
PCの世界は日進月歩。新しいOS、新しい規格、新しいデバイスが次々と現れ、古いものは容赦なく時代から取り残されていきます。多くの人がその流れに乗り、Windows 11へと移行する中、私は敢えて時代に逆行し、サポート終了が迫るWindows 10という名の”聖域”に留まることを選びました。
これは、たった一枚のサウンドカードを守るためだけの、あまりにも個人的で、しかし切実な戦いの記録です。
■プロローグ:PCIスロットの老兵は死すべし? 甘い幻想の始まり
全ての始まりは、些細な好奇心でした。長年愛用してきたONKYOの名機、「SE-200PCI」。PCのノイズの海からクリアな音を紡ぎ出すこのカードは、私のデスクトップオーディオの心臓部でした。しかし、ふと思ったのです。「最近のDACは凄いと言うし、まさかとは思うが…」
そこで、机の隅にあった「Amazon Echo (第4世代)」のイヤホンジャック出力を、SE-200PCIの出力と真剣に聴き比べてみました。結果は衝撃的でした。
「……あれ? ほとんど差がわからない…」
もちろん、解像度や音の厚みには微細な差があります。ですが、カジュアルな2ch(ステレオ)再生において、その差は「言われればわかる」レベル。テクノロジーの進化は、かつての高級オーディオパーツの牙城を、いとも簡単に崩し去っていたのです。
この瞬間、私の頭に甘い幻想が広がりました。
「そうだ、もうPCIスロットに囚われる時代じゃない。USB DACからアンプに繋げば、配線もシンプル、ノイズ対策も楽々。それで幸せになれるじゃないか!」
こうして、SE-200PCIをPCケースから引退させる計画が、静かに始まったのです。
■第一章:立ちはだかる「サラウンド出力」という名の壁
理想のオーディオ環境を夢見て、私は早速USB DACの調査を始めました。高音質な2ch再生ができるDACは、それこそ数千円から星の数ほど存在します。しかし、私にはもう一つ、絶対に譲れない条件がありました。
「ゲーム時に、5m離れたAVアンプへサラウンド(5.1ch)出力すること」
これが、私の計画を根底から揺るがす巨大な壁となりました。市場に溢れる手頃なUSB DACは、そのほとんどがステレオ出力専用。光デジタル(S/PDIF)出力を備えたモデルもありますが、帯域の制約から非圧縮のサラウンド音声(リニアPCM 5.1chなど)は送れません。
非圧縮サラウンドを出力できるUSBデバイスとなると、選択肢は一気に狭まり、価格帯も2万円、3万円台の本格的なオーディオインターフェースやゲーミングサウンドデバイスの世界に突入します。
・美しい2ch再生能力
・ゲーム用の遅延なきサラウンド出力能力
この二つを両立し、かつ納得できる価格のデバイスは、驚くほど少なかったのです。結局、調査を進めれば進めるほど、一つの結論にたどり着きました。
「……この条件、全部満たしているのは、手元のSE-200PCIだけじゃないか」
こうして、私のPCIスロット延命計画は、皮肉にも「SE-200PCIの不可欠性」を再証明する結果に終わったのでした。
■第二章:新たなる敵、Windows 11の「鉄のカーテン」
「まあ、いいでしょう。最高の相棒が手元にあるのだから」。私は気を取り直し、最新OSであるWindows 11環境で、愛機SE-200PCIを使い続けることにしました。しかし、OSはかつての友ではありませんでした。冷徹な門番として、私の前に立ちはだかったのです。
Windows 11の、あまりにも厳格なドライバー署名チェック。
SE-200PCIの純正インストーラーは、この鉄のカーテンの前に「\\私のファイル保管庫¥SE-200PCI_DriverV560C\VIAEnvyAud\EnvyAudDrvV32.dllをロードできませんでした。OKを押して続行してください。」と無慈悲に弾かれ、インストールが完了しません。なんとかOS標準のドライバーで音は出るものの、その音質は48kHzが上限。このカードが本来持つべき、ハイレゾ再生能力が完全に封じられてしまったのです。
CD音質(44.1kHz)すらネイティブ再生できないこの状況は、オーディオ好きにとって屈辱以外の何物でもありません。ここから、私の長く孤独な戦いが始まりました。
ネットの海を彷徨い、国内外のフォーラムを読み漁り、巷に転がるあらゆる「おまじない」を試しました。
・スタートアップ設定からの「ドライバー署名の強制を無効化」
・コマンドプロンプトを使ったテストモードへの移行
・デバイスマネージャーからのinfファイル手動指定
しかし、何度やっても状況は変わりません。美しいハイレゾサウンドが再生されることは、ついになかったのです。
■最終章:白旗、そしてWindows 10への帰還
数日間の格闘の末、私は静かに白旗を掲げました。Windows 11のセキュリティ思想は理解できます。しかし、それによって愛すべき資産がただのガラクタになるのは耐えられません。
私はPCのデータをバックアップし、Windows 11をクリーンインストールしたばかりのSSDをフォーマット。そして、使い慣れたWindows 10を再インストールしました。
恐る恐るSE-200PCIのインストーラーを起動すると、あっけないほどスムーズに完了。デバイスマネージャーには懐かしい名前が輝き、サウンドのプロパティには「24bit, 192000 Hz」の文字が誇らしげに並んでいました。
(普通にはインストールできないのでごにょごにょインストールしてますけどね。)
再生したハイレゾ音源の、あまりにも滑らかで透明な響きに、私は思わず安堵のため息をつきました。
■エピローグ:聖域にて、仲間を想う
2025年10月、Windows 10のサポート終了まであとわずか。それでも、私はこのOSを手放す気にはなれません。ここは、Windows 11に見捨てられた古き良きハードウェア(ソフトもなー)たちが、その性能を十全に発揮できる最後の”聖域”なのですから。
もし、あなたも特定のデバイスが動かないという理由だけで、最新OSへの移行をためらっているのなら。
大丈夫、あなたは一人ではありません。仲間ですね。
てなわけで、イメージ画像にあるように表示がちゃんと出てればあと1年WINDOWS10が使えますよっと。さて、その後はどうしたもんか。最近、グラフィックボードも2スロットじゃ収まりきらないようになってきて、いよいよPCIのサウンドカード使えない環境が整ってきた。つーか、マザーボード側もグラフィックカードのサイズに合わせてコネクタのレイアウト考え直せよな。グラボつけた瞬間に使えなくなるコネクタ多過ぎ。
ブログ一覧 |
パソコン | パソコン/インターネット
Posted at
2025/10/13 12:36:31