
自分は医療関係の仕事をしてますので、時として瀕死の重症患者に対する診療に携わることがあります…というよりそっち方面が本職です。
ご高齢で、正直「もうこれ以上頑張らなくても…」と思ってしまう症例でも、ご本人様やご家族さんが希望されるなら全力の医療を提供することになります。人の命の重さは皆平等…というのがこの国の憲法で定められている話です。
しかし、世の中には合法的に人の命を奪う事が許される場面があります。
死刑執行に携わる人や自分の身に危険が差し迫った場合の正当防衛、そして…戦争の時などがそれに該当します。
戦争では合法的に人殺しを行なうことになりますが、だからこそ戦争にも「国際法」上の一定のルールがあります。
国際法に関して日本では普通の人には学ぶ機会がほとんどありません。もちろん自分もド素人です。
国際法には各種条約や国連憲章などで成文化されているものもありますし、成文化されていない慣習法もあります。
日本国憲法では第9条第1項で「戦争放棄」が規定されていますが、
国連憲章の第2条第4項にも同様の規定があります。いわゆる「戦争放棄」は日本だけの話ではありません。
凄惨な殺し合いになってしまった第一次世界大戦の反省から1928年に「パリ不戦条約」が結ばれましたが、それでも世界各国が様々な理由を付けて戦争を正当化してしまった結果第二次世界大戦で再度世界規模の殺し合いが発生し、その反省で規定されたのが国連憲章の第2条第4項です。
それでも現代においても合法化される軍事行動が存在します。国連安保理で軍事制裁決議がなされた案件、自衛権の行使、人道的介入、自国民保護などがこれに該当します。
一方でその軍事行動が合法か違法かにかかわらず、戦闘行為を行なうにあたって守らなければならないルールがあります。
戦闘は軍人、戦闘員同士だけで行わなければならず、民間施設や民間人を攻撃してはいけないとか、降伏した戦闘員に対しては捕虜として適切に扱わなければならないとか、戦争当事国以外は中立を守らなければいけないとかといった話がこれに含まれます。
これらの原理、原則についてはド素人のにわか勉強でもある程度は理解できるわけですが、現実の国際紛争の現場に適用するとなると色々と難しい問題が出てきます。
今のロシアによるウクライナ侵攻が国際法違反であろうことはあまり異論ないでしょうし、ロシア軍がキエフ近郊のブチャで行なったとされる民間人の虐殺が事実であるなら、これも国際法違反なのは疑いの余地がありません。
しかしロシア軍が民間人を虐殺するからといってウクライナの民間人が武器を手にして抵抗した場合、これらの民間人は「便衣兵」とか「テロリスト」とみなされてしまい、たとえ投降しても捕虜となる資格すら与えられず、その場で撃ち殺されてしまっても国際法違反とはならない…のかどうかは自分にはわかりません。
今回のロシアによるウクライナ侵攻に関連して、ネット上でも国際法の解説をされている動画などがありいくつか拝見しましたが、そもそも「戦争」の定義自体が依然定まってなく、その結果国際法上のルールにもグレーゾーンが存在しています。
国連安保理で審議しても今回のロシアのように拒否権を使われてしまっては無力ですし、ウクライナには自衛権があると言ってもロシアは核保有国です。報復合戦になれば核ミサイルが飛んできます。
以前も書きましたが、核保有国や国連安保理常任理事国が国際法を厳守してくれないと世界の平和、秩序は維持できません。
敵対する安保理常任理事国の脅威から自衛するためには北朝鮮やイランのように核保有を目指さなければなりません。こうして核兵器が拡散していくことが世界平和のために好ましい話であるはずがありません。
今のウクライナ紛争では、NATOや日本は中立義務を守っていません。
日本国は首相官邸ホームページでそれを堂々と宣言しています(冒頭画像)。ある程度の大国で中立を守っているのは中国とインドくらいでしょうか?
プーチンは今回の軍事行動を「特殊軍事作戦」と呼んでおり「戦争」とはみなしていないため、世界各国には「中立義務」が発生しない…という解釈も可能ですが、この状況が今後どう判断されるのか…?既に日本はロシアから「非友好的な国と地域」の一つに認定されています。
【全リスト】ロシアが指定した『非友好国リスト』の全48の国と地域の一覧 | ハフポスト NEWS
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_623bd956e4b0f1e82c531bf2
こんなことを考えていると夜も眠れなくなってしまうわけですが、少なくともメディアなどでしたり顔で解説をされている「有識者」や「コメンテーター」の方々には、私以上の国際法の知識を元に解説をしていただきたいものです。
今回のウクライナの件では、どうも感情論だけでそれを語っているだけの「有識者」や「コメンテーター」も多いように思います。
メディアでは「ロシアも悪いがウクライナも…」とか「これ以上の民間人の犠牲を防ぐためにウクライナは降伏すべき」などというトンデモ論も飛び出してますが、議論に値しません。
新型コロナウイルス感染症に関連し、自分は「正しく恐れ正しく対策」と書いてきましたが、世界大戦や核戦争の危機に直面した今の世界情勢でも「正しく恐れ正しく対策」が重要です。
感情論に任せた議論やパニックを煽ることを目的としているかのような報道、そして政権批判することが目的の議論などは害でしかありません。
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2022/04/10 10:06:49