今年の初めのご挨拶以来、相当放置をしていました 汗
久しぶりの投稿は『私情インプレッション』です。
今回はこちら。
トヨタ・GRヤリスです。
トヨタが本気を見せた話題の一台ですね。
モータースポーツ(WRC)の必勝を期して豊田章男社長自らが開発に関わったモデルです。
では最初にアウトラインから。
【全長×全幅×全高】3995×1805×1455(mm)
【ホイールベース】2560mm
【車重】1280kg
【エンジン】直列3気筒DOHCインタークーラーターボ
【トランスミッション】6速MT
【最高出力】272ps/6500rpm
【最大トルク】370N・m/3000〜4600rpm
ベースはこちらも話題のベーシックコンパクトの新型ヤリスで、トヨタの次世代プラットフォーム『TNGA』です。
とはいっても後に触れますがこのGRヤリスは『ヤリス』の名前を冠しているものの、車の仕立てはヤリスとはかなり異なっており、見た目では灯火類やインパネくらいしか共通点はありません。
3ドアのクーペ系ハッチバックのボディで、フェンダーが大きく張り出した様や大きく口を開けたGR共通イメージのフロントバンパーはこのGRヤリス独自のもので、いかにも競技向けに武装されていて迫力があり、実物はスペック以上に大きく感じます。
トヨタ曰く『これまでの公道走行向けの量産車をベースに競技スペックにチューンしたのではなく、一から競技スペックの車両を開発し、公道走行向けに仕様変更した』ということで、どれだけそのキャラクターが感じられるかが試乗のポイントになります。
試乗は10分少々の市街地走行、試乗モデルは最上級グレードの『RZハイパフォーマンス』です。
大きめのドアを開けて乗り込み、ドアを閉めると『バンっ』とやや呆気ない軽い感じの音が。そう、ドアパネルはアルミ製のためどっしりとした開閉感はありません。
シートは専用バケットタイプ。こちらも思ったほど拘束感はなく、確かに一般使用を考慮した形状というのが分かります。座り心地もハードさはなく日常でも不快感はありません。
エンジンはすでにかかっていて暖気は済んでいるので早速クラッチに足を運ぶ、、
こちらもハイパフォーマンスと言われるほど重いことはなく、日常でも使える普通のタッチです。そして6速MTのギアをローへ入れると、ようやく『競技向け戦闘機』の片鱗を感じました。
ガシっと剛性感があり、ストロークも極小のフィーリング。
明らかに一般の乗用車のMTとタッチが異なっています。(一般の乗用車のMTじたい今は絶滅危惧種ですが 苦笑)
はるか昔に乗ったGC8インプレッサのSTiバージョンのシフトフィールを思い出しました!
なるほどと思いながらクラッチのミートポイントを探る、、同乗の担当者のレクチャーではかなり奥でミートするとのことでしたが、Chief-Ring的には普通、常識的な深さでクラッチが繋がりました。そして常識的なのはミートポイントだけでなく繋がり方も。競技向け強化クラッチのようないきなりガッツンというものではありません。このあたりはまさに日常使用を想定した扱いやすいセッティングがなされていました。
アクセルに乗せた右足に少しだけ力を込めると、GRヤリスは『溜め』もなくスッと動きだし、そのまま滑るように走り出しました。この動きに一分の隙やレスポンスの遅れがないことにまず驚愕しました!乗用車では過敏すぎる動きを抑えるようにスロットルの調整をするのが普通ですが、この車はそれがない。取り出したいトルクを即座に意のままに取り出すことができるのです。
また走り出してすぐに気づくのは、室内に響く『グォォォ、、』というデフギアが唸る音。遮音についてはさほど徹底されているわけではなく、その辺は競技使用優先というところを感じます。
そのまま加速体制に入るためにスロットルをぐわっと開けてやると、間髪入れずに強烈な加速Gがかかりました。ターボエンジンに想像されるブーストのタイムラグなど一切感じることなくそのままズドーンとトルクが盛り上がり、その勢いが一定の勢いをもって7000回転まで途切れることなく引き上がります。
いまどきのフォーマットである3気筒ですが、サウンドは軽自動車にイメージされるそれとは全く異なりかなり太めのもので、これまで聞いたことのないようなサウンドがします。それはそう、排気量が全然異なりますから。1シリンダーあたりの爆発力が段違いなわけで、また同じ排気量の4気筒よりもフリクションが少ない回転フィールです。
加速が高まったところですぐさま前方が詰まってきたのでブレーキング。
こちらもスゴイ。すぐさま分かるのはペダルタッチで、カチっとしたフィーリングで遊びが全くなく制動が立ち上がる。そしてペダルにさらに力を込めると加速力に劣らぬストッピングパワーが繰り出されるのです。
ハンドリングは4WDの駆動配分をモード切替できるのですが、街乗りというシチュエーションで多くを語ることができません。少なくとも言えるのは、あくまでステアリングのアクションに忠実な動きにやはり無駄がなく、思った通りに向きを変えられるダイレクトなセッティングになっています。
足回りのセッティングも競技車両的にダイレクト。
特にサーキットでのパフォーマンスを優先したスペックで仕立てられたダンパーとスプリングは明らかに街乗りではハード。しかしスピードの乗った領域でのコントロール性は最高かと。
そうやってこの車の特徴はと考えると、どの速度域でも自由自在にトルクを取り出し、同時に自在に減速、旋回するという競技で求められる性能を優先したマシンということになります。
WRCマシンのイメージを再現したスポーツ系乗用車、などではなくまさにWRCマシン、それを日常使用で耐えうる仕様に変更したという言い方が正しいのだと思います。競技ではいわば本番でのパフォーマンスをピークにするためにセッティングするのですが、例えばブレーキ鳴きなどは考慮しませんし何年も公道で走るための耐久性や信頼性も求めない。つまりこのGRヤリスは競技車両をベースに日常使用での品質を確保するためにリセットされた珍しいプロダクトと言えそうです。
率直なところ、この1600ターボエンジンを積んだ4WDの『RZ』グレードは圧倒的な動的性能が魅力なもののあまりに競技使用に振りすぎていて、日常では持て余すことになりそうです。ということで個人的に気になるのは1500ccの2WD『RS』グレードです。RSより100kg程度軽量で、CVTですが発進ギア搭載の最新タイプ。加速性能は平凡かもしれませんが身のこなしがRZと同等のダイレクト感であればRZグレードより130万以上、RZハイパフォーマンスより200万近く安い現実的なプライスが魅力となります。
今回のGRヤリス、単なる高性能なスポーツコンパクトというのではなく、ガチの競技で即戦力となる仕様のまさに『マシン』そのものなのです。このような商品はこれまでのトヨタでは考えられない企画で、トヨタの懐の深さと本気を感じずにはいられないのでした。
Posted at 2020/10/21 22:04:12 | |
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