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2015年08月11日

2015年の「HP600」ノート 《6》

2015年の「HP600」ノート 《6》 * 「HP600」とか「ユニバーサル・デザイン」(UD)とか、90年代末や00年代始めにちょっと“流行った”ようだったけど、結局は消えてしまったのではないか。そんな見方があるかもしれない。

* その時期に(一部の)トヨタ車のカタログには必ずあった「乗降性」や「ヒップポイント」を示すイラストは、2010年代に入ったくらいの時期を境にしてだったと思うが、その図が掲載されることが少なくなり、やがてカタログ上でそれを見ることはできなくなった。

* そして「ユニバーサル・デザイン」という言葉も、結局はあまり一般には流通することなく、何となく想像はできる感じはあるけど、でも、実のところは、あまりよくわからない……。そんな言葉のうちのひとつとなって、今日に至っているのではないか。

* しかし2003年に「UD」を主張した時点で、この連載の第5回末尾のように、トヨタのデザイン部は既に“予言”していた。「今後さらなる開発が進めば、UDという言葉すらなくなって、当たり前のことになった時がUDの完成に一歩近づく時』なのではないか。こういう視点と展望だ。

* 10年代になって、トヨタの場合だが、「乗降性」を示すイラストがカタログから消えたのは、「乗降性」という人間工学、もしくはユニバーサル・デザイン」(UD)からの必要条件を、ほとんどのクルマが充たすようになったから……ではなかったか。

* ただし、ラウムがその二代目でHPを20ミリ、初代よりも下げたように、トヨタにはこの点についての柔軟性があった。「HP600」を主張した元祖車のひとつであるプリウスにしても、ジェネレーションを重ねるごとに「HP」の数値は動いている。その後のこのモデルは、ラウムと同じように、HPは「580ミリ+」というあたりでまとめることにしたようだ。

* しかし、高いHPで“乗用車”(ワゴン型含む)を作ることを始めた一方の雄、スズキは、「600ミリ+」にはかなり拘っている。初代の1993年ワゴンRは、正確には「625ミリ」がそのHPであったが、その後のモデルチェンジでも、この数値を“下方修正”することはなく、最新の5代目でも「647ミリ」というHPをキープしている。

* スズキで興味深いのは、日本規格である軽自動車以外の、いわゆる普通車(登録車と彼らは社内的に言っているようだが)においても、HPは「600ミリ+」を基本にしたクルマ作りを行なっていることだ。ワゴンR以後の、SX-4、そしてスプラッシュといったモデルは軒並み「620ミリ」をそのHPとして、今日に至る。

* プレマシーのマツダ、そしてフォレスターのスバルは、これらの「HP600ビークル」を世に問うた後は、より“カテゴリー重視”というクルマ作りを採択したようだ。つまり、セダンやハッチバック、そしてミニバンやクロスオーバーSUVでは、HPについては、それぞれ「作り分ける」という戦略である。

* デミオを例に取れば、クルマとしてもっと軽量化したいという理由もあって、全高やHPは「下げる」という方向のクルマ作りに向かった。ただし、HP「600ミリ」付近のビークルには人間工学的に“スイートスポット”があるとして、コンパクト・クロスオーバーSUVとして分類される(であろう)最新CX-3では、そのHPを「600ミリ」としている。

* ただ、00年代に「HP600」ビークルを作ったいくつかのメーカーが、その後、「カテゴリー主義」というべき地平に“回帰”してしまったことを考えると、セダンというか、一般的に使われる「乗用車」のパッケージングやレイアウトを、「HP」という観点から変えようとしたトヨタとスズキの動きは、やはり革命的だったと考える。

* またニッサンも、セダンやクーペはそのカテゴリーの“伝統”に従って作るという姿勢は崩さなかったものの、「新種のビークル」については、それこそバリアフリーというか、新カテゴリーだから何でもやってみるという気概があった。2002年に登場した二代目キューブは、そのHPが「620ミリ」であり、これは三代目(現行)になっても変わっていない。

* ニッサンもまた、左右非対称のリヤビューといった斬新な外観だけでなく、このキューブでは、人とクルマとの関わり、そのインターフェイスにおける、21世紀的な新しい関係性を提案していた。

* これは私の想像も交えた解析でしかないが、いっとき、キューブがある種の人々に熱狂的に受け入れられたのは、乗りやすいクルマ(HPが適切)という体感も大きかったのではないかと思う。

* また、それまで軽自動車(ハイト系ワゴン)に乗っていて、そこから普通車に乗り換えたいとした時、キューブであれば違和感なく、また身体的な“負担”を感じずに乗り換えることができた。そして、このクルマでは、その新感覚の造形も楽しめた。キューブの“裏ヒット”には、こんな側面があったように思えてならない。

* そして、90年代後半以降の、わが国におけるミニバン・ブーム。これもまた、多くの人が「高いHP」を(無意識にでも)求めた結果ではなかったか。前にも書いたように、HPというのは、低いものから高いものに乗り換えるのは、まったく違和感はないのだ。ミニバンのHPがオーバー700ミリであろうとも、そこに障害は何もなかった。

* ただ、乗りやすい、身体に優しい、腰や背筋にとって楽である……というだけでは、やっぱり成り立たない? クルマという奇妙な商品には、どうもそんな一面があるようである。次回は、クルマというものがなぜか抱えている(?)そんな「商品性」について、少しだけ考えてみたい。

(つづく)
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Posted at 2015/08/11 14:05:14

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