ようやく小高いメインスタンドに辿り着くと、59才児がいつもの場所でほのぼのとカメラ小僧の用意をしていた。すかさず、私が持っていたお札らしきものに疑問を投げかける。
父「おまん、それなんぜ?」
F「あのほら、最初ここへ来た時(2013年開幕戦)に神社寄ったろ?
その時に、局長が必勝祈願やりよったがを思い出したき、寄ってきてお札買うてきた!
今からもうまあ渡しに行こかと思いゆけんど。」
父「もうピットウォークで並ぶ時間になってきたき、俺も行くわ。」
へっ!?何だって!?
慌てて手元の時計を見ると何と10:50ではないか!これは早くガンさんの元に行かなくては!
いつもなら立ち寄るイベントものなど目にくれず、ピットに足を運ぶ!
それはそれは去年の比ではない人だかりを抜けると、父が真っ先にガンさんを発見する。
あれ、いつもは探さないといけないのに、珍しいなあ・・・。
早速挨拶に行こう!
FRマニア「どうも、お久しぶりです!こんにちは!」
ガンさん 「こんにちは。」
FRマニア「これあの、局長が今回岡山に来られないので代役で必勝祈願してきました!」
ガンさん 「ああ、どうも。」
うん、今までになくリラックスしている!
残念ながらここで父に2ショットを撮ってもらったが、あのCanonのメモリ媒体はコンパクトフラッシュの為、パソコンに取り込めなかった。ホントはここで2ショットを挟む予定であったが、それに匹敵する写真を後で見て頂こう。
FRマニア「予選は2位でしたっけ?(註:父が午前の練習走行でLEONがトップであった為、予選1位と
勘違いしていたので念のため)」
ガンさん 「はい、そうです。」
FRマニア「もう今回は是非とも優勝してください!!!」
ガンさん 「そうなるといいね。」
おお!?これは珍しく楽観的ではないか!!!こんなガンさん、少なくともLEONでは見たことないぞ!!!
FRマニア「ではでは、応援してますので!!!」
ガンさん 「はい。」
ガンさんの握手はいつも暖かく力強いが、今日はいつも以上に暖かい手で力強い!
ここからも、明らかに『嬉しい異変』が起きていたのである。
ピットウォークが始まると、59才児のカメラ小僧は何処かに行ってしまった。困ったなあ、また『オネーチャン狙い』だな!
しかし今日は本当に人が多い。今までの中で最多である。
とその時、場内実況が騒めく。ん?
なんとこの時間から、脇阪寿一氏の引退セレモニーが行われるという。
脇阪氏、実は一時期ベスモとホットバージョンのキャスターであった。特にホットバージョンのドリキン土屋氏のドキュメントでは、土屋氏のライバルとしてもよく登場していた。その熾烈なチャンピオン争いを演じ見事に飯田章氏と王座を射止めた、エッソウルトラスープラで、しかも現役時代のあの青いレーシングスーツで岡山国際サーキットを疾走するという。通りでピットにドライバーがいないものだ。
懐かしいJGTC 2002年チャンピオンカー
涙ぐむ脇阪氏
その傍らで何かしている谷口氏。さて、一体何をしているのでだろうか?
一時期スーパーGTでは911の強豪として欠かせない存在であったKTRが復活。しかしワークス体制にも関わらず大不発。これは『指さしていう ポルシェへ』の主人公になる事間違いない!
ホットバージョン読者には馴染み深いタイサン。4年前には逆転タイトルを911で射止めたが・・・。
あれ?911じゃないぞ!!
今回の主役、LEON AMG。やはり漆黒が似合う。
そして今回見て頂きたい写真がこれである!!!
私が挟まれる格好になったのは、実は治樹氏の粋な計らいである。
普段なかなかこうして座れる機会などないが、快く59才児の代わりにカメラマンをして頂いたスタッフの方々。そして治樹氏の気遣い。こういった部分、実にLEONは確実に『いい土壌』を持ったチームに生まれ変わっているではないか!!
席を立つ前に、治樹氏からLEONのファイルを頂いたので挨拶を。
FRマニア「今日はもう絶対優勝してください!」
治樹氏 「はい、頑張ります。」
ガンさんとはまた違った柔和な笑顔、その眼差しはベスモ96年9月号のヤングタイガーとして取り上げられた時と変わっていない。快く握手。
続いて蒲生氏にも握手をした。
FRマニア「優勝期待しています!」
蒲生氏 「はい!」
おお、なかなか冷静なオーラだが確実に去年より柔和になっている。うん、期待せずにはいられない!
と席を立とうとした時、治樹氏が私に声をかける!
治樹氏 「いやー、懐かしいねその色!(レイトンカラー)」
FRマニア「あっ、これベスモ同窓会の局長から頂いたものです!」
治樹氏 「ああ、ベスモの同窓会懐かしいね!確かいたよね?」
FRマニア 「はい!」
こういう思いがけないやり取り、ファンにとっては実に重要な要素である!
治樹氏、確実にLEONを変えているではないか!もう『ガンさん頼り』と言われなくなるな!
その他のチームで、AKBでいう『超神対応』であったのがこの方。
2004年にルマン総合優勝を果たし、最近ではBMWのワークスドライバーとして、またホットバージョンの準レギュラーでもある荒氏。うーん、ここもいいな!
でも今回はLEONに『ベスト・オブ・ファンサービス』を贈ろう。因みに初音ミクは殿堂入りにつき選考対象外とした(笑)。
「ああ、今日はいい日だなー。よし、昼でも食べよう!」
と思った
その時、チケットがない!!!
全く困ったものである。事務局に問い合わせても一報はなく、急にトボトボとメインスタンドに戻る。
さてさて、気を取り直してレースを観ようではないか。
やっと呑気に昼が終わったところで、火蓋が落とされた!
予選1位の86は、チーム国光から離れた97年からドリドリのJTCC ADVAN チェイサーを手掛けた土屋エンジニアリング。という事は土屋春雄氏がまだ現役のはず。ドライバーは経験豊富な土屋武士氏、これは手強い!!!
しかし、ファーストドライバーの治樹氏は引き離される事なくフェアで熱いバトルを演じる。どうも昨年に比べ、FIA GT3勢は全体的にストレートで元気がなく、911が1番顕著である。開幕戦ということもあり当たりがついていないマシンも多いと思われる中、LEONはドロドロと低音で86に食らいつく!いいぞ、LEON!!!ホントは一刻も早くぶち抜いて欲しいが、無理をして壊してもいけない。実にステディな走りである!
とその時、あれ?LEONがピットインしたではないか!?
どうやらこの早めのピットインがLEONの作戦であったようである。蒲生氏にバトンタッチし、後は逆転を願うばかりである!
そして間もなく、LEONが1位になった!!!
86との差は開き、BMW勢も勢いが落ちてきた。これは、もしかして・・・。
と思っていたその時、知らぬ間にオーバーテイクショーを連発して2位に浮上した『あの車』!
ドライバーは谷口信輝氏!!毎回何かをやってくれる『スーパーGTのミハエル・シューマッハ』は、過去何度も逆転優勝をしてきた。初優勝のかかるLEONと、王者初音ミク!!
86&BRZレースでもライバル関係の倉敷出身の蒲生氏と、広島出身の谷口氏!!これは絶対見逃せない!!
谷口氏の猛追は続き、なんと8番手スタートからトップと約16秒差まで詰まってきた!!!
思わずiPhoneのストップウォッチでトップとの差を計測。じりじりと差が詰まり、なんと11秒差まで詰まってきたー!!!あと10周以上もある・・・。
とその時、英田に冷たい風が吹いてきた。どうも気温が急激に低下したようである。
GT500勢はミシュラン勢が俄然元気になり、BS勢が多数のRC Fはペースが落ちてきた。
これと同時にLEONはペースアップ!初音ミク号も流石に追いつけず、嬉しい初優勝に近づいてくる・・・。
NISMOが逆転優勝でチェッカーを受けた後、やっとLEONがトップでチェッカーを受けた!!!
父は59才児の破顔の笑顔で大きく拍手、そして私の目頭はすぐ熱くなった。
思えばベスモ休止の翌年、2012年にグリーンテックとのコラボでサーキットに復帰したガンさんと治樹氏。翌年からはLEON単体で参戦するも、表彰台は数回で優勝には恵まれなかった。
2012年から5年目。ようやく嬉しい初優勝。
走馬灯のように思いが甦った私の目から、涙が止まらなかったのは言うまでもない。
こうしてようやく優勝インタビューに答える治樹氏と蒲生氏。なんか初々しいこの感じ、実にほのぼのとしていいではないか!この勢いで是非チャンピオンを獲ってもらいたいものである!
なぜなら、好調のAMG勢でも初音ミク号がこのオーバーテイクぶりであり、非常に脅威的な存在であるから。