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とくサンの愛車 [BMW Z4 ロードスター]

整備手帳

作業日:2022年4月17日

幌開閉用油圧シリンダー修理 【ラックシャフトとピストン組付図解 その1/1】

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目的 修理・故障・メンテナンス
作業 DIY
難易度

上級

作業時間 30分以内
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ラックシャフトとピストンを組付けたが、ピストン抜け落ちもしくはボルト破断等による不具合が生じる原因を図解で説明します。

私の整備手帳の「修理編」「リビルト編」の手順通りに実施していただければDIYで修理できますが、特にラックシャフトとピストン組付け時の加工は重要な部分のため、なぜ手順通りにやらなくてはいけないのか記述します。

あくまでも一つの修理・リビルト方法であり、機械設計屋さんから見た主観的な方法としてご理解をお願いします。

因みに、私のZ4で修理した左右両側の油圧シリンダーは、約半年経ちましたが現在も油漏れもなく動いています。
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私のリビルトのピストンの組付けを図解したものです。

ピストンにラックシャフトの軸を挿入し、ワッシャーとM5ボルトで締結します。
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このピストンが抜け落ちないように、M5ボルトを締め付けて組付けます。

ボルトを締め付けると、図中A部のねじ山は、めねじとおねじのねじ山同士の片側が密着し、この摩擦と押力とで固定されます。
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しかし、車は振動する上にピストンは動くため、ネジが緩んでしまうのです。

振動は、部品毎の固有振動数というのがあり、この振動する周波数が一致すると振動が増幅され、ピストンが動くとピストンリングと油圧シリンダーチューブ内部とがこすれて、ピストン自体が回転する力が発生します。

これらもボルトを緩める原因で、ボルトが緩むと、ワッシャーとボルト頭とに隙間が生じ、ねじ山も両側に隙間が生じ締め付け力がなくなってしまいます。
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ここで、ラックシャフトの軸とピストン穴の関係を説明します。

ラックシャフトにピストンを挿入するということは、軸と穴には隙間があるということです。

この隙間が0(ゼロ)に近いほどガタが生じないということになります。

0(ゼロ)というのは、穴に軸が通らないということになります。

機械設計では、JIS規格のはめあいと言う規格に合わせて設計します。

この場合ですと、隙間を最小にするため、穴:H7 軸:h7という交差を使用します。

そうすると、軸と穴の隙間は0~0.03㎜の隙間となり、最小:0㎜ 最大:0.03㎜ということになります。

この隙間:0.03㎜は機械加工で可能な隙間であり、DIYでは最大0.1㎜を目標とします。

なぜ隙間を説明するかと言いますと、ここの隙間が、ボルトに折れ曲がる力を発生させる要因ともなるからです。
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では、どうなるかです。

ラックシャフトは、ピストンと軸端部の隙間:aあり、上記で説明したラックシャフト軸とピニオン穴に隙間があるとして、ピニオン端部に力:Fがかかったとすると、軸端部の支点を中心に、ピストンは傾き:Gが発生します。

この傾きを発生する力が、ボルトを折れ曲げようとする力となります。

この支点がピニオン端部と同位置あれば、ボルトは押し曲げられる力は限りなく0(ゼロ)となります。

しかし、ボルトでピストンを固定するためには、軸がピストンより長ければ固定できないため、軸を短くして隙間を作らなければなりません。
私の手順書では、この隙間を0.5㎜としています。

また、ボルトを折れ曲げようとする力とボルトを引き抜こうとする力を食い止めるために、ねじ山数(ネジ深さ):Cが必要になります。

感覚的にもわかりますように、ねじ山数が少なければ弱いし、ねじ山数が多ければ強いと感じることと思います。

一般的に、どの程度のねじ深さが良いのかというと、最小1.5D㎜以上で今回はM5を使用しているので、5*1.5=7.5㎜以上となります。
私の手順書では、15㎜ですので3D㎜となっています。
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ではリビルト中にラックシャフト軸が短くなってしまった場合はどうでしょうか。

軸端部からピニオン端部の隙間:Eが大きくなります。

すると、ピニオン端部に同じ力:Fがかかったとすると、軸端部が短くなったため支点も内部に入り込み、ピニオンの傾き:Gは、軸とピニオンの隙間最大に傾きます。

この時のボルトを折り曲げようとする力は、支店が内部に入り込んだため「てこの原理」で大きな力が発生します。

この大きな力は、一時的なものではなく、油圧シリンダーのためピストンには常に圧力がかかっている状態です。
つまり、図中力:Fは常に発生しているということです。
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常に力が加わっているところに、振動やピストンの上下運動が加わります。

この力の状態を「交番荷重」と言い、プラスチック板や薄い鉄板を上下に何回も繰り返して曲げていると板にクラックが入り最後には引きちぎれてしまいますよね。
この繰り返しの力を「交番荷重」といいます。

この交番荷重が、軸内部のねじとボルトに加わると、ねじ山はねじむしれを起こしボルトが抜けてしまい、ボルトは破断してしまい、ピニオンが引き抜かれてしまいます。(ねじ強度は除く)

この状態になってしまうと、ラックシャフトとピニオンは使い物にならなくなってしまい、二度とリビルトできなくなります。

長々と説明してきましたが、
①ラックシャフフト端部とピストンとの隙間:aは、0.5㎜以下
②ラックシャフト軸とピストン穴の隙間:は、最大0.1㎜以下
③ラックシャフトへのM5ネジ深さは、1.5D~3D㎜で目標は3D=15㎜

これを目標にしてリビルトをしてください。

また変更点がありましたなら、その都度改定していきますので、よろしくお願いします。

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この記事へのコメント

2022年4月17日 16:56
すごい丁寧でわかりやすい投稿ですね😀
いつも素晴らしいです👍
コメントへの返答
2022年4月17日 17:09
ありがとうございます。
褒められることがないので、恐縮します。
励みになります。
2022年4月17日 19:55
お疲れ様です。詳細な解説ありがとうございます。良く勉強になりました。知らないことばかりでした。

さて私の失敗ロッドはやはりもう無理ですね。精密加工してくれる鉄工所さんを探すか新しいジャンクを手に入れようと思います。

また、ちゃんと道具を揃えてから始めるべきだと痛感しました。

またご指導、ご指摘お願いします。
コメントへの返答
2022年4月17日 20:33
お疲れ様です。
アドバイスとなってなく申し訳ありません。

ジャンクを手に入れるのであれば、今リビルトしている油圧シリンダーは部品取り用になってしまうわけですね。

そういうことであれば、ここのタップ加工はやめて、ほかの部分をリビルトして、ラックシャフトとピストンを組み付けるときに、溶接で軸とピストンを固定すれば問題は解決します。

但し、再度分解することはできません。

リビルトの練習にもなります。

この方法であれば、この油圧シリンダーは生きていますね。

ご検討ください。

一つ教えてください。
ピストンを抜いているわけですから、お尻側のOリングが付いているアルミ製カバーは分解できているわけですが、反対側のオイルシールが組み込まれカシメられているカバーは分解されているのでしょうか?

この部品のカシメに穴あけしなくて取り外さなくても良い方法があるのです。
どこら辺まで分解されているのでしょうか?

油圧シリンダーの画像をアップしてもらえると、ひょっとしたらと思っています。

よろしくお願いいたします。
2022年4月18日 8:36
おはようございます。

ロッドのピストン取り付け位置の加工に手こずって上側のカシメは全然手をつけていません。

ピストンとロッドを溶接する場合、ピストンのシリコン製のOリングは交換になると思います。取り外してから溶接しないと熱で溶けると思うので。

サイズがぴったりしたものが見つけられないということだったと思いますがありましたか?

写真はここにはあげられないと思うので別のブログであげます。多めに写真撮ります。

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「[整備] #Z4ロードスター 冷却水リザーバータンク用Oリング型式特定(備忘録) https://minkara.carview.co.jp/userid/2735833/car/3164412/8014185/note.aspx
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