
本日は早朝から夕方まで取材に明け暮れた一日。
そんな中で移動&撮影機材車として使った「
ホンダ・
エリシオン プレステージ」をご紹介しましょう。
今やミニバン系車種が販売の中心となっている
ホンダ。その代表格はなんといっても
オデッセィですが、更に上級のラージボックスミニバンが「
エリシオン プレステージ」です。
ご承知の方も多いと思いますが、同社初のラージボックスミニバンである「
エリシオン」の上級車種という位置づけを与えられたのが「
エリシオン プレステージ」。
2004年8月にデビューした「
エリシオン」は大柄なミニバンでありながら低重心設計を採用したことで高いハンドリング性能を実現。
室内もフラッグシップミニバンらしく8人乗りでも余裕の空間を確保しつつ、低床設計により全体の車高を抑えることにも成功しています。
またライバルよりもプレーンなフロントフェイスは独自の存在感を主張。
しかし、よくも悪くもこの顔つきが販売面では大きな影響を与えることとなりました。
ラージミニバンは
エルグランドに端を発する"デカ顔"が主流。
分かりやすい豪華さや威圧感に乏しい「
エリシオン」は営業的に苦戦。さらに2400ccエンジンのみという設定を不満とする客層もあったことから、更に上級の「
エリシオン プレステージ」を2006年12月に追加設定しました。
そして去る2008年12月には両シリーズともにマイナーチェンジを受け、「
エリシオン」についてもメッキで飾った大型のフロントグリルが標準設定とされました。
今回乗ったのはこのマイナーチェンジを受けた最新型の「
エリシオン プレステージ」。同シリーズはエンジン設定がV6・3,500ccと直4・2,400ccの2種類ありますが、後者のFF(前輪駆動)・5速オートマチックを組み合わせる「S HDD NAVI Special Package」です。
まず動力性能面ですが、1,840kgという車両重量を118kw(160ps)/5,500rpmの最高出力を有するエンジンでも充分な余裕を持って走らせてくれます。
今回は大人4人乗車+撮影機材搭載という条件で高速道路を主に移動したのですが、追い越し性能や登坂性能を含めて全く不足を感じる場面はありませんでした。
そして生憎横風の強い中を走ることになったのですが、こうした場面では低床・低重心設計の恩恵を実感します。
なによりも高速走行安定性が高い。ラージミニバンですからワインディング路を攻めるようなシチュエーションは滅多にあり得ないでしょうが、高速道路の長距離移動はどんなユーザーでも体験する可能性の高い場面。こうした時にも低重心設計がユーザーメリットを生んでくれるのです。
実際に周囲を走る他社のライバル車種は、横風を受けてフラフラと走る姿を見せる車を何台も見かけました。
しかし「
エリシオン プレステージ」は横風の影響を感じることは少なく、安全・快適なクルージングを終始提供してくれたのです。
快適性と言えば室内空間は低めの全高ながら、低床設計のおかげで充分な広さが用意されています。
そして乗り心地については、
オデッセィのように過度に締め上げるようなことをしていない足回りのおかげで、プレステージミニバンに相応しいしなやかなものとなっており、この点には好感を持ちました。
更に言えばテストした2,400ccエンジン搭載モデルは215/60R17サイズのタイヤを標準装備、225/50R18サイズを装着する3,500ccエンジン車よりもエアボリュームが大きいので、路面のショックや"粗さ"を上手く吸収してくれているのではないかと思います。
さて、一方でやはりちょっと気になる部分というのもあります。
その筆頭が室内への騒音の侵入。運転席、助手席の両方に乗った今回は残念ながら2/3列目席の状況を確認するに至りませんでしたが、少なくとも1列目席については少々外部からの騒音が耳につくように感じます。
今回、強風という厳しい条件下ではありましたが、そのことを考慮に入れても車格的にはもう一歩の静粛性向上を望むところです。
二つ目に気になるのはオートマチック。
5速オートマチックそのものは変速ショックなども少なく快適なものですが、インパネシフトでレイアウトされたセレクターレバーはストレート式で、マニュアル操作ゲートやパドルシフトの設定はありません。
実際にはマニュアルモードを備えるオートマチック車においても、ユーザーの活用度合いは決して高くないということを承知の上で記しますが、出来れば手動セレクター操作を考慮した設定を望むところ。ジグザグのスタッガード式ゲートでも良いのです。
なぜなら車両重量の大きいラージミニバンの場合は、減速時にエンジンブレーキを効率的に使う運転をしたいと個人的には思うから。
適切な手動変速の活用は、ブレーキの負担や消耗の減少、燃費の向上などに効果を産むからです。
ミニバンに限らずオートマチックのマニュアル操作モード(パドルシフトを含め)は、決して多くの自動車雑誌やジャーナリストが扱うような"スポーツドライビングのためのオモチャ"に留まるものではないと思っています。

室内ではホンダ自慢のナビゲーションコントローラー「プログレッシブコマンダー」が目立ちますが、実際の操作感はいま一つ。
操作感、というよりは、ナビ画面に表示されるメニューの表示や階層設定などが、私にとっては直感的にしっくり来なかったという印象なので、これはオーナーになれば慣れで解決できる部分でしょう。
最後に、これはデザイン要素の内容なのであくまでも私見ですが、やはり大柄なギラギラのメッキグリルをはじめとした過剰装飾的なエクステリアはちょっと残念なところ。
初代レジェンドの失敗を繰り返したようにも思える"プレーン路線からの転換劇"ですが、市場がそれを求めているから仕方無いといえばそれまででもありますが・・・。
今回テストした「
エリシオン プレステージ」の「S HDD NAVI Special Package」ですが、FFは3,360,000円、4WDは3,675,000円というメーカー希望小売価格が設定されています。
ライバル車種の筆頭は
トヨタ・
アルファード/
ヴェルファイア。
アルファードのベースグレードであるFFの240G(8人乗り)はメーカー希望小売価格が3,560,000円と若干高めのプライスになっています。
ただし
アルファードは燃費性能などに優れるCVTミッションを採用、マニュアルモードゲージも採用されています。
またエアバッグ類や横滑り防止装置も
アルファードが充実しているため、価格差は充分に納得のいくものです。
直接対決させた場合、正直に言って「
エリシオン プレステージ」を強く推す理由は余りありません。
唯一、私にとっては低重心・低床設計による走行安定性の高さが、高速道路やワインディング路を走る機会の多い方に向けてはアピールしたい部分です。
ただし、実際に購入する場合は契約した価格によっては購入をお薦めできる場合もあり得ます。要するに「
エリシオン プレステージ」は不人気車種なので、大幅な値引きを獲得出来れば、下取り価格を気にしない"乗り潰し"を前提にお買い得な商品にもなり得る、ということです。
昨年のガソリン高騰以降、ラージサイズミニバンは中古車市場でやや動きが悪くなってきており、下取り価格も下落気味。
そのうえで、「
エリシオン」シリーズは人気が低いので、下取り価格は絶望的とも言える状況です。
ちなみに
トヨタのサイトではライバル車種との比較参照を出来ますが、
アルファード/
ヴェルファイアについては「トヨタのおすすめで比較する」の対象車種に「
エリシオン プレステージ」と「
エリシオン」の名前はありません・・・。