JR東日本が運行している観光列車「SL銀河」が今日定期列車としての運行を終えました(6月10~11日が団体臨時列車として最終運行)。補修部品の調達が困難なこと、客車の老朽化が理由だそうです。私はこのSL銀河に乗ったことはありませんが、釜石で勤務していたときは店舗のすぐ前を釜石線が通っていて、土日の通過時刻になると外に出て煙を吐いて力強く走るSL銀河に手を振ったものです。乗客や乗務員の方もそれに応えて手を振ってくれ、時には汽笛を鳴らしてくれるので、定期運行していたシーズン中は密かに楽しみにしていました。
もう一つ思い出というか関連する話がありまして、SL銀河が動態復元される前のこと。私は盛岡市内のディーラー本社で勤務しておりました。この時のお客様でよく私を訪ねて整備を依頼してくださる方(Mさん)がいらっしゃいました。Mさんは旧国鉄で運転士として勤務されていたそうで、新幹線以外なら全部運転できると仰っておられました。そして運転士引退後は検修員として整備された列車の検査に携わっていたらしいです。そういった経歴をお持ちでしたので自動車の整備についてもとても理解のある方で、何か異常を感じるとすぐに車を持ち込んでくれ、いつも快く点検整備に応じてくれておりました。いつもお話くださるのが整備と検査の重要性で、会う度にそれは鉄道も自動車も同じであると繰り返し私に説いてくださっておりました。
そんなMさんがライフワークの一つにされていたことが、盛岡市内の公園で静態保存されていたC58 239機関車、後のSL銀河のメンテナンスでした。保存会に所属して現役当時の経験を活かしメンテナンスに勤しんでおられたのだと思います。懸命なメンテナンスのおかげで動態復元が実現したのでしょう。復元が決まったのが2012年のこと。東日本大震災後の沈んだ状況の中、岩手県民にとって希望の光になったことは言うまでもありません。しかし、Mさんはその時にはもう店舗に姿を見せることはなくなっていました。ご高齢でしたから車の運転も控えておられたのかなとは思っておりましたが、この出来事はとても嬉しかったに違いありません。
そして2年後の2014年4月、大宮総合車両センターで復活を遂げたSL銀河は岩手の地に舞い戻り、人々の期待を乗せて花巻駅~釜石駅間で運行を開始しました。実際に私がその姿を見るのはさらに3年後の釜石に異動してからのことです。初めて見た時はその迫力とMさんのことを思い出し、胸の奥から感情がこみ上げてきて、目頭が熱くなりました。間接的ではありますが、MさんをはじめSL銀河に思いを馳せた人々のエネルギーを感じた瞬間でした。煙の匂いがまたたまらなく最高なんです。
運行が終わってしまうのはとても残念でありますが、まだ来週の運行もありますがSL銀河がこれまで事故やトラブルが無く(一部ファンの危険行為は残念でしたが)無事に定期運行を終えたことはとても良かったと思っています。Mさんも現在ご存命かどうかはもうわかりませんが、誇り高き鉄道マンとしてきっと安堵されていると思います。
惜しまれながら引退となりますが、多くの人々の情熱に支えられたSL銀河。存続を希望する署名活動が一部で展開されているようですが、またどこかで会える日が来るといいですね。6月11日の最終運行は観に行こうかな。
Posted at 2023/06/04 20:29:42 | |
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