
シリアの大統領選挙の投票が終わり、現職のアサド大統領の圧勝が伝えられています。
シリア アサド大統領が95%超得票で再選 反政府勢力反発 | シリア内戦 | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210528/k10013055741000.html
どうせ公正な選挙ではないのは世界中が知っている事ですが、得票率95%超えという結果はある意味清々しいです。世襲大統領で事実上絶対専制君主の王様みたいなものですので何でもアリです。
その一方で3週間後にイランの大統領選挙が控えています。
シリアの場合「35名以上の人民議会議員の推薦」がなければ立候補を認められないという憲法上の規程があると以前紹介しましたが、イランの場合はもっと凄いです。
イランイスラム共和国には議会や司法、行政組織よりも上位の存在として、イスラム法学者等で構成される「監督者評議会(護憲評議会とも)」という組織があり、その評議会による審査を経ないと大統領選挙への立候補が認められません。
現在のロウハニ大統領は「対外穏健派」として知られていますが、今回の大統領選挙では穏健派の候補は立候補が認められませんでした。穏健派候補のみならず、強硬派で知られるアフマディネジャド前大統領の立候補も認められませんでした。
イラン大統領選挙 立候補認められた候補者7人発表
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210525/amp/k10013051391000.html
イラン・イスラム共和国放送;「Pars Today」による解説では「適正資格が憲法第115条および、イランイスラム革命最高指導者が通達した方針で明白に指定されています」との事ですが、前大統領までもが立候補資格を認められないのであるなら一定の基準だけでなく「護憲評議会」による恣意的な選別が行なわれていると考えざるを得ません。
視点;第13期イラン大統領選挙の最終候補者名の発表ー選挙戦開始への第1歩
https://parstoday.com/ja/news/iran-i77884
国家が民主化を進める過程でいわゆる「衆愚政治」に陥らないように段階的に民主化プロセスを進めるという事は大日本帝国でも行われていた話です。
イランにおいてもそのような「発展途上の民主主義」の体制と思えは理解できなくはないですが、ちょっと独特な制度です。
米がオバマ政権だった時にイランは核開発を一時凍結する「核合意」を結びましたが、これをトランプがちゃぶ台返ししました。2016年の大統領選挙でトランプはイランとの核合意を破棄する旨公約に掲げて当選し、公約通りに実行しただけですので、これはトランプ個人の意思ではなく米国民の総意として実行された政策です。
この結果イランは核開発を制限されたまま経済制裁を受けるという状況に陥りました。
イランとしては米により一方的に破棄された「核合意」を律儀に守らなければならない道理はないのですが、経済制裁で経済が低迷する中でもロウハニは自重していました。
昨年から再びウラン濃縮を進める動きを見せていますが、それに対しイスラエルがイランの核技術者を暗殺するなどのきな臭い事件が発生しています。
昨年の米大統領選挙でバイデンが当選しイランとの核合意に復帰する旨の意思を示していますが、それに先立って経済制裁解除を求めるイラン側とそのプロセスについて対立したままです。
そうした中で「穏健派」の大統領選への立候補が認められず「強硬派」候補にしか立候補資格が与えられなかったという事実に、イラン最高指導部の明確な意思を感じます。
核開発やミサイル開発で北朝鮮と連携しているとも伝えられるイランですので、日本としても他人事ではない問題です。
イラン人は比較的親日的であるとも伝えられますが、革命以降米国と断交し対立しているイランの背後には当然中共の支援があります。
イランを取り巻く情勢は日本ではあまり報道されていませんが、世界各国の思惑が渦巻く中で日本の対イラン外交は非常に神経質な駆け引きが求められます。
イラン大統領選挙の行方は日本にとっても重要です。
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2021/05/29 04:09:12