葉桜と魔笛/太宰治

夢野久作の少女地獄は嘘に嘘を重ねることの恐さで、これはこれでもちろん一理あるっつーか、実際こんな人いるよね、とか嘘はあかんでしょ、なにより身を滅ぼしまっせ、と思うんだが、太宰治ってのはもっと別のところから人の吐く嘘っていうのを見てるんですよね。

人を傷つけないための優しい嘘って言いますかね。
世の中けっこうそんなもんでできてる側面も確かにある。
たとえばオレが女子社員に「あのー、たばこ臭いですかね」って聞いたら、「いや、全然（ニッコリ）」って答えたりするとか、まぁそんな感じ。

太宰治の性格もあるけど、一段高いところから嘘ってものを見てるよねー、という気はします。

闘病中でもう先のながくない女の子と、その姉の話。
姉が妹を気遣って恋人に成りすました嘘の手紙を書くんだが（恋人は妹の病を知ると、離れて行ってしまった）、「姉さまの仕業でしょ」とバレてしまう。
そのとき、どこからともなく、姉の成りすました手紙にあった通りの口笛が聞こえてくる…。

そういえば最近よくCSで漫道コバヤシって番組を見てるんだが、楳図かずおに「わたしは真悟」って漫画があって、工場の作業用機械が徐々に意思を持ち、人間の思考に近づいていくんだが、最後に覚えるのが嘘なんですよね。
自分を造ってくれた少年少女がお互いにもう会うことができなくなり、少年が「もう会えない」って傷つかないように、最後に少女に成りすましたメッセージを伝える…。
漫画自体読んだわけじゃなくて、番組での話だから、実際は少し違うかもわからないですけどね。