![衝撃の出会いと挫折 衝撃の出会いと挫折](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/038/300/423/38300423/p1m.jpg?ct=9094ce8460c7)
L20ETの魅力に取り憑かれたこの時、日産がRB系エンジンへと世代交代してから既に10年もの歳月が経過していました。そのためにL型エンジン搭載車は殆ど見る機会がありません。そのうち禁断症状が現れ始め、遂に通学用自転車にタービン音発生装置を搭載するにまで至りました。そんな毎日を過ごしていたある日、高校からの帰宅途中に衝撃の出会いをする事になります。遥か前方に白いR30らしきシルエットを確認、後期型GTでマフラーが2本出しなのが解ったので間違いなくL20ET搭載車です。こちらの自転車もナンチャッテではありますが、ターボ車のような音を立てながらフルブーストで追跡を開始します。徐々に近づくとその車の全貌が明らかになって来ました。ボディ両サイドに貼られた特徴的なステッカー、リアナンバーとテールランプの間に輝く金色のエンブレム、そしてトランク右上には誇らしげなTURBO ESの文字。そう、この車こそが私の人生を変えた多摩ナンバーのポール・ニューマン バージョンです。
R30では特に珍しくもない白の4ドアセダンから、今だかつて見た事の無い上品さが車全体から漂います。完全フルノーマル車にしか出せないその強烈なオーラと気品にカウンターパンチを喰らってしまい、青信号になってもただただ見送るだけしかできないような不思議な感覚に襲われます。そして例のカップリングファンの轟音と共に至高のタービン音を発しながら「ハード&リッチ」に走り抜けて行く姿に完全ノックアウトされてしまいました。
ふと我に返り、その姿を脳裏に焼き付けるべく全力でペダルを漕ぎました。路肩から後続車両を追い越しながら何とか背後に回り込みます。バックミラー越しにオーナーと目が合うと排気音から排圧が上がったのが分かりました。キックダウンでギアが1段下がり、過給が始まるとまたタービン音が響きます。こちらも加速しようと思いましたがこれ以上は速度が伸びず、志半ばで路肩走行に戻ります。フィンタイプの純正アルミホイールの回転速度が上がり、一瞬逆回転したかのように見えると再び正回転に戻ります。道路の不整を乗り越えるとリアタイヤは柔らかく円弧状にストロークしながら車重を受け止めます。この強烈なまでの存在感、本当に今まで自分が知っていたR30と同型車種なのか?と、確実に目の前にいる同車を見ながらも少し疑うような気持ちさえ感じた程でした。
いつまでも並走したい気分ですが、3段変速のママチャリを50km/h超で漕ぎ続けた両脚はもはや限界を迎えていました。悲しいかな徐々にスピードは落ち、離され、後続車両に阻まれ、点のようになり、最後は私の前から消えて行ってしまいました。もう少しでいい、この脚さえもってくれれば・・・。自分への不甲斐なさを抱きつつ、無念の敗退です。
そんな強烈な印象を残したポール・ニューマン バージョンにすっかりヤラれてしまった私は高校生にも関わらずR30のターボGTを探し始めます。この頃のR30は底値で前期RSが5万円、鉄仮面のターボRS-Xでも20万円というような状態でした。ところが目当てのGT系はと言うと市場には皆無状態で、その殆どが解体されてしまっていたのが実状でした。そんな中、近所にあるアパート裏の畑の中に前期GTのターボEXが放置されているのを発見します。持ち主であろう近所の人に聞くと、「邪魔だから早く片付けたいのにエンジンが掛からなくて困っている」と悲しいお言葉が。その次には「欲しいなら持って行ってくれ」と嬉しいお言葉が!父親にその旨を話すと、「L20(エルニーマル)なら絶対的に信頼できるエンジンだから間違いはない」と。この日から早速修理に取り掛かる事になります。
まずはエンジンオイルをチェック、持参したバッテリーを繋いで10リットル程ガソリンを入れてからクランキングします。圧縮も均等にある印象でエンジン本体の故障では無さそうです。次に燃料ポンプのチェックです。キーONで「ン〜ジジームム・・・ミュ〜・ウィ〜」と聞こえて来たので動いていそうな気配です。続いてスパークのチェックをします。プラグを金属部分に接触させながらクランキングしてもスパークが飛びません。持参したプラグでも同様なので点火系が壊れていると目星をつけました。
この日から1週間ほど修理に通う事になります。結局イグニッションコイルがパンクしていたようで、その当時の閉磁式コイルの配線を加工して装着すると見事に息を吹き返しました。ボディは至る所が錆びてタイヤは4輪ともパンク、物置になっていた室内は酷く汚れていましたが、エンジンは憧れのL20ETです。AT車という事もあって、夜になるのを待って農道を自走で帰りました。もちろん、無車◯、無◯険、◯免許です(謎)
初めて自分の車が出来た事が嬉しくて嬉しくて、毎日洗ったり磨いたりしていました。室内も大清掃をして、かつては物置であった事など微塵も感じさせない程に綺麗にしました。エアコンも効いてカセットも聴けるとなれば、自分だけの快適な空間です。免許を取ったら絶対この車に乗る!全塗装したらステッカーを貼ってポール・ニューマン バージョンにする!と心に決めていたものの、路上復帰についていろいろ調べていくうちに悲しい現実を突きつけられる事になります。お察しの通り、書類無し車だったのです。
つづく
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2016/07/30 14:55:23