性を出すのに、クローズドボディならもっと軽くできるでしょうし。
湯沢 私は現役オーナーでもあるので、その立場で考えると、お客さんのS2000の維持を助けたいですね。徐々にいろんな所がくたびれてきて、お金が必要になる人たちが増えてくると思いますので、そういう人たちを助けるような部品やシステム、サービスがあってもいいのかなと。皆様S2000が好きで乗っていただいていると思いますので。
遠藤 現実的には大変でしょうが、NSXのリフレッシュプランのようなものがあれば…。
川村 今回の裏テーマとしてそういった狙いもあり、ホンダアクセスが過去のクルマに光を当てることで、Honda全体がそういう方向に動いてくれれば…という思いはあります。
HondaがBEATや二輪のNSR、CBなどの部品を再販したり、他社でもトヨタさんがスープラの部品を復刻したりするなど、そういう流れの中で、ホンダアクセスが動くことで「S2000の部品も再販しようか、リフレッシュプランをやってみようか」という、いい流れができたら、チームとしてもうれしいです。
遠藤 今回の取り組みが今後、さらに広がっていくことを期待しています!
自らがクルマ好きで、S2000オーナーでもある川村LPLの熱い想いによって、企画がスタートし、S2000オーナーの開発メンバーによって
製品化にこぎつけたS2000の20周年アイテムたち。
次回、そんな20周年アイテムを装着したS2000をModulo開発アドバイザーの
乞うご期待!
Hondaの純正アクセサリーを手掛けるホンダアクセスから2020年6月に発売された、S2000発売20周年記念アイテムの数々。
これらの開発の中心となったメンバーへのインタビュー、2回目は異例尽くしとなった企画発足から開発、商品化までの経緯について自らS2000オーナーでもあり、
自動車専門媒体で活躍するフリーランスライターの遠藤正賢さんが開発責任者の川村LPLに話を聞きました。
自らもS2000オーナーでもあり、今回のS2000プロジェクトのLPLを務めた川村朋貴(かわむらともき)さん。
遠藤 S2000オーナーでもあり生粋のS2000マニアでもある皆さんが今回、S2000の20周年企画を立ち上げたのは、どのような経緯があってのことなのでしょうか?
川村 私が企画したのですが、ホンダアクセスは過去にもNSXとビートの20周年のタイミングで、用品開発をしている経緯がありました。
先輩方がそういう取り組みをしているのを目の当たりにして、「自分もいつかそういう企画をしたい」とずっと思っていました。
ビートの20周年記念アイテムではサスペンションや専用オーディオなど7アイテム、
NSXにはサスペンションやスポイラーなど4アイテムをともに2011年に発売した。
それで昨年ようやく、S2000に20周年の節目が来るというタイミングが来て、以前にもホンダアクセスとして東京オートサロンにS2000のコンセプトカーを何回か出展したりしていたのですが、S2000のパーツ開発といった具体的な活動には何も動きがなかったのです。
ホンダアクセスは2009年のオートサロンではSports Modulo S2000コンセプトを出展。
Modulo Climaxは2013年のオートサロンで提案したコンセプトカー。
このときは具体的な製品へと発展することはなかった。
2020年のオートサロンではS2000の生誕20周年を祝し、フロントエアロバンパーなどの
アイテムを装着したS2000 20th Anniversary Prototypeを出展。
「このままでは20周年の節目を素通りしてしまう」と危機感を抱き、
意を決して企画を役員に提案して、どうにかGOをもぎ取ったのです。
企画スタート時はそんなに大がかりな感じではなかったかもしれませんが、
検討していいということになり、オーナーズミーティングなどでユーザーさんへの
ヒアリングをしながら開発を進めていきました。
承認されてはじめてGOできるのですが、
私が役員室に乗り込んでいって「こういうことをしたいんです!」と急に話を持って行ったのです。まさに突撃でした(笑)。
NSXとビートもそうなのですが、S2000は残存率こそ高いものの、フィットなどと比べて販売台数が桁違いに少ないので、残っている絶対的な台数はそんなに多くはないのです。
ですから、ビジネスとしては非常に厳しいのですが、ここまで大がかりにやらせてもらえたのは異例だったかもしれませんね。
遠藤 S2000のオーナーズミーティングには、皆さんで行ったのでしょうか?
川村 私の他に数人の開発メンバーで行きました。開発中のフロントバンパーのデザインを含めてお客さんに見てもらい、反応をヒアリングするためでした。
まだ開発途上のデザインはもちろん社外秘のトップシークレットですから、お客さんに見てもらうというのは普通では考えられません。ですから、とても異例なことでした。
当時の弊社社長が
「いろいろやりたいことは分かったけど、そういう活動が本当にお客さんたちに喜んでもらえるか、オーナーさんたちのいる場に行って、聞いてきなさい。発売前のデザインを見せることを許可するから」ということで、
実際にイベントに出向いて、「こういう活動に賛同して下さいますか?」と。
とくに高額なエアロバンパーについて、300人ほどいた参加者の約半数から意見を聞きました。その後社内報告をすると、「それだけの声があるなら、ビジネスとしては厳しいけど、お客さんに喜んでもらうために、やってみたらいい」という話になって。
遠藤 オーナーズミーティングでは、逆にオーナーさんからはどのような要望がありましたか?
川村 それはもう、たくさん(笑)。「ドリンクホルダーがないんだよね」といったものや、「収納がほしい」、「フロアマットに穴が開いて困っている」、「当時のエアロパーツの補修部品がない」など、いろんな声をいただきました。
遠藤 開発初期の段階では、今回発売されたもの以外も、いろいろなアイテムが検討していたのですか?
川村 そうです。プロジェクトチームの中で、お客さんからの要望も含めて検討して、30以上の案があったのですが、「ちょっとこれは多すぎる」ということになり、今回の8アイテムに絞り込みました。
遠藤 デモカーには市販化されていない様々なアイテムが装着されていますが…?
2020年のオートサロンに展示したプロトタイプの実車には市販予定の製品以外にも加飾が施されていた。
川村 シート表皮を替えたり、市販ナビをきれいにインストールしたりしてあります。正式ラインアップは出来ませんでしたが、こういったものもあるということを知っていただきたくて、装着しています。
シート張替えなどが施されているが、これは一般のユーザーでも実現可能な仕様。
それらは実はデモカー向けのワンオフではなく、ああいうことができるショップに依頼したものです。一般のお客さんも望めばそういうことができる仕様にはなっています。
というのも、我々がいろいろ手を出すよりも、サードパーティ製のパーツでケアできる所はそちらを使ってもらった方がリーズナブルな場合もありますので。
「我々ホンダアクセスはサードパーティにできないことを手掛けるべきだ」という結論になったのです。
ですから、サードパーティでは真似しにくい専用設計品や、金型が必要なもの、オーディオリッドのように純正部品の型が必要なものなど、お客さんやサードパーティ製ではなかなか手が入れられない所に、ラインアップを絞っていきました。
全てを手掛けると、プロジェクト自体が成立しなくなりますので…ほかにもいろいろやりたいところをぐっと我慢して(笑)。
つづく
Hondaの純正アクセサリーを手掛けるホンダアクセスから2020年6月に発売された、
S2000発売20周年記念アイテムの数々。
これらの開発を取りまとめた、開発責任者の川村朋貴(かわむらともき)さん、
サスペンションのセッティング担当の清松邦人(きよまつくにと)さん、
空力のセッティング担当の湯沢峰司(ゆざわたかし)さんは三人とも、
S2000オーナーにして生粋のS2000マニアだった!!
そんな熱すぎる開発陣の、オーナーとしてのこだわりを自らもS2000オーナーであり、
様々な自動車専門媒体で活躍するフリーランスライターの遠藤正賢さんがインタビューしました。
遠藤 まずは、皆さんがこれまでにS2000とどのように接してきたか、お教えいただけますか?
川村 私のS2000は2004年モデルで、ビッグマイナーチェンジ後の高根沢生産最終モデルです。最初はノーマルのまま乗っていましたが、サスペンションは弊社製やテインさん、今はオーリンズさんのものを装着しています。他にも無限さんのインテークや戸田レーシングさんのエキゾーストを装着したり、ボディ補強を入れたり…。
今回のS2000の20周年記念アイテムのLPLを務めた川村朋貴さん。
彼の熱意がなければ、このプロジェクトは実現しなかっただろう。
ちなみに川村LPLの愛車はホワイトパール。
パッと見は、今回の20周年記念の「フロントエアロバンパー」を装着している以外、ノーマルに見えるようにしています(笑)。車高も、社外品にしては高めに設定して、できるだけ快適に、純正の良さを損なわないよう気を付けながらファインチューニングしています。
2004年に新車で購入して以来、ずっと乗り続けています。
走行距離は6万kmくらいですね。普段はVAMOS HOBIO、今はN-VANに乗り換えていますが、荷物が載るクルマを使いつつ、休みの日には仲間とのツーリングやムカーナ、ミニサーキットなどでS2000を走らせています。
清松 私は2001年のマイナーチェンジ後のモデルを購入しました。
私は川村と完全に真逆で、ずっとノーマルのまま、メインのクルマとして使っていました。当時は毎日、仕事でいろんな車種、仕様違いのクルマに乗っていて、逆に軸となるクルマが欲しいと思っていたので。
今回のS2000 20周年記念アイテムではスポーツサスペンションのセッティングを担当した清松邦人さん。
2001年のマイナーチェンジではガラス幌以外にも内外装色と幌を好みのカラーから選べる「カスタムカラープラン」を導入。サスペンションも熟成した。
また、ドライビングの基本を学べるクルマでしたし、クルマはいじらず自分の技量を上げたい、感性を磨くためと考えて使っていましたね。でもタイヤはいろいろと交換してみて、新しいタイヤの進化を体感して、それも仕事に活かしていました。
遠藤 S2000は少し部品や消耗品、セッティングを変えるだけで、すごく動きが変わるクルマですよね。
清松 そうですね。あっという間に10万km近く走ってしまい、その経験も今回のサスペンションの開発に活かしています。
S2000に関しては、用品開発PL(プロジェクトリーダー)を担当し、内外装用品を開発していましたので、思い入れもあって購入しました。
湯沢 私は入社して1年経たないくらいの時、新車で買いました。まあ、S2000に乗りたいというのもあって、Hondaに入ったのですが(笑)。自動車メーカーに入社すると、基本的にはそのメーカーのクルマに乗らなければなりませんから(笑)。その頃には日産フェアレディZ(Z33型)も発売されていましたが、結構迷って、でもS2000が…ということも。Hondaを選んだ理由のひとつかもしれません。
Modulo Xの開発者としてもお馴染みの湯沢さんも現役のS2000オーナー。S2000のプロジェクトではエアロ開発を担当。
それに、独身の時しかこういうクルマに乗れないだろうし、若いから少しくらいローンが苦しくても何とかなるだろうと(笑)。実は今も乗っているのですが、トータルで考えたら安い買い物だったなと(笑)。走行距離はもう10万kmを超えていますが、ほぼ何も問題なく走れています。本当にいいクルマですね。
遠藤 いつ頃の仕様のS2000にお乗りなのですか?
湯沢 川村の次のモデル、生産工場が高根沢から鈴鹿製作所に移管された後の2.0L車です。高根沢生産のうちに買おうと思っていたのですが、間に合いませんでした(笑)。
2005年モデルからは2.2L化し、低・中回転域の扱いやすさが向上している。
遠藤 そうなのですね。私も最初に所有したS2000は2005年、鈴鹿生産の2.0L車を、2.2Lになる直前に慌てて新車で購入しました(笑)。
皆さん本当に、S2000が好きで乗りつつ、仕事にも活かしていらっしゃるのですね。
川村 私も入社2年目くらいで、死ぬ思いで買いましたね(笑)。まだ20歳だったので給料のほとんどがクルマの購入費用に消えてしまって…ご飯も削っていました(笑)
若かったから自動車保険も高くて維持費にも苦労していましたが、そんなことはどうでもよくなるくらいS2000は魅力的なクルマでした。
遠藤 私もまだ若かったので、結構苦労しましたが、それでもS2000は欲しいクルマでしたね。
次回、そんなS2000愛溢れる開発メンバーに今回の20周年記念のプロジェクトをどのように進めていったのだろうか。
詳しくインタビューするのでこうご期待!
続く
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